法制審議会の審議に先んじて第219回臨時国会において議員立法による 真にえん罪被害者救済のための再審法改正の実現を求める会長声明(2025年11月26日)


法制審議会の審議に先んじて第219回臨時国会において議員立法による

真にえん罪被害者救済のための再審法改正の実現を求める会長声明



1  誤った刑事裁判により人を処罰するえん罪は、国家による究極の人権侵害である。
    しかし、刑事裁判にも誤りが生じ得ることは現実として避けられない。それゆえ、えん罪による被害を受けた人を速やかに救済するための実効的な制度が存在しなければ、国家が行う刑事裁判の正当性と信頼性を維持することはできない。
2  ところが、昨年10月9日に再審無罪判決が確定した静岡4人強盗殺人・放火事件(いわゆる袴田事件)では逮捕から58年の、本年8月1日に再審無罪判決が確定した福井中学生殺害事件では逮捕から39年もの月日が経過しており、実際のえん罪被害からの救済には、その人の人生を丸ごと費やすほどの歳月を要する実態がある。他方、新証拠に基づいて再審開始決定がなされていながら、これに対する検察官の抗告により未だ救済に至らず歳月が流れ続ける大崎事件、日野町事件、名張事件等の深刻な事例も存在する。
これらの実例は、現行の再審法が、到底、速やかで実効的なえん罪救済の機能を果たしていないことを示し、抜本的な法改正が必要であることを示す立法事実である。
3  上記の具体的実例を踏まえれば、現行の再審法は、少なくとも①義務的証拠開示命令制度の創設、②再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止、③再審請求審等における裁判官の除斥及び忌避の規定、④再審請求審における手続規定の整備の4点において改正が必要である。日本弁護士連合会は、これらの点についての改正を求める法改正を提案してきたが、本年6月18日、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(以下「議員連盟」という。)によって起草され、6党の共同提案として衆議院に提出された再審法改正法案(以下「議連法案」という。)は、上記4点の改正を内容としており、高く評価できる。
4  一方、法務大臣の諮問機関である法制審議会刑事法(再審関係)部会においても、本年4月以降、再審法改正に関する審議が行われている。
しかし、再審制度の機能不全に関して改革を求められる「当事者」でもある法務省・検察官が強い影響力を持つ法制審議会において、抜本的な改正案が提案されることは期待しがたい。現に、同部会においては、再審制度の現在の運用を肯定し、法改正の範囲について消極的な姿勢を示す委員が多数を占めている。本年10月31日開催の部会では、事務当局(法務省)が証拠開示に関する案を2案示したが、いずれの案も、裁判所が裁量により検察官に証拠開示を命じることができるという従来の運用を条文化しようとするものにとどまり、むしろ、開示される証拠の範囲に限定を付することで、従来よりも開示の範囲を狭める可能性すら含むものであった。また、本年11月11日開催の部会では、再審開始決定に対する検察官抗告の禁止について、日弁連委員・幹事以外の委員らが強硬に反対していることも明らかとなった。
議連法案は、えん罪被害者の速やかな救済のため最低限必要な改正を行おうとするものであるが、法制審では、議連法案とは大幅に隔たりのある消極的な案が議論されていることが明らかになった。事務当局は部会の審議を加速させており、他の論点についても消極的で拙速な取りまとめがなされることが強く懸念される。
5  再審法の速やかな改正の必要性については、本年6月12日付け当会会長声明においても強く求めているところであるが、京都府内の全27自治体議会が改正を求める意見書を採択していることをはじめ、全国多数の自治体議会や首長から賛同が表明され、報道各社の社説等も改正を求めているように、世論の要請も確固たるものである。改革を求められる立場にある法務省が主導する法制審議会での消極的な議論が、国民を代表する立法府である国会における議連法案の審議の妨げとなり、改革を後退させるようなことは、あってはならない。
6  よって、当会は、法制審議会の審議に先んじて、今次の第219回臨時国会において、速やかに議連法案を可決成立させ、真にえん罪被害者の救済を実現する再審法改正を今こそ実現することを、強く求めるものである。

  2025年(令和7年)11月26日
京都弁護士会                

会長  池  上  哲  朗
    


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