意見書

「修習資金の貸与金の返還について、令和2年度分の返還期限を3か月間延長し、新型コロナウイルス感染症の影響による収入減を理由とする返還期限の猶予を広く認めること等を求める申入書」(2020年7月2日)


2020年(令和2年)7月2日

最高裁判所長官  大  谷  直  人  殿


京  都  弁  護  士  会

会長  日下部  和  弘



修習資金の貸与金の返還について、令和2年度分の返還期限を3か月間延長し、新型コロナウイルス感染症の影響による収入減を理由とする返還期限の猶予を広く認めること等を求める申入書



第1  申入れの趣旨
  当会は、新型コロナウイルス感染症による影響に鑑み、最高裁判所に対して、修習資金の貸与を受けた元司法修習生の貸与金の返還に関して、次の事項を求める。
1  令和2年度分の貸与金の返還期限を、来る7月25日から3か月間延長し、来る10月25日とし、猶予申請の期限を来る8月31日に設定したうえで、そのことを修習資金の貸与を受けた元司法修習生に告知すること。
2  新型コロナウイルス感染症の影響による収入減を理由とする貸与金の返還期限の猶予を、公租公課における新型コロナウイルス対策の特例猶予と同様の基準で広く認めることとし、そのことを修習資金の貸与を受けた元司法修習生に告知すること。

第2  申入れの理由
1  2020年(令和2年)4月7日に政府により発令された新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を受け、全国の裁判所は、特に緊急性が高いとされる一部の事件を除いて裁判業務を停止した。同宣言解除後にあっても、裁判期日の遅延や停滞は、いまだ継続している。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、弁護士の新件受任件数も減少している。このような裁判業務の停滞や新件受任件数の減少は、弁護士の収入減の大きな理由となっている。
そして、新型コロナウイルス感染症の影響は今後も継続することが想定されるところ、再び感染が拡大すれば、全国又は一部地域において再び裁判期日が取り消されたり、さらに新件受任件数が減少したりするおそれがある。

2  こうした中、司法修習生に対する修習資金(以下「貸与金」という。)の貸与を受けた弁護士のうち、新第65期、第66期、第67期の司法修習生であった者については、本年度分の貸与金の返還期限が、来る7月25日に迫っている。
これらの弁護士は、弁護士登録から長くて6年ないし8年目であり、業務基盤が盤石でない者もいるところ、折しも新型コロナウイルス感染症による収入減が生じている中に貸与金の返還期限を迎え、本年度の貸与金の返還の負担に対する不安を有している者が少なくない。これらの者に対して、本年度も従来どおりに貸与金の返還を求めることは、生活と事業の基盤を脅かすことにもなりかねない。

3  そこで、まずは平成29年法律第23号による改正前の裁判所法(以下「裁判所法」という。)第67条の2第3項による貸与金の返還期限の猶予が検討されるべきであるところ、緊急事態宣言に伴う裁判所の業務停止や新型コロナウイルス感染拡大による新件受任件数の減少、緊急事態宣言解除後も裁判期日の停滞が継続していること等、新型コロナウイルスの影響によって一定期間収入の減少が継続することは、同条項が定める貸与金の返還期限の猶予事由である「災害、傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となったとき」にあたるというべきである。

4  しかし、貸与金の返還の猶予申請の提出期限は、原則として当年5月31日とされており、今年度はすでに経過している。提出期限経過後の申請も可能とはいえ、猶予の承認には相当の日数を要するとされ、返還期限後に猶予申請が承認された場合でも、返還不履行の責めを一時的に負い、返還期限の翌日から猶予申請が承認される日までの間について延滞利息(年14.5%)が発生する(最高裁判所HP)。
緊急事態宣言が全国で解除されたのは、2020年(令和2年)5月25日になってからであった。新型コロナウイルス感染症や緊急事態宣言による社会生活、経済活動への影響と混乱が、日を追う毎に現実化、拡大・深刻化していった状況に鑑みれば、提出期限である同年5月31日までに、同年7月25日時点における貸与金の返還の困難性や猶予申請の諾否の見込みについて判断し、猶予申請を行うことは、多くの返還義務者にとって困難であったというべきである。
したがって、当初予定されていた同年7月25日を貸与金の返還期限とするスケジュールを前提として、裁判所法第67条の2第3項による猶予申請に対応するのでは不十分であり、最高裁判所は、修習貸与金の返還義務者に対して裁判所法第67条の2第3項による猶予申請を行う時間と機会を改めて保障するため、令和2年度の貸与金の返還期限を少なくとも3か月延長し、来る10月25日としたうえで、返還義務者に告知すべきである(本申入れの趣旨第1項)。なお、その際、新たな猶予申請の期限は、来る8月31日に設定するべきである。

5  また、新型コロナウイルス感染症の社会経済活動への影響が未曽有の規模で生じ、今後も継続すると考えられていることに鑑みれば、新型コロナウイルス感染症の影響による収入減について、「災害,傷病その他やむを得ない理由により修習資金を返還することが困難となったとき」に該当するとの認定を広く行うべきである。具体的には、新型コロナウイルス感染症の影響による公租公課の特例猶予の基準と同様に、新型コロナウイルスの影響により、2020年(令和2年)2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少し、貸与金を一時に返還することが困難である場合等には、貸与金の返還猶予を認めることとするべきであり、また、最高裁判所はそのことを返還義務者に告知すべきである(本申入れの趣旨第2項)。

6  よって当会は、最高裁判所に対し、申入れの趣旨記載のとおり申入れをするものである。
なお、当会は、2018年(平成30年)5月17日に、「最高裁判所、法務省、国会に対し『谷間世代』の不公平・不平等を速やかに是正すること及び最高裁判所に対し貸与金の返還期限を一律猶予する措置を講ずることを求める会長声明」を発出し、最高裁判所、法務省、国会に対していわゆる「谷間世代」の不公平・不平等を是正すること等を求めているところであり、この機会に改めて参照されたい。

以 上


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