「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」の撤回及び仮放免者らの就労の合法化等を求める会長声明
1 2026年(令和8年)5月22日、出入国在留管理庁(以下「入管庁」という。)は、「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」(以下「強力推進パッケージ」という。)を公表した。これは、「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」(以下「ゼロプラン」という。)について、内閣総理大臣からの指示を受けて、その「強力な推進」のための施策をまとめたものとされる。同日付で、警察庁、法務省、入管庁及び厚生労働省は、「不法就労等外国人対策の推進(改訂)」を公表し、四省庁の連携をより強固にし、不法就労等外国人対策を一層強力に推進していくとした。
2 当会は、2025年(令和7年)7月24日付「人権侵害と差別助長のおそれが大きい「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」の撤回を求める会長声明」で、ゼロプランの推進は、難民認定されるべき人が強制送還されてしまう事態や、日本に家族がいるなど帰国できない事情を抱えた人の人権条約上の諸権利(家族が保護を受ける権利(自由権規約23条1項)、父母から分離されない権利(子どもの権利条約9条1項)等)を侵害する事態を招くおそれがあると指摘し、ゼロプランの撤回を求めた。ゼロプランをさらに強力に推し進めようとする強力推進パッケージには、特に以下の点で人権侵害の拡大につながる懸念がある。
まず、難民認定手続に関して、難民条約上の迫害に明らかに該当しない事情を主張していると入管庁が考える案件(いわゆるB案件)の類型を拡充するとする。しかしこのような拡充は、入管庁の恣意を拡大し、入管庁が予断をもって難民審査に臨む類型を広げるものであり、適正手続(憲法31条)が保障されない申請者が増えるおそれがある。
また、送還の推進に関して、長期にわたって仮放免されている者等について「収容した上での帰国説得」を行うとする。しかしこれは、もはや公務員による対等な関係性の中での説得ではなく強要・強制にほかならず、拷問等禁止条約が禁止する「拷問」(1条1項)または「非人道的な扱い」(16条)にあたる可能性がある。そもそも退去強制令書による収容は、逃亡や証拠隠滅を防ぐためのものであり(出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)44条の2第6項参照)、被収容者の意思に介入し、帰国意思を形成させること自体を目的として収容することは、法の目的を逸脱し、恣意的拘禁にあたる可能性がある(自由権規約9条1項違反)。
3 「不法就労等外国人対策の推進(改訂)」は、仮放免者等の就労の取締りを、警察を含む四省庁の連携の下で強力に推進するとするものである。これは生存のために就労するほかない仮放免者等を犯罪者と同視する風潮を強化するものであり、深刻な差別と人権侵害を惹起しかねない。当会は2022年(令和4年)3月29日付「仮放免者に対する生活支援や医療支援など人としての生存を支援し可能にする施策の推進を求める意見書」で、就労の禁止は人としての尊厳と品位を傷つける非人道的な扱いで自由権規約7条に反することを指摘し、日本政府に対して、仮放免者らへの生活支援の実施や就労の合法化を求めた。不法就労の摘発強化よりも、就労の合法化で不法就労を減らし、人権状況を改善することを目指すべきである。
4 政府は今年1月、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を公表した。同対応策に基づいて、先般の国会では、在留審査にかかる手数料を大幅に値上げすることを可能とする入管法改定がなされた。その改定に基づき入管庁が7月3日に公表した政令案によると、在留資格の更新手数料が窓口ではこれまで一律に6千円だったものが、許可期間3月以下は1万円、3月超6月以下は1万8千円、6月超1年未満は2万5千円、1年は3万3千円、1年超3年未満は4万8千円、3年以上5年未満は6万4千円、5年以上は7万5千円と、最大10倍以上に値上げされ、永住許可の手数料も1万円から20万円へと20倍に引き上げられることになる。
ゼロプランと相まって、在日外国人全般の生活を圧迫し在留を危うくする施策が相次いで導入されつづけている。しかし、いかなる「秩序」も、国籍にかかわらずすべての人に人権が保障されて初めて正当化される(世界人権宣言、人種差別撤廃条約等)。強力推進パッケージを含む上記の施策は人権保障の観点を著しく欠いている。
5 以上をふまえて、当会は、法務省及び入管庁に対し、ゼロプラン及び強力推進パッケージの撤回を、警察庁、法務省、入管庁及び厚生労働省に対し、「不法就労等外国人対策の推進(改訂)」の撤回を求め、内閣総理大臣及び国会に対して、仮放免者らの就労の合法化や仮放免者らへの生活の支援の実施を求めるとともに、当会が2024年(令和6年)4月26日付「入管難民法に憲法及び国際人権条約の遵守等を明記する改正を求めるとともに永住者資格取消制度の創設に反対する意見書」で求めた人権保障を基軸とする入管難民認定法制の構築により、すべての人が人権を等しく保障される共生社会の実現を力強く推進することを求める。
2026年(令和8年)7月23日
会長 谷 口 直 大
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