共謀罪の新設に反対する会長声明(2006年4月27日)
現在、衆議院法務委員会において、共謀罪を導入するための「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法案」が審議されています。
共謀罪は、死刑または無期もしくは長期4年以上の懲役・禁錮の刑が定められている罪に当たる行為について、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀」する行為を犯罪として処罰するというものです。
これは、犯罪の実行行為どころか予備行為さえなくても、黙示の合意も含めて合意さえあれば処罰の対象となり、しかも処罰対象とされる「共謀」の概念が極めて曖昧である点で、近代刑法の原則である罪刑法定主義をくつがえすものです。また、対象犯罪が600以上の広範なものとされている上、共謀罪摘発・立証のために電話・メールの盗聴など捜査手法の拡大が懸念されます。さらに、共謀を持ちかけた者が合意後に自首すれば刑が減免され、持ちかけられた者のみが処罰されることから、はじめから密告することを目的として共謀を持ちかけるという事態も起こり得ます。このように、共謀罪が導入されると、人と人とのコミュニケーションそのものを処罰することにより、表現の自由ひいては思想・信条の自由が侵害され、互いに疑心暗鬼に陥る監視社会化が進むことになります。
現在、与党から修正案が提示され、対象となる団体を「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体である場合に限る」とするとともに、「共謀に係る犯罪の実行に資する行為が行われた場合において」との文言を加えるとして、一見上記問題点に配慮したかのようです。しかし、その内実は、前者については、いったん犯罪の共謀がなされるとそれが団体の共同の目的であるとされてしまい、結局は対象となる団体の範囲を限定する効果を持ちませんし、後者についても、共謀罪の成立を立証するためには実務上必要であると修正前に政府が説明していたものを条文化したにすぎず、実質的には修正ではありません。このように、いずれの修正内容も共謀罪の成立を限定することにはならず、共謀罪の持つ根本的な問題を何ら解消していないことは明らかです。
よって、当会は、共謀罪の制定そのものに強く反対し、廃案を求めます。