雲ヶ畑産業廃棄物処理施設問題に関する意見書(2002年12月26日)


雲ヶ畑産業廃棄物処理施設問題に関する意見書



意 見 の 趣 旨

  当会は京都市に対し、

1.京都市北区雲ヶ畑地区付近の産業廃棄物処理施設周辺地域(京都市北区雲ヶ畑地区から左京区静市市原町付近に至る府道61号沿線地域。以下「本件地域」という)の大気・土壌・水質等の環境について、住民参加のもとに、科学的で綿密な調査を実施すること

2.本件地域産廃処理業者に対して、不適正処理の事実を確認した場合には、廃棄物処理法等に基づく権限を最大限に活用して、口頭指導だけにとどまらない改善・措置命令などの行政処分を含む実効性ある措置をとること

3.「産業廃棄物の疑いのある物」に対しても報告徴収・立入検査ができること、「不法投棄の疑いがある」場合に搬入一時停止命令ができることなどを盛り込んだ条例を早期に策定すること

を求める。



  当会は京都府に対し、

1.鴨川の河川管理者として、本件地域産廃処理業者が鴨川河川区域に対して清潔を汚すおそれのある行為を行っていると確認した場合には、その禁止または制限の措置並びに違反者に対しその費用負担のもとに原状回復命令等の厳しい措置をとることを求める。



意 見 の 理 由

第1  当会の調査経過 

  京都市北区雲ヶ畑地区の地元住民等で作る市民団体「ほたるの会」(連絡先安井昭夫氏)から当会に対し、雲ヶ畑地域産業廃棄物処理施設問題に関する調査依頼がなされ、1999年(平成11年)8月21日、当会は現地調査を実施するとともに、同会会員・地元住民と面談し、産廃施設が進出してきた経過、被害の状況、京都市や京都府との交渉経過などについて事情を聴取した。

  さらに当会は、2000年(平成12年)12月13日、京都市産業廃棄物指導課担当者からヒアリング調査を実施し、2001年(平成13年)2月5日、京都府京都土木事務所管理課担当者からヒアリング調査を実施した。



第2  当会への調査申立に至る経緯 

  本件地域では、昭和60年代から複数の業者により野外焼却(野焼き)が行われていた。京都市は1987年(昭和62年)、北保健所・清掃局廃棄物指導課・北消防署・計画局風致課・建設局開発指導課・京都府京都土木事務所などからなる「雲ヶ畑街道環境問題協議会」を設置し、10数回の立ち入り調査等も行い、本件地域での違法な野外焼却操業の事実を把握していた。

  野外焼却をしていたうちの最大の業者は用地を拡大し、1993年(平成5年)には、産業廃棄物収集運搬業の許可を申請し、京都市はこれを許可した。許可を受けたのは「収集運搬」であって本件地域内にある用地は廃棄物の「一時仮置き場所」とされていたが、雲ヶ畑地区住民によれば実際はここで収集した廃棄物を焼却し灰や瓦礫類を埋める等の不適正処理が行われていたとされる。1995年(平成7年)上記業者は収集運搬品目に「廃プラスチック類・金属くず・ガラスくず及び陶磁器くず」を追加する許可申請をし、京都市はこれを許可した。1997年(平成9年)には上記業者は、当時の廃棄物処理法上「許可」の要らない煤煙発生施設装置(処理量1日4.8トン)の「届出」を出したが、京都市はこれを指導し、産業廃棄物「処分業」の許可申請をさせ、1998年(平成10年)これを許可した。

  一方これまでの間、本件地域では、依然として上記業者を含む複数の業者による野外焼却や許可外の不適正操業(許可された操業時間外の炉の稼働、一日処理量を超える廃棄物の搬入処理、違法埋め立て廃棄等)の事実或いはその兆候が、雲ヶ畑地区住民による観察調査活動(焼却炉から排煙の上がる時間帯や、府道を走るダンプの数、時間帯、積載量などを毎日観測している)で確認され、京都市環境局産廃指導課も事実を確認し、文書・口頭指導も行われてきていた。また、上記最大業者の用地の鴨川に面したよう壁が一部崩落し、その中から焼却灰や瓦礫、廃プラスチック類等が露出し鴨川へ流出している箇所が雲ヶ畑地区地元住民等により確認されていた。

  雲ヶ畑地区地元住民や前記「ほたるの会」によると、本件地域では蛍の減少などが報告され、土壌や鴨川の水質汚染、大気汚染など環境破壊の強い懸念が持たれている。



第3  雲ヶ畑地域の産廃施設及び鴨川の現状について

  1.本件地域と鴨川の歴史的経過、価値及び現状

  本件地域は、京都市中心部を流れ京都のシンボルでもある鴨川の源流部に位置し、本件地域上流約2キロメートルの雲ヶ畑地区には70戸、約250人の住民が居住している。雲ヶ畑の歴史は古く、古来林業のさかんなところで、平安京造営に際してはこの地の材木が用いられたと言い、またこの付近の清流の水は禁裏御所の御用水とされていたと伝えられている。

  鴨川は、京都市北区北縁の桟敷ヶ岳南麓を発した祖父谷川、同じく薬師峠南麓を発した岩屋川を源流部とし、謡曲「鳴神」で名高い北区岩屋不動(岩屋志明院)の南方岩屋橋で二川合流後、雲ヶ畑地区を「雲ヶ畑川」として貫き、左京区鞍馬滝谷峠からの直谷と貴船山からの樋ノ水谷の水を集めた中津川と雲ヶ畑中畑町出合橋でさらに合流し、以後一級河川「鴨川」の起点となる。その後鴨川は、産業廃棄物処理施設のある本件地域を府道61号線沿いに山中を蛇行しながら早川谷、椿谷、長谷といった谷水を集めて南東流し、左京区と北区の境を南流して、左京区静原地区の洛北発電所を過ぎるあたりから川幅を広げ、北区上賀茂柊野を経て平地に至って市内を南東流し、出町柳で高野川と合流し、その後市内中心部を南流して伏見区羽束師付近で桂川に注ぐ。

  鴨川の水は、古来から清浄な水とされ、平安京以前から人々の身を清める禊ぎの川水として用いられてきた。そして鴨川の源流部に居住する雲ヶ畑の住民は、古来から、鴨川の清浄を少しでも侵すような生活様式を避けて暮らしてきており、下流の市街地へ流れる鴨川の水の清浄を保全するべく、日頃並々ならぬ努力を注いできた。現在にあっても鴨川は、大都市内を流れる河川としては清浄を保ち、産業廃棄物処理施設のある本件地域から4キロメートルほど下流の北区柊野の志久呂橋の付近から四条河原付近に至るまででは、葵祭の祭列がゆく堤があり、世界遺産に指定された上賀茂神社、下鴨神社を左岸に抱え、五山の送り火の眺望も良く、アユが棲み、ユリカモメも飛来し、老若男女の大勢の市民が川遊び・魚釣・散策を楽しむ光景が春夏秋冬を問わず日常的に見られているところである。水深の浅い市内中心部の鴨川には川中に入って遊ぶ親水型のレクリエーション施設も行政によって多く設けられ、市民の憩いの場として頻繁に活用されている貴重な自然環境である。

  本件地域には、最大の業者である株式会社上村組(産業廃棄物処理業)のほか、約5箇所の産業廃棄物等の仮置き場が点在しており、雲ヶ畑地区住民によると、その中には無許可の野外焼却をしていた業者や、産廃土砂を鴨川へ流出させていた業者がある。また、業者の多くが鴨川に面した土地を操業用地とし、そのうち上村組敷地の一部にあっては焼却灰や瓦礫残土等が埋め立てられた土砂が崩れ鴨川河川敷に流出している状況であり、当会の現地調査でもこれを確認でき、流水の多い時や降雨時には土砂が鴨川へ流入していることが明らかであった。なお、2002年(平成14年)5月30日、京都府が現地調査をした結果、コンクリートブロックを積み上げた高さ4〜5メートルの盛り土部分が一部で約30メートルにわたって崩れていることが確認された。

  上村組の焼却炉は、対象とする廃棄物は木くず、1日運転8時間、月運転25日、1日処理量4.8トン、排出ガス温度は処理前800℃、処理後200℃で許可を得ている。しかしながら、地元住民が焼却炉から煙の上がっている時間帯を観察した結果では、早朝ないし夜にも排煙が見られ、1日8時間以上の操業をしている恐れがあり、また産廃を積んで出入りするダンプの数の観察結果から1日処理量以上の処理をしている恐れがあるとのことであった。2000年(平成12年)1月の京都市立ち入り調査では、炉の扉を開けたままの焼却、焼却物の未分離、炉温度の不安定などにつき指導を受け、許可時間帯外の稼働も確認されている。

  2.雲ヶ畑周辺の、大気・水質・土壌汚染等の現状(特にダイオキシンについて)

    a.土 壌

          京都市は雲ヶ畑や本件地域周辺で土壌調査は行っていないが、地元住民が2000年(平成12年)1月に摂南大学に依頼して独自に行った、よう壁崩落箇所でのダイオキシン調査では641.2ピコグラム−TEQ/gであった。

          環境基準値は1000ピコグラムであるが、2001年度(平成13年度)の京都市ダイオキシン類モニタリング調査では、市内44地点の平均値は1.9ピコグラム、濃度範囲は0〜16ピコグラムであり、これと比べると異常に高い数値と言える。

    b.排気ガス

          1998年(平成10年)7月25日に実施した上村組焼却炉の排ガス測定では、ダイオキシンは0.6ナノグラム−TEQ/Nm3であった。

          現在施行されている2000年(平成12年)1月15日施行のダイオキシン類対策特別措置法による基準値は、本件規模の焼却炉では2002年(平成14年)12月1日以降は10ナノグラム以下、新設炉であれば5ナノグラム以下である。

    c.水 質

          水質の関係では、1999年(平成11年)8月、11月に鴨川下流の南区京川橋付近で測定し、それぞれ0.057ピコグラム−TEQ/l、0.0027ピコグラム(基準値は1ピコグラム)のダイオキシンを検知した。

          2001年(平成13年)の京都市ダイオキシン類モニタリング調査では、北区高橋で0.07ピコグラム、上京区出町橋で0.1ピコグラム、中京区三条大橋で0.073ピコグラム、南区京川橋で0.13ピコグラムであった。また鴨川以外も含めた市内河川12地点の平均値は0.19ピコグラム、濃度範囲は0.07〜0.66ピコグラムであった。



  3.住民等の危惧と京都市、京都府の対応

  周辺住民等は、地域の大気、水質、土壌のダイオキシン等による汚染を危惧し、京都市に対し業者に対する操業停止や許可取消等を含む強い指導・措置を求め、京都府に対しては崩落したよう壁に対する業者への強い指導、改善命令等の有効な対策を求めている。上記「ほたるの会」は1992年(平成4年)から1993年(平成5年)に府が行った護岸工事の費用は本来業者が負担すべきものであり、違法な公費支出にあたるとして府に住民監査請求を行っている(本年5月29日に監査請求は却下)。

  これに対し、京都市は「抜き打ち(ただし測定には技術的に協力が必要なので事前連絡はしている)での立ち入り調査を不定期に行い、違反行為については口頭、文書での指導を行っている。処分は通例、口頭・文書での指導を経た次の段階であるが、そのためには十分な証拠収集が必要である。土壌調査は今のところ考えていない。」とのことであった。

  京都府によると、「平成4年頃、行政の権限で河川法第6条の『河川区域』の指定としての線引きをしたことはあり、河川区域に上村組の石垣が若干侵入した形で建っていることは確認しており、『ここは河川法の及ぶ地域である』という形で越境に対して指導はしている。ただ、上村組の土地と河川との官民の境界確定は未了であるため、現在は指導以上の強い措置は考えていない。現在も月1回程度のパトロールはしている。」とのことである。



第4  問題点と提言 

  1.京都市の責務と権限

  地方公共団体は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という)に基づき、産業廃棄物の適正な処理が行われるように必要な措置を講ずる必要がある。すなわち、廃棄物処理法を根拠とする法定受託事務(地方自治法第2条第9項第1号)として、処理業者に対する報告徴収権(廃棄物処理法第18条第1項)、立入検査権が認められているほか(同法第19条第1項)、産業廃棄物処理基準等に適合しない処理を行った者に対する改善・措置命令(同法第19条の3第2号、第19条の5第1項)産業廃棄物処理業の許可取消し又は停止(同法第14条の3)及び産業廃棄物処理施設の許可取消し又は改善若しくは使用停止命令(同法第15条の3)等の事務を受託している。

  さらに、環境基本法第28条は、「国は(第36条で地方公共団体に準用)、環境の状況の把握、環境の変化の予測又は環境の変化による影響の予測に関する調査その他の環境を保全するための施策の策定に必要な調査を実施するものとする」とし、大気汚染防止法第18条の23においても「地方公共団体は、その区域に係る有害大気汚染物質による大気の汚染の状況を把握するための調査の実施に努めなければならない」とし、京都市環境基本条例第18条も「本市は、公害その他の人の健康又は生活環境に係る環境の保全上の支障を防止するために必要な措置を講じなければならない」としている。

  このように、京都市は住民の健康および生活環境を守るべき責務があり、そのための権限も与えられている。生活環境への支障や人の生命・健康への侵害のおそれが顕著な場合には、報告徴収、立入調査は法的な義務となると考えられる。

  2.京都市による積極的対応の必要性

  京都市は前記のとおり、地域住民の健康を守り生活環境を保全する法的責務を負っている。

  前述の通り京都市は、上村組に対し「立ち入り調査などを不定期に行い指導をしている」ものの、住民の観察する限り、依然として不適正な操業は絶えず、市の指導は功を奏しているとは言えない。上村組の敷地内の土壌は長年の野外焼却、違法埋め立てによりダイオキシン等に汚染されている可能性があり、それがよう壁崩落により更に鴨川へ流出していることが十分推測されるのに、京都市は土壌調査を行う予定がないとしている。生活環境への支障や人の生命・健康への侵害のおそれは既に顕著に存在しているにもかかわらず、報告徴収・立入調査の権限を持つ行政が積極的な対応をしないのは行政としての責務放棄との非難を免れない。また京都市は、指導以上の強い処分を発動するには十分な証拠収集が必要だとしているが、行政指導をしても功を奏さないときは報告徴収権によって報告を求め(報告違反は罰則の対象となるほど強制力のあるもの)、この報告徴収を繰り返すことによって証拠収集をすることができるのであって、これをせずに「十分な証拠収集が必要であるからいまだ行政処分を発動することができない」というのは、証拠収集活動を行政自ら実効的に行うだけの予算配分、人員の配置がそもそもなされていない点を考慮したとしてもなお、当を得ないというべきである。

  鴨川は、前述したとおり本件地域住民のみならず京都市民全体にとっての貴重で良好な生活環境の一をなすものであり、京都市は、こうした市民の生活環境を汚染から守る責務があることは言うまでもない。そのためには、指導だけでは改善されてこなかった違法状態の除去を確実かつ早期に実現できるよう、その有する権限をフルに活用し、まずはより綿密で科学的な調査を積極的に行うべきである。そして調査の結果、汚染や違法操業が判明した場合には、指導に止まらず、市の持つ権限を最大限に活用して、改善・措置命令などの行政処分を含む実効性ある措置を積極的にとるべきである。

  3.京都府の責務と権限

  京都府は、一級河川である鴨川の指定区間内河川管理者(河川法第7条、第9条第2項)として、鴨川の安全を保持し環境を保全する責務を負っている。河川管理者である京都府は、また、廃棄物処理法第5条第4項及び第3項により、「河川の清潔を保つ責務」を負う。当該責務を全うするため、河川法は、「・・河川の流水の方向、清潔、流量、幅員又は深浅等について、河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為については、政令で、これを禁止し、若しくは制限し、又は河川管理者の許可を受けさせることができる。」(第29条第1項)、「この法律・・政令・・の規定・・に違反した者」に対して「・・河川を原状に回復することを命ずることができる」(第75条)との各規定を置いている。そして、河川法施行令は、「河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為」として、「河川を損傷すること」、「河川区域内の土地に土石又はごみ、ふん尿、鳥獣の死体その他の汚物若しくは廃物を捨てること」を禁止し(第16条の4第1項第1号、第2号)、「河川区域内の土地において土石、竹木その他の物件を堆積し、又は設置すること」につき河川管理者の許可を要するものと定めている(第16条の8第1項第2号)。

  すなわち、京都府は、鴨川の河川区域内の土地を産廃処理施設の操業用地としたり、焼却灰や瓦礫残土等を埋め立てる行為について、鴨川の清潔を汚し、河川管理に支障を及ぼすおそれのある行為として、禁止または制限することができるのであり、違反者に対する原状回復命令を行うことも可能である。

  4.京都府による積極的対応の必要性

  ところが、京都府は、月1回程度のパトロールを行い、上村組に対して越境の事実に関する形式的な指導をしているのみであり、官民境界の確定が未了であることを口実に、上村組に対して何ら効果ある指導を行えていない。京都府が負う上記責務の重大性に鑑みるに、誠に遺憾な事態であるといわなければならない。上記のとおり、上村組の敷地の土壌は、長年の野外焼却、違法埋め立てによりダイオキシン等に汚染されている可能性があり、それがよう壁崩落により更に鴨川へ流出し、鴨川にも汚染が広まっていることが十分推測される状況にある。上村組による野外焼却ないし違法埋め立ては、これによって発生していると思われるダイオキシン等の有害物質を鴨川に流入させていることは確実と思われることから、鴨川の清潔に対する重大な危険であるといえ、京都府の河川管理に支障を及ぼすものであるから、これに対しては禁止等の措置が取られるべきである。しかしながら、京都府の対応は、上記京都市の対応以上に消極的である。京都府によれば、鴨川上流の違法埋め立て問題は、1987年(昭和62年)ころから、住民からの「川が汚れている」「違法埋め立てがなされているのではないか」という声がきっかけとなり、「機動班会議」を設置するなどして調査を開始したが、1992年(平成4年)に上村組が積みブロックを設置してからは違法埋め立て問題は落ち着いたと認識し、機動班の案件からは外したとのことである。しかし、河川の汚染は決して、汚泥等の目に見えるものばかりではない。流域の環境保全等のためには、ダイオキシン等の微量有害物質についても、京都市に対する前記意見同様、綿密な調査を行う必要があるといわなければならない。また、よう壁の崩落や土砂の流出等が起きた場合には、これが鴨川の清潔に対する重大な侵害に該当することは明らかであるから、これを強く禁止し、違反業者に対しては当該業者の負担による原状回復を命ずる等の措置を速やかに取ることが必要である。

  5.環境調査の方法について

  環境調査を実施するに際しては、地元住民やその推薦する科学者の参加を保障し、測定器具の選定、測定地点の決定、測定時間や回数など具体的測定方法について住民の意見を充分に尊重することが重要である。

  焼却炉の排気ガス中ダイオキシン調査は、完全な抜き打ち測定や24時間継続監視の方法が最良であるが、それがたとえ現在技術的な理由等で困難であるならば、業者に法遵守の動機付けを与えるためにも、調査回数を現状より可能な限り頻繁に行うべきである。

  土壌中ダイオキシン測定は、前述した通り、鴨川への浸出汚染が危惧されることから、早期に実施すべきである。土壌調査は採取ポイントの選定により大きな誤差が出ることから、できるだけ多数の地点、地層に設定すべきである。

  水質については、現在ダイオキシンを測定しているのは、産業廃棄物処理施設から相当程度離れた場所での測定である。しかし、この測定は、本来水質汚濁防止法に基づいて以前から実施されている一般的な公共用水域環境基準の測定であり、本件産業廃棄物処理施設を念頭においたものではない。従って、本件産業廃棄物処理施設からの水質汚染の疑いを強く指摘されている場合には、京都市としては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基く指導の一環として、同施設に近接したポイントにおいて水質検査を実施すべきである。

  このように京都市は、大気、土壌、水質について、よりきめ細かな環境調査を実施して本件地域の汚染実態を解明すべきである。



第5  産業廃棄物の不適正処理を防止する規制の必要性

1.当会は、2002年(平成14年)1月にも、「大岩街道産廃処理施設問題に関する意見書」を公表し、京都市に対して、(1)大岩街道沿い産業廃棄物処理施設周辺地域の大気・土壌・水質等の環境と周辺住民の健康状態についての綿密な調査の実施、(2)本件地域産廃処理業者に対して、不適正処理の事実を確認した場合には、廃棄物処理法等に基づく権限を最大限に活用して、口頭指導だけにとどまらない改善・措置命令などの行政処分を含む実効性ある措置をとることを求めてきた。

2.しかし、本件地域や大岩街道沿い等の産廃処理施設が密集する地域における不適正処理を防止するためには、これらの地域で操業する産廃処分業者に対する指導、規制の強化だけでなく、不適正処理の対象となりうる産業廃棄物の移動、集積を防止することが必要であると考えられる。

    また、従来から、産廃業者の中には、1.「自社廃棄物であるから産廃ではない」、2.「(処理ないし放置しているにも関わらず)保管しているだけである」、3.「有価物であるから産廃ではない」といった抗弁をして法の適用を逃れようとする者があり、かかる抗弁を封じることができる規制の枠組みが必要であると考えられる。

3.京都府は、かかる抗弁に対抗するため、1.自社廃棄物の積替保管用地の届出義務を課し、2.「産業廃棄物の疑いがある物」であっても知事の報告徴収権・立入調査権が及び、3.法による改善命令等の前段階であっても、産廃の不法投棄の「疑い」があり行為の継続により環境が損なわれるおそれがあるときは産廃の「搬入一時停止命令」ができる、という権限規定を盛り込んだ新しい条例の策定を進めており、かつ滋賀県とも連携して制定を目指していると伝えられる。この条例の立法趣旨は、産業廃棄物の不適正処理を未然に防止するために、廃棄物処理法に基づく知事の権限をより効果的に行使できる仕組みを構築しようとするものであると説明されており、このような新条例の制定は、産廃問題に対する行政の取り組みの積極姿勢を示すものとして評価できる。

4.しかしながら、廃棄物処理法の所管の関係で、この府条例が制定されても京都市には適用されない。京都府・滋賀県が広いエリアで連携してこうした規制を強めている中で、人口や経済活動の規模において周辺地域よりも大量の産業廃棄物の発生、移動が見込まれる京都市域だけが規制が緩いというダブルスタンダードの状態は、産廃政策として余りに不均衡であり、新条例の実効性を確保するという観点からも不適切である。

    京都市も、足並みをそろえて京都府と連携し、同様の条例の策定に取り組むべきである。



                                                                                  以  上




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