「速やかに朝鮮学校を高校無償化の対象に指定する手続を進めることを求める会長声明」(2011年2月15日)

  2010年4月1日から、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下「高校無償化法」という。)が施行され、高校無償化制度(高等学校等就学支援金制度を含む。)がスタートした。朝鮮学校については、同制度スタートと同時に高校無償化の対象とはされず、文部科学大臣の諮問機関として2010年5月26日に設置された「高等学校等就学支援金の支給に関する検討会議」(以下「検討会議」という。)によって、高校無償化の対象として指定されるか否かが判断されることとなった。2010年8月30日、検討会議の報告(「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等について」)が発表され、朝鮮学校については、同報告を踏まえて2010年11月5日に決定された「(高校無償化法)施行規則第1条第1項第2号ハの規定に基づく指定に関する規程」(以下「規程」という。)に基づき、高校無償化の対象とするか否か最終判断されることとなった。規程の発表を受け、全国にある全ての朝鮮学校が、2010年11月30日までに申請手続を完了している。

  しかしながら、2010年11月23日に起きた韓国・延坪島での軍事衝突事件の直後、上記申請に対する指定手続が停止される措置がとられる事態となった。報道によれば、「問題の重大性を考え、いったん停止するのが望ましい」と判断した菅直人内閣総理大臣自らが、高木義明文部科学大臣へ手続停止の指示を行ったとのことであった。

  上記停止措置について定めた明文上の規定はどこにも存在しない。このような措置は、法律による行政の原理を逸脱し、法治国家として許されない。

  のみならず、上記停止措置は、遅滞なく申請の審査を開始しなければならないとする行政手続法7条にも違反する。

  しかも、朝鮮学校と同様の規程に基づき同時期に申請を行った横浜市内のインターナショナルスクールについては、通常通り手続が進められており、朝鮮学校の指定手続のみが、恣意的に中断されたままである。

  このような事態に鑑み、本年1月17日には、学校法人東京朝鮮学園が、文部科学大臣に対し、東京朝鮮中高級学校を高校無償化の対象として指定することを求める異議申立てを行った。しかしながら、本年2月4日、高木義明文部科学大臣は、上記停止措置の理由について、「北朝鮮による砲撃が、我が国を含む北東アジア地域全体の平和と安全を損なうものであり、政府を挙げて情報収集に努めるとともに、不測の事態に備え万全の態勢を整えていく必要があることに鑑み、当該指定手続を一旦停止しているもの」との回答を行い、未だ指定手続を再開していない。文部科学大臣自らが明らかにした上記停止措置の理由は、政治的・外交的判断以外の何ものでもなく、「外交上の配慮などにより判断するべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断するべきものであ」るとした政府の統一見解や、「家庭の状況にかかわらず、全ての意志ある高校生等が、安心して勉学に打ち込める社会をつくるため」(文部科学省ホームページより抜粋)に創設された高校無償化制度の趣旨に反する。

  そもそも、当会会長声明(2010年3月16日付「朝鮮学校に通う子どもたちを高校無償化の対象から排除しないことを求める会長声明」)でも述べた通り、朝鮮学校を高校無償化の対象から除外することは、朝鮮学校に通う子どもたちの教育を受ける権利を侵害し、平等原則にも反する。規程に基づく指定手続は朝鮮学校を念頭に置いたものであり、朝鮮学校のみに対して別枠の手続を設けて結論を先延ばしにしてきたこと自体が、朝鮮学校に通う子どもたちに対する人権侵害である。

  約1ヶ月後には2010年度の3年生の卒業も迫っており、高校無償化制度の趣旨に即した政府の適正な判断が、一刻も早く示されなければならない。

  以上より、当会は、上記停止措置を解除し、速やかに朝鮮学校を高校無償化の対象として指定する手続を進めることを強く求めるものである。

  2011年(平成23年)2月15日

京都弁護士会

会長  安  保  嘉  博





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