「検察庁法改正案に反対する会長声明」(2020年4月2日)(本イベントは終了しました。)


1  政府は、本年3月13日に国家公務員法等の一部を改正する法律案を閣議決定し、同日国会に提出した。同法律案には検察庁法の一部改正が含まれており、その改正内容は、すべての検察官の定年を現行の63歳から65歳に段階的に引き上げた上、63歳に達した者は原則として次長検事や検事長に任命することができないとしつつ、「内閣」が「職務の遂行上の特別の事情を勘案」して、「内閣が定める事由がある」と認めれば、63歳以降も次長検事や検事長を継続させることができるというものである。
2  しかし、この改正内容は、以下のとおり、重大な問題をはらんでいる。
    すなわち、検察官は、公訴権を独占する準司法機関であり、憲法上も、77条2項において、最高裁判所の定める規則に従わなければならない存在であると明記されている。そして、憲法上、国会議員も国務大臣も刑事訴追の対象から除外されていないことからすれば、権力犯罪に対しても厳正に検察権を行使できるよう検察官に対する政治的勢力からの圧迫や干渉は排除されなければならない。したがって、検察官には、その準司法的性格に鑑み、立法府や行政府からの干渉を受けない高度の独立性、中立性及び公正性が憲法上要請されているというべきである。
    ところが、今般の改正案によれば、時の内閣の意向次第で検察庁幹部の人事に介入することが可能となり、検察官の独立性、中立性及び公正性は著しく損なわれる 。ひいては、検察組織全体に対する国民の信頼をも大きく揺るがすものとなる。
3  当会は、本年3月5日、東京高検検事長の定年を延長した閣議決定について、「内閣が違法な定年延長によって検察の人事に干渉することを許せば、政権からの独立を侵し、その職責を果たすことができるかについて重大な疑念が生じることとなる。」として、同閣議決定に抗議して撤回を求める会長声明を発した。今般の法改正は、同じ過ちを繰り返した上にそれを固定化するものであって、到底看過できない。
4  よって当会は、憲法上の要請である検察官の独立性、中立性及び公正性を著しく損なう 検察庁法改正案に断固として反対するものである。

2020年(令和2年)4月2日

京  都  弁  護  士  会

会長  日下部  和  弘
      


会長声明データ[ダウンロード](.pdf 形式)

関連情報