意見書

「特定商品等の預託等取引契約に関する法律の抜本的な改正を求める意見書」(2020年8月20日)


2020年(令和2年)8月19日


内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)  衛  藤  晟  一  殿
消費者庁長官    伊  藤  明  子  殿
特商法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会委員長    河  上  正  二  殿


京都弁護士会

会長  日 下 部  和  弘



特定商品等の預託等取引契約に関する法律の抜本的な改正を求める意見書



第1  意見の趣旨
1  特定商品等の預託等取引契約に関する法律の改正にあたり、いわゆる「販売預託取引」は、商品の保有・運用実態にかかわらず、罰則をもって禁止し、民事上無効であることを明記すべきである。

2  特定商品等の預託等取引契約に関する法律の改正にあたり、
(1)特定商品制及び「3ヶ月以上の預託期間」要件を廃止すべきである。
(2)法定記載事項の表示義務、誇大広告の禁止及び広告の保存義務等の広告規制並びに不実告知、故意の事実不告知、断定的判断の提供及び威迫困惑行為の禁止等の勧誘行為規制を創設するとともに、これらの規制違反の認定に関し、行政庁の合理的根拠資料の提出要求権及びみなし規定を導入すべきである。
(3)クーリング・オフの期間を20日間とし、不実告知、故意の事実不告知、断定的判断の提供による意思表示があった場合の取消権を創設すべきである。
(4)行政庁に業務禁止命令権、適格消費者団体に差止請求権を付与すべきである。

第2  意見の理由
1  はじめに
(1)特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会(以下「検討委員会」という。)開催に至る経緯
いわゆる「販売預託取引」(物品・権利(以下「物品等」という。)を販売すると同時に、当該物品等を預かり、自ら運用する、又は第三者に貸し出す等の事業)は、豊田商事事件に始まり、安愚楽牧場事件、ジャパンライフ事件、ケフィア事業振興会事件と、甚大な被害をもたらした。
豊田商事事件を受け、特定商品等の預託等取引契約に関する法律(以下「預託法」という。)が制定された。しかし、上記のとおり、現行預託法は、「販売預託取引」について、被害を防止することはできなかった。
これは、現行預託法が、①甚大な被害をもたらした「販売預託取引」を直接規制するものとなっていない、②特定商品制がとられているため、預託法の規制を容易に潜脱することができる、③現行の行政規制や民事規制は緩やかな規制にとどまり、実効的な規制となっていない、④被害の拡大防止・回復といった観点からの規定がないなど、被害実態に見合った規制となっていないところに原因があった。
そこで、当会は、「販売預託取引」が投資取引の性質を有することに着目し、2018年10月18日付で「いわゆる「預託商法」を金融商品取引法の適用対象として明確化する同法の改正を求める意見書」を発出し、「販売預託取引」について金融商品取引法による規制を求めた。
その後、預託法の改正や金融商品取引法による規制は行われないままとなっていたが、2019年8月30日付けで内閣府消費者委員会より「いわゆる「販売預託商法」に関する消費者問題についての建議」が発出され、消費者庁に2020年2月より検討委員会が設置され、議論が開始されるに至った。
(2)検討委員会での議論状況
この検討委員会では、「販売預託取引」について、各委員から、販売預託した商品等の保有・運用実態のない「現物まがい商法」については全面禁止、「販売預託取引」全般については登録制による参入規制、指定(特定)商品制の廃止、行政規制・民事規制の強化、行政による法執行の強化、行政機関・(特定)適格消費者団体による破産申立権の創設、実効的な被害回復制度の創設などの意見が述べられた。
これを受け、検討委員会事務局から、「販売預託取引については、本質的に詐欺的・欺まん的な性質を有し、取引行為それ自体が無価値であると捉えるのが相当であり、預託法において、明確に原則禁止とすべき。」「違反に対しては、十分な抑止力を持った法定刑を設けるとともに、その取引によって締結された契約については、民事上無効とすることが必要。」(特商法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会報告書骨子(案)。以下「報告書骨子(案)」という。)との報告がなされた。

2  意見の趣旨1について
(1)「販売預託取引」の禁止
当会は、金融商品取引法による規制を求めて来たものの、「販売預託取引」が詐欺的な「現物まがい商法」を生み出した経緯に鑑み、より端的に、預託法において、「販売預託取引」そのものを禁止することに賛成する。
ところで、報告書骨子(案)は、「販売預託取引」を「原則」禁止としていることから、「販売預託取引」に「例外」を認める趣旨であるようにも読める。しかし、例外を設ければ、「販売預託取引」を、罰則をもって禁圧しようとした趣旨が潜脱されるおそれがある。よって、「販売預託取引」に関し、預託法に例外を認めるべきでない。
(2)民事上無効であること
「販売預託取引」は、被害者は配当が続く限り被害に気付きにくいという特徴を有していることを踏まえると、民事上の効力を被害者の行為に係らしめることはできない。よって、「販売預託取引」に係る契約は、民事上無効とすることにも賛成する。
(3)罰則
「販売預託取引」を禁止とすることの実効性を高めるため、罰則を設けることに賛成する。
「販売預託取引」が、「本質的に詐欺的・欺まん的な性質を有」すること、大規模な被害をもたらしてきたことに鑑みれば、その違法性は詐欺罪(刑法246条)と同等といえる。よって、「販売預託取引」の禁止違反に対する法定刑については、10年以下の懲役が相当である。

3  意見の趣旨2について
(1)現行預託法の行政規制・民事規制の強化について
        報告書骨子(案)は、上記のとおり、「販売預託取引」について原則禁止・民事上無効としつつ、現行預託法について、「特定商品制を撤廃するとともに、勧誘規制の強化、広告規制の新設、広告で表示又は勧誘で告げた事項(財産上の利益の捻出のための運用に係る事項等)に係る合理的な根拠を示す資料の提出及び当該資料が提出されない場合の行政処分の適用に係る違反行為が行われたものとみなす規定の創設、民事ルールの充実、適格消費者団体による差止請求、業務禁止命令の導入等の抜本的な見直しを行うことが必要。」としている。
これについて、物品等の販売を伴わないなど、当該取引が「販売預託取引」に該当しないため直ちに違法とまでいえず、かつ、金融商品取引法等の他の法律において規制されていない預託商法を預託法で規制する趣旨であれば、規制の隙間を埋めることに繋がることから、当会としては現行預託法の改正について賛成する。
そこで、以下では、具体的な規制について意見を述べる。
(2)特定商品制の廃止、「3カ月以上の預託期間」要件の廃止
商品が多様化した現在では、特定商品制では預託法の規制を容易に免れうる。
特商法も、このような現状に鑑み、一部の契約類型においては指定商品・指定役務制を廃止している。同様に、預託法においても、規制の実効性を高めるため、特定商品制は廃止すべきである。
また、「3カ月以上の預託期間」要件があれば、契約の仕方次第で容易に預託法の規制を潜脱できてしまう。実際にケフィア事業振興会事件では、同要件を潜脱する契約内容が見られた。したがって、同要件も廃止すべきである。
(3)広告規制、勧誘行為規制、合理的根拠資料の提出要求権及びみなし規定
過去に被害が発生した近未来通信事件、ふるさと牧場事件、安愚楽牧場事件等では雑誌広告や新聞折込広告が用いられていたこと、今後はインターネットを利用した広告が用いられることが想定されることからすれば、広告規制が必須である。
そこで、特商法上の諸規制を参考にして、法定記載事項の表示義務及び虚偽誇大広告の禁止を規定すべきである。
また、インターネット広告上の表示は、容易に変更・削除できるため、表示に対する検証が困難な場合がある。そこで、インターネット広告については、一定期間の保存義務を課すべきである。
勧誘行為規制についても、特商法上の諸規制を参考にすべきであり、不実告知、故意の事実不告知、断定的判断の提供、威迫困惑行為の禁止が規定されるべきである。
なお、広告規制違反、勧誘行為規制違反の認定に際しては、立証が困難な場合が想定される。これについても、特商法において、合理的根拠資料の提出を要求できること、要求に応じない場合には違反をみなす規定が置かれている(特商法6条の2等)ことを参考にすべきであり、預託法においても、同様の規定を置くべきである。
(4)クーリング・オフ期間の伸長、取消権の規定
クーリング・オフの期間は、特商法における利益誘引型の連鎖販売取引を参考にして、20日とすべきである。なお、連鎖販売取引を含め、特商法におけるクーリング・オフの期間が現行のままで十分であるかは別途検討すべきである。
また、適用範囲の明確化のため、契約類型毎に取消権を設けるべきである。よって、特商法と同様に、不実告知や故意の事実不告知、断定的判断の提供があった場合には、取消権を設けるべきである。
(5)差止請求権、業務禁止命令権
特商法においては、行政規制違反に対して、適格消費者団体に差止請求権が認められている。預託法の行政規制の実効性を高めるためにも、同様の規定を導入すべきである。
よって、上記の広告規制違反行為や勧誘行為規制違反行為に対して、適格消費者団体に差止請求権を認めるべきである。
また、特商法においては、平成28年の改正により、業務停止命令を受けた法人等の役員が処分後に別の法人を立ち上げる等して、業務停止命令の潜脱を図ることを防止するため、業務停止を命ぜられた個人事業主、法人の役員及び政令で定める使用人等に対して、停止の範囲内の業務を、新たに法人を設立して継続すること等を禁止する業務禁止命令権が創設された。
預託法においても同様の潜脱行為がされるおそれがあるため、行政庁に業務禁止命令権を認めるべきである。

以  上


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