再審法「改正」法案の成立に当たっての会長声明


再審法「改正」法案の成立に当たっての会長声明


  2026年(令和8年)7月17日、刑事再審手続に関する「刑事訴訟法の一部を改正する法律(いわゆる再審法「改正」法案)」が参議院本会議で可決され、成立した。

  まずは、長年にわたり再審制度の改革を求め続けてきた、えん罪被害者とその御家族、支援団体、市民の方々、国会議員、地方議会、地方自治体首長など、再審法のより良い改正に向けて、様々な形で御尽力をいただいた全ての皆様に、深甚なる敬意を表する。

  1948年(昭和23年)に現行刑事訴訟法が制定されて78年を経て初めて、刑事再審手続に関する改正が行われたこと自体は大きな意義を有する。また、審理の進め方について一定の規律を設けている点、一定の要件を満たす場合には裁判所が検察官に対して証拠の提出を命じることを義務付けている点、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを原則として禁止している点など、肯定的に評価できる面もある。

  しかしながら、今回の再審法「改正」案の審議は、超党派の議員による「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(以下「再審議連」という。)が2025年(令和7年)6月に提出し、継続審議となっていたが2026年(令和8年)1月23日の衆議院解散によって廃案となった法案(以下「議連法案」という。)の審議を、いわば奪取する形で行われた。再審議連が法案提出の動きを具体化させた直後に法制審議会への諮問がなされ、これまで再審法改正に抵抗してきた法務省による人選で、法制審議会刑事法(再審関係)部会における審議が急ピッチで進められた。その結果、2026年(令和8年)2月12日の法制審議会総会で可決・答申された再審法「改正」法案が、えん罪被害者救済の観点において、議連法案から大きく後退した内容となったことは、遺憾と言わざるを得ない。

  その後、法案提出前の与党審議や、衆議院及び参議院の法務委員会での審議において、再審法改正に真摯に取り組む国会議員らの奮闘により、法制審議会答申に沿った当初案からは一部修正がなされた。それでもなお、今回可決成立した法案は、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが、再審開始決定が「取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠」がある場合には例外的に許容されること、証拠提出命令は再審請求人ではなく裁判所に対する提出を命じるものである上、制度の対象範囲が限定されており、無罪につながる証拠が再審請求人に開示されないおそれがあること、証拠一覧表の交付制度が全く定められていないこと、証拠の「目的外使用禁止」と称して罰則を伴う過剰な証拠使用の規制を導入し、過去のえん罪事件にも遡及適用されることなど、改悪につながりかねない不十分な点が多く残されている。

  今回の「改正」に際して上げられた、他ならぬえん罪被害当事者らの声が、可決された法律の不十分・不徹底さを如実に物語っている。福井女子中学生殺人事件の前川彰司さんが、法案の採決が7月17日に決まっていると聞いて7月14日の参議院法務委員会の参考人質疑を欠席し、法案成立後に「改正とは名ばかり。敗北感がある」旨述べたこと、確定死刑囚から再審無罪となった袴田巌さんの姉・ひで子さんが「もう少しまともな法改正になると思っていた。がっかり」「5年後の見直しに期待するしかない」と述べたこと、日野町事件の故・阪原弘さんの長男であり再審請求人の阪原弘次さんが「今回の法改正に納得していない」「われわれが望む改正に向けて最後まであきらめない」と述べたことを、決して忘れてはならない。

  当会は、えん罪被害者が真に救済される十分な再審手続の実現のため、今回の「改正」に基づく運用が適切に行われるよう注視していくとともに、本改正の附則に定められた5年後見直しに向けて、より良い制度の在り方を探求し、必要な再改正を含む制度の更なる充実を目指して取り組みを続けていく決意を表明する。

  2026年(令和8年)7月23日
京都弁護士会    
会長 谷  口  直  大



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