声明

「最低賃金額の引上げ等を求める会長声明」(2020年7月21日)


1  中央最低賃金審議会は、毎年7月下旬頃、厚生労働大臣の諮問に応じて地域別最低賃金額改定の目安を答申している。昨年、同審議会は全国加重平均27円の引上げ(引上げ後の全国加重平均901円)を答申し、これに基づき各地の地域別最低賃金が決定された。
京都府においては、2019年(令和元年)8月、京都地方最低賃金審議会が京都労働局長に対し、中央最低賃金審議会の答申をそのまま受け入れ、27円引き上げて909円にすることが適当であるとの答申を行った(2019年(令和元年)10月1日発効)。しかし、時給909円では、フルタイム(週40時間、年52週)で働いても、年間所得約189万円にすぎない。昨年5月の静岡県立大学中澤秀一准教授監修による調査結果によれば、京都市北区在住の25歳・単身者をモデルとした月間の最低生活費は男性24万5785円、女性24万2735円であり、生活に必要な賃金は時給換算各1639円、1618円となる。この調査結果をみても、京都府においてさらなる最低賃金の引上げが必要であることがわかる。

2  今般、政府の緊急事態宣言により、経営基盤が脆弱な多くの中小企業が倒産、廃業に追い込まれる懸念も広がる中、最低賃金の引上げが企業経営に与える影響を重視して引上げを抑制すべきという議論もある。
確かに、急激な最低賃金の引上げは事業環境の悪化をもたらす危険性があるが、漸進的に労働者の所得を向上させることは、最終的に需要の創出につながり、経済活動にとって有益である。したがって、労働者の生活を守り、かつ、経済を活性化させるためにも、最低賃金額の引上げを後退させてはならない。
また、最低賃金の引上げによって経営に大きな影響を受ける中小企業に対しては、新型コロナウイルス感染拡大に備えた支援策が拡充されているところであるが、政府は、長期的継続的に中小企業支援策を強化すべきであり、最低賃金の引上げが困難な中小企業のための社会保険料の減免や減税、補助金支給等の中小企業支援策の検討を進めるべきである。なお、福祉・介護サービス従事者については、介護報酬の適切な引上げも有用であろう。
さらに、中小企業の生産性を向上させるための施策を有機的に組み合わせることや、これまで以上に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律や下請代金支払遅延等防止法を積極的に運用し、中小企業とその取引先企業との間で公正な取引が確保されるよう努めることも重要である。
抜本的には、上記諸施策を通じて、企業の労働生産性を高めることが必要なのであるが、そうした生産性向上に向けた企業努力や、それを支援する政策を促進させるためにも、漸進的に最低賃金の水準を引き上げていくことが求められる。

3  最低賃金の地域間格差が依然として大きく、ますます拡大していることも、見過ごすことのできない重大な問題である。2019年(令和元年)の最低賃金は、最も高い東京都で時給1013円であるのに対し、最も低い15県は時給790円であり、223円もの開きがあった。最低賃金の高低と人口の転入出には強い相関関係があり、最低賃金の低い地方の経済が停滞し、地域間の格差が固定、拡大している。都市部への労働力の集中を緩和し、地域に労働力を確保することは、地域経済の活性化のみならず、都市部での一極集中から来る様々なリスクを分散する上でも有用と言える。日本弁護士連合会は、2020年(令和2年)2月20日付けで「全国一律最低賃金制度の実施を求める意見書」を発表したところであるが、ここに記載されているように、地域間格差の縮小は喫緊の課題である。よって、全国一律最低賃金の導入を含む格差解消政策が検討されるべきであり、地方最低賃金審議会としても、最低賃金の地域間格差の問題を念頭に置いた最低賃金額の大幅な引上げを主体的に図るべきである。

4  以上により、当会は、京都地方最低賃金審議会に対し、労働者の健康で文化的な生活を確保し、地域経済の健全な発展を促すために、最低賃金額を大幅に引き上げる答申を行うよう求める。





2020年(令和2年)7月21日

京  都  弁  護  士  会

会長  日下部  和  弘



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