意見書

「各種学校」である外国人学校等も幼児教育・保育無償化の対象とすることを求める意見書


2020年(令和2年)2月19日

内閣総理大臣    安  倍  晋  三  殿
文部科学大臣    萩生田  光  一  殿
厚生労働大臣    加  藤  勝  信  殿
京都府知事      西  脇  隆  俊  殿
京都市長        門  川  大  作  殿

京  都  弁  護  士  会

会長  三  野  岳  彦



「各種学校」である外国人学校等も幼児教育・保育無償化の対象とすることを求める意見書


第1  意見の趣旨
1  国は、「各種学校」として認可を受けた外国人学校やインターナショナル・スクールの幼児教育・保育施設についても、幼児教育・保育の無償化制度の対象とするべきである。
2  京都府及び京都市は、「各種学校」として認可を受けた外国人学校やインターナショナル・スクールの幼児教育・保育施設に対し、国がこれらの施設を幼児教育・保育の無償化制度の対象とするまでの間、財政的支援を実施すべきである。

第2  意見の理由
  1  幼保無償化制度の対象から「各種学校」が除外されたこと
子ども・子育て支援法の改正を受けて2019年(令和元年)10月1日に始まった幼児教育・保育の無償化(以下「幼保無償化制度」という。)は、「各種学校」の幼児教育・保育施設を適用対象から除外した。京都府下では、京都朝鮮初級学校、京都朝鮮第二初級学校の附属幼稚園、Kyoto International SchoolのEarly Learning Program(いずれも京都市所在)が幼保無償化制度の対象外とされている。
学校教育法は、同法上の教育機関として、「学校」(同法一条。いわゆる「一条校」)、「専修学校」(同法124条)、「各種学校」(同法134条)の3種類を定めている。このうち、幼保無償化制度の対象から除外されているのは「各種学校」の幼児教育・保育施設のみである。
2  外国人学校やインターナショナル・スクールは学校教育法上「各種学校」になるしかないこと
2019年(令和元年)時点で、全国には、「各種学校」として認可を受けた外国人学校やインターナショナル・スクールが128校存在している。
教育施設が「学校」(幼稚園、小学校、中学校、高等学校等の「一条校」)としての認可を受けるためには、文部科学大臣の定める要領(幼稚園教育要領、学習指導要領)に準拠した教育を行う必要がある(同法1条、25条、33条、48条、52条)。しかし、外国人学校やインターナショナル・スクールは、外国にルーツのある子どもたちのニーズに合わせた教育を行うことを目的としており、子どもたちのルーツの国の言語や文化・歴史、教育制度等をふまえたカリキュラムや子どもたちの国際的な背景を踏まえたカリキュラムでの教育を行うことにこそ存在意義がある。そのため、現制度上、外国人学校やインターナショナル・スクールが「学校」となることは不可能である。
また、「専修学校」としての認可を受けるためには、「我が国に居住する外国人を専ら対象とする」学校であってはならないため(同法124条)、外国人学校やインターナショナル・スクールは「専修学校」になることもできない。
その結果、外国人学校やインターナショナル・スクールは、学校教育法上の機関として認可を受けようとする場合、「各種学校」として都道府県の認可を受けるしかない(同第12章「雑則」、134条)。
3  「各種学校」は外国にルーツのある子どもたちの人権保障に貢献していること
上記の制度的制約の下で、外国人学校やインターナショナル・スクールは、「各種学校」としての認可を受け、外国にルーツのある子どもたちの教育を受ける権利(憲法26条1項、子どもの権利条約28条)、そして母語・継承語や自己のルーツに関わる文化を享有する権利(同30条)の保障に大きく貢献している。
日本で暮らす外国にルーツのある子どもにとって、ルーツの国の言語、文化に基づく幼児教育・保育を受けられる環境は、言語的な発達やアイデンティティを育むうえでかけがえのないものである。その環境を保障することは憲法及び子どもの権利条約上の国の責務である。
4  「各種学校」の除外は外国にルーツのある子どもたちに対する差別政策であり憲法及び人権条約に違反すること
今般の幼保無償化制度は、「各種学校」としての認可を受けた外国人学校やインターナショナル・スクールの幼児教育・保育施設を無償化の対象から除外した。これは、それらの施設に通う外国にルーツのある子どもたちから、外国にルーツがあることを理由として教育を受ける権利(憲法26条1項、子どもの権利条約28条)、そして母語・継承語や自己のルーツに関わる文化を享有する権利(同30条)を享有する機会を奪う差別政策にほかならず、憲法14条、自由権規約2条1項、社会権規約2条2項、子どもの権利条約2条1項及び2項、そしてあらゆる人種差別を撤廃する国際条約5条(e)(ⅴ)が定める差別禁止原則に違反し、許されない。
5  子ども・子育て支援法の基本理念は「全ての子ども」を支援するものであること
幼保無償化制度を定める子ども・子育て支援法も、その目的を「一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与すること」と定め(1条)、基本理念を「子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援の内容及び水準は、全ての子どもが健やかに成長するように支援するもの…」としており(同2条2項)、ここにいう「子ども」は、国籍やルーツ、「各種学校」に通うか否か等によって区別されていないし、区別されるべきものでもない。
同法のこのような目的や基本理念からすれば、日本に住むマイノリティである外国にルーツのある子どもたちが、如何なる口実によるものであれ幼保無償化制度の適用対象から漏れてしまうことはあってはならない。
6  地方自治体による支援が可能であり望まれること
幼保無償化のための地方自治体独自の支援について、閣僚合意(平成30年12月28日)は、「6.その他  (幼児教育の無償化に伴う取組)」において、「地方自治体によっては、既に独自の取組により無償化や負担軽減を行っているところがある。今般の無償化が、こうした自治体独自の取組と相まって子育て支援の充実につながるようにすることが求められる。このため、今般の無償化により自治体独自の取組の財源を、地域における子育て支援の更なる充実や次世代へのつけ回し軽減等に活用することが重要である。」と指摘している。
さらに、内閣府「幼児教育・保育の無償化に関する自治体向けFAQ【2020年1月17日版】」の1-22は、認可を受けていないが、地域や保護者のニーズに応えて教育活動を行っている、いわゆる幼児教育類似施設について、上記閣僚合意を引用しつつ、「国としては、その方策の一つとして、今般の無償化の対象とならない施設の利用についても、地域の教育機会の確保に重要な役割を果たすと認められるものであれば、支援の充実を積極的に検討いただきたいと考えています。地域や保護者のニーズに応える幼児教育類似施設であって、自治体が積極的に支援を行うようなものについては、国としても、地方と協力してどのような支援ができるか検討してまいります。」と宣言している。
以上に加え、前述した憲法、国際人権規約、子どもの権利条約及び人種差別撤廃条約の各規定並びに子ども・子育て支援法の目的及び基本理念に鑑みれば、地方自治体には、国が幼保無償化制度の対象に「各種学校」を含めるまでの当面の措置として、積極的な財政的支援を実施することが求められる。
実際にも、埼玉県志木市や、東京都国立市等、幼保無償化制度の対象外となっている幼児教育類似施設や外国人学校の幼稚部に対し、独自の支援を行っている地方自治体がある。
京都府及び京都市は、前述の3施設が所在する地方自治体として、積極的な財政的支援を実施すべきである。
7  結論
以上より、当会は、国に対し、意見の趣旨1の対応を求め、京都府及び京都市に対し、意見の趣旨2の対応を求める。
以  上


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