大阪高裁判決を踏まえ、速やかに生活保護基準を見直すよう求める会長声明(2025年5月22日)
大阪高裁判決を踏まえ、速やかに生活保護基準を見直すよう求める会長声明
2025年(令和7年)3月13日、大阪高等裁判所民事第3部は、生活保護基準引下処分取消等請求控訴事件において、各処分の違法性を認め、取消すという原告ら逆転勝訴の判決を言渡した。
本訴訟は、京都市内の生活保護利用者42名(提訴時)が、国及び京都市を被告として、2013年(平成25年)から3回に分けて行われた生活保護基準の引下げを理由とする保護変更決定処分(生活保護基準引下げ)の取消等を求めた裁判の控訴審である。全国29地裁で提起された同種訴訟では、国家賠償まで認めた名古屋高等裁判所を含め地裁、高裁で26件もの勝訴判決(地裁19件、高裁7件)が出されたが、先行する大阪事件、愛知事件の2件について本年5月27日に最高裁判所の弁論が予定されている。
本判決は、厚生労働大臣による生活保護基準の引下げは裁量の逸脱・濫用があり違法であるとして、保護費引下処分を取消した。本判決は、国家賠償請求こそ認めなかったとはいえ、原告らの置かれた厳しい生活実態を真摯に受け止め、国が行った生活保護基準引下げを裁量逸脱で違法とした。健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を具体的に保障する勝訴判決である。
当会は、本件引下げに先立つ2012年(平成24年)11月22日に「生活保護基準の引下げに反対する会長声明」を発出し、その後も2018年(平成30年)1月17日に「生活保護基準引き下げに反対する会長声明」を発出するなど、生活保護利用者の生きる権利の保障の観点から繰り返し警鐘を鳴らしてきた。被保護世帯の消費構造を踏まえない安易な生活保護基準の引下げを許さない本判決の姿勢は、高く評価されるべきである。
国は、現在の物価高騰を受け、2025年度(令和7年度)及び2026年度(令和8年度)において、2024年度(令和6年度)の生活扶助基準額に一人当たり500円を上乗せすることを決めたが、電気代や食料品代など生活必需品の物価高騰の実態に追いついていないことは明らかである。
よって、当会は、国及び各自治体に対し、本判決を重く受け止め、速やかに本件引下げを見直すとともに、現在の物価高騰に対応する加算についても実態に即した内容とすることを強く求める。
2025年(令和7年)5月22日
京都弁護士会
会長 池 上 哲 朗
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