「少年法の適用年齢引き下げに再度反対する会長声明」(2019年1月24日)(本イベントは終了しました。)


少年法の適用年齢引き下げに再度反対する会長声明


  現在、法制審議会の少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会(以下「法制審部会」という。)において、少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることの是非等が議論されている。当会は、2015年6月24日付で「少年法の適用年齢引き下げに反対する会長声明」を公表しているが、改めて、少年法の適用年齢を引き下げることに強く反対の意思を表明する。
現行少年法は、刑事事件手続と異なり全件送致主義を導入し、審判までの間に調査官調査を実施し、必要に応じて鑑別所による心身鑑別も実施されている。そして、審判においては要保護性を重視した審理がなされ、保護観察等の社会内処遇や少年院送致などの施設内処遇の保護処分が選択されている。このような現在の少年法制度は、20歳未満の者については、いまだ心身の発達が十分でなく環境その他外部的条件の影響を受けやすいため、刑罰を科するよりもむしろ保護処分によってその教化を図る方が適切である場合が多いとの考え方を基礎として成り立っているところ、実際にも有効に機能しており、少年の検挙者数(人口比)は近年も減少の一途をたどっている。
現在の少年法が有効に機能していることについては、法制審部会においても確認がなされており、そうである以上、少年法の適用年齢を引き下げる必要性は皆無であり、むしろ少年法の適用年齢を引き下げてしまえば、これまで少年法が果たしてきた役割が失われ、18歳、19歳の更生が阻害されることによる再犯の増加が懸念される。
また、法制審部会では、少年法の適用年齢の引き下げに伴う代替手段として、若年者に対する新たな処分として起訴猶予となった者に対して家庭裁判所において保護観察処分等を行えるようにすることなどの検討もなされているが、そもそも本来引き下げる必要のない少年法適用年齢をあえて引き下げた上で、その代替策として現在少年に行われている処遇に類似する処遇を作り出そうとしているものであり本末転倒であるし、現在検討されている制度内容では、現行少年法制度と同様の機能を残すことは不可能である。加えて、刑事手続において不起訴処分となった者に対して別途保護観察処分等を行うことにも大きな問題がある。
なお、少年法の適用年齢の引き下げに賛成する根拠として、民法上の成人年齢が引き下げられたことに伴い、それとの整合性を図るべきであるという意見もあるが、前述のとおり、少年法は、心身の発達が十分ではない者に対しては保護処分により教化を図ることが適切であるとの考え方を前提に成り立っており、このことは、民法上成年に達していたとしても何ら変わりはない。法律の適用年齢は法律ごとにそれぞれの立法趣旨に照らして個別具体的に定めるべきものであることは至極当然のことであって、国民に対する「分かりやすさ」だけを求めて適用年齢を引き下げることは妥当でなく、現に未成年者飲酒禁止法や競馬法などにおいては、20歳以上とする適用年齢が維持されている。
以上のとおり、少年法の適用年齢を引き下げる必要性も許容性も皆無であるから、当会は、少年法の適用年齢を引き下げることに再度強く反対する意思を表明する。

2019年(平成31年)1月24日

京  都  弁  護  士  会

会長  浅  野  則  明


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