少年事件 Q&A

「少年事件」って何?
   まだ満20歳になっていない人が、犯罪を犯したり(例えば万引き、自転車泥棒、カツアゲ、暴走行為など)、犯罪を犯すおそれがあったり(家出して夜の繁華街を中心に生活しているなど。これを「ぐ犯」といいます。)する場合には、原則として家庭裁判所で審判を受けることになります。家庭裁判所ではこの種の事件を「保護事件」と呼んでいますが、一般には「少年事件」と呼ばれています。

子どもでも「逮捕」されるの?
   逃げ出すおそれがある場合や、証拠を隠滅するおそれがある場合には、逮捕されることがあります。逮捕された場合、少年には弁護人をつける権利があります。また、言いたくないことは無理に言わなくてもいい権利(これを「黙秘権(もくひけん)」といいます。)があります。
   逮捕されると、最大72時間、施設に収容されます。収容される場所は、たいてい警察の留置場です。そのあと、容疑が晴れず、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがある場合には、さらに収容がつづくこともあります。
   少年事件では、特別な手続きとして、少年鑑別所に収容されることもあり(これを「勾留に代わる観護措置(こうりゅうにかわるかんごそち)」といいます)、この場合は最大10日間(逮捕を含めると最大13日間)の収容となります。
   しかし、大人と同じ手続きを踏むこともあります。その場合には、「勾留」として10日間、さらに延長して10日間、最大20日間(逮捕を含めると最大23日間)、収容されることがあります。収容される場所は、少年法の理念では少年鑑別所が原則となるはずなのですが、実際には警察署の場合も多いです。

「逮捕」されない場合はどうなるのですか?
   事件が発生した場合でも、逮捕や勾留はされないまま捜査が進められることが多いです。これを在宅(ざいたく)といいます。
   この場合は、警察や検察庁から何回か呼び出されて取り調べを受けたりすることがあります。この場合も、少年には弁護人をつける権利と、言いたくないことは言わなくていいという黙秘権があります。

「家裁送致(かさいそうち)」って何ですか?また、家庭裁判所に事件が送られると、どうなるのですか?
   すべての少年事件は、いったん家庭裁判所に送られます。現場では、これを「家裁送致(かさいそうち)」と呼んでいます。
   在宅事件では、捜査書類だけが家庭裁判所に送られます。
   逮捕・勾留されている事件では、捜査書類が家庭裁判所に送られるのと同時に、少年自身も家庭裁判所に連れていかれることが多いです(これを「身柄つき送致」といいます)。身柄つき送致の場合、裁判官がその日のうちに少年と面会し、引き続き少年鑑別所に収容して調査する(これを「観護措置」といいます。)かどうかを決定します。
   つづいて家庭裁判所では、裁判官が調査官に少年の調査命令を出し、それを受けて調査官が少年の性格や生活環境などを調べます。調査官は、少年や両親と面会して話を聞いたり、少年の家族の状態や交友関係を調べたりして、少年の処分についての意見を書きます。
   調査官の意見は、裁判官が処分を決めるときの参考にされます。少年が少年鑑別所で調査を受けた場合には、少年鑑別所の鑑別結果も家庭裁判所に届けられ、処分の参考にされます。

「観護措置(かんごそち)」って何ですか?
観護措置とは、少年鑑別所に少年を収容して少年の性格・資質や精神状態、生活環境などを調べる処分です。
   少年鑑別所の中では、鑑別技官という心理学等の専門家が、少年から話を聞いたり様々な心理テストを行ったりして少年の性格・資質等を判定します。この判定結果は、裁判官が処分を決めるときの参考にされます。
   観護措置の期間は、少年法では原則2週間と定められていますが、現状では、さらに2週間、合計4週間になるのが普通です。なお、少年が事実を認めていない事件などでは、さらに2週間ずつ観護措置が延長され、合計8週間収容されることもあります。

鑑別所ってどんなところ?
少年鑑別所は、少年に対する行動観察・心理テストや鑑別所技官との面接などを通じて、少年の性格・資質や生活環境などを調査するところです。決して罰を与える場所ではありません。少年鑑別所の中では、作文を書いて事件のことやこれまでの生活を振り返ったり、一人で冷静に考える時間が与えられたりします。また、運動や読書、貼り絵の時間などもあります。
   くわしくは、法務省のHPをご覧ください。

事件が家庭裁判所に送られると、必ず少年鑑別所に入れられるのですか?
少年事件では、事件が家庭裁判所に送られた後も、大部分の少年は観護措置を受けることはありません。家にいたままで手続きが進んでいきます。
   家にいたままで事件が処理されることを、在宅(ざいたく)と呼んでいます。
   在宅の場合、審判までの間に、少年や保護者は調査官と何回か面接したり指導を受けたりして、その結果によって審判を受けることになるかどうかが決められます。審判を受けずに手続きが終わる場合を審判不開始といいます。

「審判(しんぱん)」では何を決めるの?
家庭裁判所の審判では、まず、その少年が本当に犯罪を犯したかどうか、また、本当に犯罪を犯すおそれがあるのかどうかを、家庭裁判所の裁判官が判断します。
   もちろんこの時点で、犯罪事実や犯罪のおそれが認められなければ、何の処分もありません(この場合を「不処分」または「非行なし不処分」といいます。)。
   また、犯罪事実や犯罪のおそれがあると認められた場合でも、事件の中身がそれほど重大ではないとか、本人がよく反省している、家庭環境が良好、前に同じような事件を起こしたことがない、などの事情がある場合には、特に処分はありません(この場合を「不処分」または「非行あり不処分」といいます。)。
   犯罪事実や犯罪のおそれが認められ、しかもその少年の健全な育成のためには性格の矯正や環境の調整が必要だ、と家庭裁判所が判断した場合には、少年に対して次の3つのうちいずれかの処分がなされます(これらをまとめて「保護処分」といいます。)。
  1. 保護観察
    (審判後すぐ家に帰れますが、一定期間は定期的に保護司さんか保護観察官に会って生活の様子などを報告し、指導を受けなければなりません。)

  2. 児童自立支援施設への送致、または児童養護施設への送致

  3. 少年院への送致
    (一定期間施設に収容されて、矯正教育を受けることになります。)


少年事件の「審判(しんぱん)」は、大人の刑事裁判とは違うの?
   少年事件の「審判」は、大人の刑事裁判とは根本的に異なっています。
   犯罪事実があるかどうかを裁判所が判断する、という点では同じですが、大人の刑事裁判では、被告人(犯人だと疑われている人)に対して、有罪の場合は「どんな罰を与えるべきか」に重点があるのに対し、少年事件の「審判」では、「少年が健やかに育つために、事件から立ち直るためにはどうしたらいいか」に主眼があるのです。
   ですから、少年事件の「審判」では、少年の立ち直りを支えるために、大人の刑事裁判とは異なった手続きが定められています。
   例えば、少年事件の「審判」は一般に公開されず、少年の家族、学校の先生、勤め先の社長さんといった身近な関係者以外は出席することができませんし、少年の名前や写真を広く発表することは禁止されています。また、審判は少年を責め立てるためのものではありませんから、懇切・なごやかに行わなければならないことになっています。

「審判(しんぱん)」では、どのようにして処分が決められるの?
   審判では、主に裁判官が少年にいろいろな質問をし(もちろん、付添人がついているときには付添人からも、少年の立場からいろいろな質問がされます。)、事件のこと、ふだんの生活のことなど、いろいろな話をしながら進められていきます。
   最終的には、裁判官が、少年の話や、調査官や付添人の意見を聞いた上で処分を決定します。
   少年が、自分は事件にかかわっていないと言ったときなど、事実を争っている場合には、検察官が審判に参加することがあります。検察官が審判に参加する場合には、必ず少年に付添人が付きます。付添人は、事実に争いのある部分について、少年に質問したり、証拠を提出したりする弁護活動を行います。
   この場合、少年に付添人がついていない場合は、国選付添人と言って、国が費用を出し弁護士の付添人が付けられます。

検察官って、どんなときに審判に出てくるの?
   (1)殺人(殺すつもりで人を殺した場合)や傷害致死(ケガをさせるつもりだったが、被害者が死んでしまった場合)など、故意による(わざとやった)犯罪で被害者が死亡したときや、(2)強盗・強姦・放火などの重大犯罪(死刑または無期・短期2年以上の懲役・禁固にあたる罪)で、少年が非行事実を認めていないときには、検察官が審判に出てくることがあります。
   検察官は、非行事実があったのか、なかったのか(その少年がその事実をやったのかどうか)を明らかにするために、事件の記録を検討して準備し、審判では、少年や証人等に対していろいろな質問を行ったりします。
   検察官が審判に参加する場合は、少年の権利を守るために、必ず付添人を付けることになっています。もしその少年に付添人がついていない場合は、国選付添人といって、国から費用を出して付添人が付けられます。
   付添人が、どのようなことをするのかについて、詳しく知りたい方は、付添人Q&Aをご覧ください。

少年から被害を受けた人は、事件の内容や審判の結果を知ることはできないのですか?また、事件について何も意見を言うことはできないのですか?
   少年事件の被害者は、家庭裁判所に申し出て裁判官の許可を受ければ、事件記録(少年の言い分が書かれた書類や、証拠写真など)のうち、非行事実そのものの部分に限って、記録を見たり、コピーしたりすることができます。
   また、被害者は、家庭裁判所に申し出て、裁判官または調査官に、被害についての心情や、その他事件について意見を聞いてもらうことができます。
   被害者が死亡したときや、心身に重大な故障を受けたときは、被害者の配偶者・直系親族(被害者の親・子ども・祖父母など)・兄弟姉妹が代わりに記録を見たり意見を言ったりすることができます。また、弁護士を通してすることもできます。
   少年の審判が終わったときには、家庭裁判所に申し出れば、その少年・法定代理人(普通は父母です)の氏名・住所、審判の終わった年月日、主文(少年がどういう処分になったかの結論)とその理由を通知してもらうことができます。
 以上に加えて、平成20年12月からは、被害者等による傍聴の手続きが新設されました。
 これは、家裁送致された加害少年が12歳以上で、殺人や傷害致死など故意(わざとやった)の犯罪や業務上過失致死傷などで被害者を死傷させた事件が対象で、被害者等が希望し、裁判所が少年の年齢(成人に近い少年ほど認められやすい)、心身の状態(安定しているほうが認められやすい)、事件の性質(被害の結果が重大で、悪質なほど認められやすい)、審判の状況などを考慮し、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と判断した場合に認められるものです。
  そして、この場合については、検察官が審判に出てくる場合と同様に、少年に付添人がいない場合は、裁判所が国選付添人をつけることになります。

どんな小さな事件でも、必ず「審判(しんぱん)」を受けなければならないの?
   そんなことはありません。
   家庭裁判所では、警察や検察などから送られてきた「少年事件」のすべてについて、審判を開始するかどうかを決定します。その結果、わざわざ審判を開くまでもない軽微な事件の場合には、初めから審判は開かれません(これを「審判不開始」といいます。)。

「保護処分」の、くわしい中身を教えてください。
保護処分は、非行のある少年の性格の矯正・環境の調整を目的としてなされるもので、(1)保護観察、(2)少年院送致、(3)児童自立支援施設・児童養護施設送致があります。

(1)保護観察
   審判で保護観察の処分になると、少年は家に帰ることができます。それから月に2回程度保護司に面会に行き、指導を受けます。保護司は、保護観察を受ける際の約束(この約束を「遵守事項(じゅんしゅじこう)」といいます。)を守っているか確認したり、生活や仕事のことについて相談に乗ったりして、少年が再び非行におちいることなく生活していけるように援助します。

(2)少年院送致
   少年院送致の処分になると、少年は家に帰ることはできず、少年院に送られることになります。
   少年院では、少年が将来社会生活に対応できるようになるために、規律のある生活のもとで教科の教育や職業の指導などを受けます(くわしくは法務省のHPをごらんください)。

少年院の種類
   少年院には、初等少年院・中等少年院・特別少年院・医療少年院があります。
   初等少年院は、だいたい14歳以上16歳未満の少年が収容されます。
   中等少年院は、だいたい16歳以上20歳未満の少年が収容されます。
   特別少年院は、犯罪的傾向の進んだだいたい16歳以上23歳未満の者が収容されます。
   医療少年院では、心身に故障があって医療的な措置が必要な14歳以上26歳未満の者が収容されます。

収容期間
   大まかに分けて、短期と長期があります。
   短期では半年程度、長期では、非行の程度などに応じて、1年またはそれ以上の期間、収容されて指導を受けます。

(3)児童自立支援施設・児童養護施設送致
   この処分は、少年院よりも開放的な施設で、家庭的な雰囲気の元で、少年の立ち直りを支援する処分です。児童自立支援施設の場合は、義務教育課程にある少年が主に対象となって、収容された少年は、施設のなかで義務教育を受けることができます。
   施設の概要については、関連HPをご覧ください。

審判を受けても、何も処分がない場合もあるのですか?
   審判の結果、非行事実がなかった場合(刑事裁判でいう無罪判決と同じです。)や、特に何らかの保護処分をしなくても、その少年が更生できると、裁判官が判断した場合は、何の処分も受けずに事件が終わります。これを「不処分」といいます。

「試験観察(しけんかんさつ)」って何ですか?
   少年を最終的に保護処分にするかどうか、保護処分にするとしても、どのような種類の処分にするかを、すぐには決めずに、しばらく様子を見るものです。
   試験観察には、審判が終わるとすぐに家に帰れる「在宅の試験観察」と、民間の施設等に住み込みながら指導を受ける「補導委託」とがあります。

(1)在宅の試験観察

   審判が終わるといったん家に帰ることができます。その後、数か月程度の間に調査官と何回か面接して状況を調査してもらい、その結果を踏まえて、もう一度審判を受けることになります。最終審判では、保護処分にするかどうか、どのような種類の処分にするかが決められます。

(2)補導委託(ほどういたく)
   補導委託では、例えば、鉄工所や飲食店などの民間の会社等に預けられ、そこで住み込みで仕事をし、生活指導を中心とした指導を受けます。その結果を踏まえて、数か月後にもう一度審判を受けることになります。最終審判では、保護処分にするかどうか、どのような種類の処分にするかが決められます。

子どもが、大人と同じような裁判を受けることはないのですか?
場合によってはありえます。
   家庭裁判所は、調査の結果、少年に対して、大人と同じような刑事処分をすべきだと判断したときには、その少年事件を検察官に送致することになっています。この場合には、原則として、大人と同じ刑事裁判を受けることとなります。いったんは、検察官から家庭裁判所に送られてきた事件が、再び検察官に送り返されることから、現場では、これを「逆送(ぎゃくそう)」と呼んでいます。
   検察官が、少年を起訴(少年を刑事裁判にかけるという書類を、裁判所に出すこと)すれば、その少年は大人と同じ刑事裁判を受けることになります。その結果、有罪とされれば、懲役刑(刑務所に行くこと)や罰金などの刑罰を受けることになります。ただし、執行猶予となる場合もあります。
   従来は、16歳未満の少年を刑事処分にすることはできなかったのですが、少年法の改正により、14、5歳の少年でも逆送して刑事処分となる場合があることになりました。
  また、同改正により、故意(わざとやった)の犯罪行為で被害者を死亡させた事件(殺人、傷害、強盗致死等)で、その事件の時点で16歳以上であった少年については、原則「逆送」するということになりました。

家庭裁判所に行く前に国選(国の費用)で弁護士をつける制度ができたと聞いたのですが。
 平成21年5月より、被疑者国選弁護人の制度が拡大されました。
 これは、逮捕(最大72時間)の後、勾留(少年の場合は勾留に代わる観護措置の場合も含む)に移った段階で、裁判所に対し希望すれば、国の費用で弁護人をつけてもらうことができる制度です。
  資力などの制限が一部ありますが、国選付添人と異なり、窃盗(万引き、バイク盗も窃盗にあたります)や傷害事件など長期(法定の刑期のうち長いほう)3年を超える事件について、選任が可能です。



少年事件の手続きで分からないことがあれば、
京都弁護士会子ども権利110番の方にお問い合わせください。



もどる