声明

「安全保障関連法成立5年にあたり、改めて同法の廃止と集団的自衛権の行使を容認する閣議決定の撤回を求める会長声明」(2020年9月19日)


  集団的自衛権の行使等を一部容認する安全保障関連法(以下「本法制」という。)が、2015年(平成27年)9月19日に成立して5年になる。
  集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することができるというものである。2014年(平成26年)7月1日、政府は、集団的自衛権を行使することは憲法上許されないとしてきた従来の政府解釈を閣議決定により変更し(以下「本閣議決定」という。)、集団的自衛権の行使が憲法上容認されるという解釈を表明した。そして、本閣議決定をもとに、本法制が制定された。
  しかしながら、これまで当会が幾度も指摘してきたところであるが、本閣議決定及び本法制は、憲法違反であるといわざるを得ない。
  すなわち、従来の政府解釈では、憲法9条が戦争の放棄(1項)、戦力の不保持と交戦権の否認(2項)を規定していることから、憲法9条の下で許容される自衛権の発動については、憲法13条で保障されている生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利の保護のため、①我が国に対する急迫不正の侵害が存在すること、②これを排除するため他に適当な手段がないこと、③自衛権行使の方法が必要最小限度の実力行使にとどまること、という3要件に該当する場合に限定されていた。本閣議決定は、他国への武力攻撃であっても、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合には、武力行使が可能であるとして、従来の政府解釈を拡張したが、他国への武力攻撃によって「国民の生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」が危殆化され、武力行使による防衛が必要となる場合は想定し難く、政府も十分な論証をしていない。したがって、本閣議決定は、集団的自衛権の行使を正当化できておらず、憲法解釈の範囲を逸脱し違憲であり、本閣議決定を基礎に制定された本法制も違憲である。
  また、本法制では、自衛隊が、現に戦闘行為が行われている現場でなければ地理的限定なく、他国の軍隊に弾薬の提供等を含む支援活動を行うことが可能とされており、従来禁止されてきた他国の武力行使と一体化する危険は避けられない上に、従来のPKO活動において禁止されてきた「駆け付け警護」及びそれに伴う任務遂行のための武器使用が認められており、その武器使用が自衛隊という国家組織による実力行使、すなわち武力の行使と評価されるおそれがある。
  加えて、本法制は、関連10法案を一本化した「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」及び「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」が一括審議・採決に付され、しかも、参議院特別委員会速記録に「議場騒然、聴取不能」と記録され、また、衆参両院において強行採決がなされている。このように、言論の府である国会において十分な議論が尽くされなかったことは、立憲主義・民主主義がないがしろにされたといわざるを得ない。
  本法制については、衆議院憲法審査会に招聘された参考人全員を含む圧倒的多数の憲法学者、歴代内閣法制局長官、元最高裁判所長官を含む最高裁判所判事経験者、日本弁護士連合会及び全国の弁護士会も悉く違憲であると断じた。また、各種の世論調査でも国民の過半数が本法制に反対していることが示され、市民による全国的な反対運動が大きく展開された。
  本法制の施行後も、本法制の廃止法案が国会に提出されたり、各地で違憲訴訟が提起されたりするなど、違憲性を指摘する動きが続けられている。
  当会も、本閣議決定に先立って発した「安全保障をめぐる憲法問題と立憲主義の危機に関する会長声明」をはじめとする6度の会長声明、2015年(平成27年)7月29日に開催した4500人規模の市民集会及びパレード、歴代会長・副会長をはじめとする会員による街頭宣伝等、本法制の違憲性を指摘し、廃案を求める活動を継続してきた。
  ところが、政府は、昨年4月から本法制に基づく新任務「国際連携平和安全活動」として、自衛隊員を国連の統括下にない多国籍監視軍監視団(MFO)の司令部に派遣し、エジプト東部のシナイ半島でイスラエル・エジプト両軍の停戦監視活動に従事させるなど、本法制の違憲性等の極めて重大な問題点の指摘を全く顧みない運用を行っており、本法制の成立後5年の間に、憲法違反の疑いのある事実が積み重ねられ、立憲主義が蹂躙されている。
  当会は、このようなかつてないほどの深刻な事態を憂慮し、立憲主義・民主主義国家である我が国の汚点ともいうべき本法制の廃止及び本閣議決定の撤回を改めて強く求めるものである。

2020年(令和2年)9月19日

京都弁護士会

会長  日 下 部  和  弘



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