ぬるま湯
「ぬるま湯」というタイトルを見て
「あーぬるめのお湯で半身浴ってホントリラックス出来ますよねー」
と思われた方,ごめんなさい。全然違う話をします。
皆様はじめまして。私は今年(2019年)から京都弁護士会に入会した松井佑樹という者です。このブログは,新人弁護士が自分の好きな内容を自由に語ってみる,というのがテーマとなっております。宜しければいましばらく私のお話に付き合って下されば幸いです。
いきなりですが,私,「めぞん一刻」という作品が大好きなのです。原作であるマンガの作者は,高橋留美子先生という方で,「うる星やつら」,「らんま1/2」から,最近では「境界のRINNE」など長年に渡って数々の名作を連載されている大作家さんです。
そんな数ある名作の中でも私が一番好きなのが「めぞん一刻」。最初にこの作品を知ったのはアニメ版の再放送を見たときでして,当時中学生だった私は「こんな面白い作品があるんだ!」と毎週ワクワクしながら視聴しておりました。
ちなみにこの再放送,土曜日の真夜中3時くらいに放送されていたのですが,ちょうど同じ時間帯にこれまた傑作柔道アニメである「YAWARA!」が他局で放送されておりました。全録どころかW録すらない時代,どちらをリアルタイムで視聴するのか,どちらをビデオデッキのVHSテープ(3倍速)で録画するのかという究極の選択に毎週頭を悩ませておりました。
閑話休題。そんな「めぞん一刻」のストーリーは,一刻館というアパートの管理人である音無響子さんを巡って,住人である五代くんと,イケメン金持ちの三鷹さんが火花を散らしながらも,他の個性溢れる登場人物たちとのドタバタに巻き込まれるというもので,ラブコメの始祖と言っても過言ではない作品です。
そして私が思うこの作品の魅力が最も溢れ出ているセリフがこちら↓
「なんだかホッとしてしまった…もとのぬるま湯に戻るだけなのにね」
これは管理人である響子さんが,三鷹さんから不本意ながら別の女性とお見合いしたものの断ることになると告げられた際の独白(モノローグ)。
個人的に,ラブコメは,恋が進展しそうでなかなかしないというこのもどかしさこそが一番の魅力だと思っています。ですが,一方で「いつまで同じことやってるの」という読者からのツッコミも含めたマンネリとの戦いが避けられない構造がある。これを解消する為にコメディの部分を多くしたり,登場人物を増やしたり,急に主人公が朴念仁になったりする・・・のではないでしょうか。
だからこそ,板挟みになっている渦中の登場人物自身が発した「ぬるま湯みたいな関係が続けばいい」というセリフは,このマンネリをあえて正面から受け止めて,「それでもいいじゃないか」という開き直りであり,そこに私は清々しさすら覚えてしまうのです。
もちろんこれは高橋留美子先生が描く登場人物たちの魅力溢れるやり取りをいつまでも見ていたいと思わせるずば抜けた力量があってこそ。この「いつまでも甘美な世界に浸っていたい」というテーゼは,同じ作者の「うる星やつら」を原作とした劇場版作品「ビューティフル・ドリーマー」ではまた違った角度から取り上げられており,私はそんなところにも何となく面白さを感じています。
話を「めぞん一刻」の方に戻しますが,ここからさらに面白いのが,このセリフが出たあたりから物語は急激に推進力を得てジェットコースターのように話が進んでいきます。はてさてここから話はどうなっていくのか,その結末はぜひ皆さんの目でお確かめ下さい。そしてまたいつかどこかでお会いしたときに一緒に語り合うことが出来れば至上です。
ここまで読んでいただいた方,私のよもやま話に付き合っていただきありがとうございました。