谷口直大会長インタビュー
京都弁護士会の第134代会長に就任した谷口直大弁護士へのロングインタビューです。祖父の代から続く三代目弁護士として、そして約900名の会員を束ねるリーダーとして、これからの司法界や弁護士会のあるべき姿について伺いました。時折見せるユーモアや、学生との出会いをきっかけに福井県鯖江市に事務所を開設したというフットワークの軽さ、そして「弁護士としての誇り」を取り戻したいと語る熱い胸の内に迫ります。スローガンに掲げる「あなたの近くに京都弁護士会」に込められた思いや、今後の展望など、現場の空気感をそのままにお届けします。
Q: まずは京都弁護士会の新会長、ご就任おめでとうございます。ご自分が第何代の会長かわかりますか?
A: ありがとうございます。第134代だと思います。
Q: まず健康診断のようにプロフィールをお伺いしたいのですが、年齢、ご家族構成などはいかがですか。
A: 年齢は54歳です。妻と、男の子と女の子合わせて3人の子供がおります。お酒はほとんど飲まず、お付き合い程度ですね。遺伝もあって10年以上前から糖尿病の傾向があるので、食事療法と薬でコントロールしており、タバコは生まれてこの方吸ったことがありません。
Q: 谷口先生は祖父の代から続く三代目の弁護士ですが、自然と弁護士を目指されたのでしょうか?
A: そうですね。父は直接的には言いませんでしたが、明治生まれの祖父からは、跡取りとしての言葉や雰囲気を感じていました。私自身もそういう環境の中で、「弁護士を継ぐことが自分の使命なんだ」と自然と思い込み、他の道を考えることもなく今に至ります。在野法曹として権力に対して正義を貫くというマインドは、しっかりと引き継いでいきたいと思っています。
Q: 立候補のご挨拶にある「あなたの近くに京都弁護士会」というスローガンについて詳しく教えてください。
A: そこで言う「あなた」は、市民の皆さんと弁護士会の会員と、両方の意味を持たせています。一般的には「市民に寄り添う」という意味になりますが、弁護士会がその役割を果たすためには、まず弁護士同士が団結していなければなりません。私が弁護士になった当時は会員数が300人くらいで、自然と顔が見える関係がありました。しかし現在ほぼ900人に増え、会員同士や弁護士会との距離が広がってしまっています。プレゼンスを発揮するには、まずお互いが近くにいてまとまる必要がある、そんな思いからこの言葉を書きました。
Q: 市民に近づくためには、どのような動きが必要でしょうか?
A: 情報発信を多くしていくことですね。最近は出張相談なども行っていますが、市民から近づいてくるのを待つだけでなく、弁護士会側から近づいていく活動が必要です。距離が近くなれば、紛争が泥沼化する前の傷が浅い段階で、早く相談していただけるようになります。お医者さんで言えば、手術が必要になる前の健康診断の段階で見つけるような形が理想的ですね。
Q: 2026年度は司法界にどのようなことが起きる年になりますか?
A: 民事裁判のIT化が5月からスタートします。また、並行して刑事裁判のIT化も進められています。これが実現されれば、裁判の進行がスピーディーになり、市民にとっても早期解決ができるようになっていくと期待しています。
Q: 先生は福井県の鯖江市にも支店をお持ちですが、どのような経緯だったのでしょうか。
A: 私が京都大学の法律相談部でOBとして指導していた際、ある学生が「鯖江市がすごく面白い」と連呼していたのがきっかけです。鯖江市はオープンデータを推進し、人口も増えている元気な街でした。司法過疎の問題もありましたので、その学生と一緒に鯖江市を訪問し、地元の方にも歓迎していただいたことで、一から事務所を立ち上げてみようと決意しました。まちづくりや行政と連携した仕事ができ、市民との距離が近いのが地方の魅力だと実感しています。
Q: ご挨拶の中に「誇りある職務」「市民にとって憧れの職業」という言葉がありますが、これについてお聞かせください。
A: かつて弁護士は、法律の専門家として市民を導き、被害を被った人を助ける「先生」としての存在であり、憧れでした。しかし司法制度改革で弁護士の数が増え、サービス業的な側面が強くなってきました。もちろんクライアントのために尽くすことは間違っていませんが、それと合わせて「社会正義を実現する」という本来の使命を担う必要があります。弁護士としてのプライドや使命感を取り戻すことで、再び市民から尊敬され、憧れられる存在になっていきたいと思っています。
Q: 最後に、900人のリーダーとして1年間ブレずにやっていきたいことを教えてください。
A: 私はトップダウンで引っ張っていく性格ではないと思っています。ボトムアップで皆の意見を吸い上げ、各委員会が活躍しやすい環境を作り、応援していくのが私の役割です。ブレずにやっていきたいのは、「皆平等」「みんなで支える京都弁護士会」、そして「誇りある職務」という3つの指針です。市民の皆様には、京都弁護士会があってよかったと思ってもらえるような活動をしていきますので、ぜひ見守っていただき、ご要望があればお寄せいただきたいと思います。
本日は貴重なお話、ありがとうございました。(2026年4月1日)
