司法修習生の経済的支援の制度創設にあたっての会長声明(2017年4月20日)


  2017年4月19日、司法修習生に対し給付金を支給する改正裁判所法が成立しました。司法修習生に対する経済的支援は、法曹志望者が経済的理由によって法曹への道を断念することがないようにするため、また、司法修習生が安心して修習に専念できるようにするため必要なものであり、当会としても、法改正による新制度の導入は大いに評価するところです。
この法改正は、日本弁護士連合会、各弁護士会、法曹志望者を中心とする市民団体であるビギナーズ・ネット及び市民の皆様の長年にわたる運動によって実現できたものです。法改正に賛同いただいた国会議員を始め、皆様のご協力、ご尽力に感謝いたします。
しかし、新制度によっても、司法修習生に対する生活保障は十分とはいえません。基本給付として一律月額13万5000円、さらに住居給付を必要とする者には最高で月額3万5000円が給付されますが、所得税・国民健康保険料・国民年金保険料等を支払い、通勤交通費も自己負担することとなると、実質的な給付額は相当低いものとなります。司法修習生の平均年齢は約30歳であり、この給付額では世帯構成によっては生活保護水準を下回る可能性もあります。これでは、扶養家族を抱える者や他業種を経験した者にとって、安心して修習に専念できる経済的環境とはいえません。貸与制の併存で当面の費用は補填されるとはいえ、法曹の多様性の確保という観点からも、給付額が増額されるべきです。
また、新制度の導入とともに、給付金等の支給がなかった2011年から2016年の間に司法修習生に採用された者への救済策が講じられるべきです。そもそも法曹は、法の支配の下、裁判を受ける権利などの市民の権利を実現するための社会的インフラです。その担い手となるべき司法修習生を公費でもって養成することは国家としての責務です。修習の意義及び経済的支援の必要性に変わりはないにもかかわらず、ただ時期が異なるというだけで異なる取り扱いをされるのは、不公平であり不当です。
よって、当会は、新制度の導入自体は大いに評価するものの、多様な人材が安心して法曹を目指すことができるよう、給付額の増額と、2011年から2016年の間に司法修習生に採用された者に対する救済策を引き続き検討することを、政府に強く求めます。

      2017年(平成29年)4月20日

京  都  弁  護  士  会

会長  木  内  哲  郎
          

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