京都弁護士会男女共同参画推進基本計画(2020年11月13日)


京都弁護士会男女共同参画推進基本計画


2020年11月13日  策定


  我が国においては、憲法で個人の尊厳(13条)と法の下の平等(14条)がうたわれており、これまでも男女平等に向けて様々な取組みがなされてきた。1999年、男女共同参画社会基本法が制定され、男女共同参画社会の実現が21世紀の社会を決定する最重要課題と位置づけられ、社会のあらゆる分野において、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進を図るものとされた。2003年には「2020年30%」目標、すなわち2020年に指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度となるよう期待するとの目標が内閣府の男女共同参画推進本部で決定された。2010年に閣議決定された第三次男女共同参画基本計画においては、司法を含めたあらゆる分野で「2020年30%」に向けた取組みを行うことが明記された。ついで2015年に閣議決定された第四次男女共同参画基本計画においては、弁護士における具体的取組みとして、意思決定過程への女性の参画推進のためのポジティブアクションの検討や、継続就業のための環境整備への配慮等が定められている。30%目標は2020年には達成できそうにないものの、今後策定される予定の第五次男女共同参画基本計画では2020年代の可能な限り早期に達成することを目指して取組みを進める旨が明記される見込みである。
日弁連においても、2007年に男女共同参画推進本部が設置され、2008年に第一次男女共同参画推進基本計画、2013年に第二次基本計画、2018年に第三次基本計画が策定された。
当会においては、会内の男女共同参画を推進することを目的として、2019年4月1日、京都弁護士会男女共同参画推進本部設置要綱(要綱第51号)に基づき男女共同参画推進本部が設置され、以下の1乃至5の課題への取組みを含む男女共同参画推進基本計画の策定に向けて、会員に対するアンケートや意見交換会等による意見・意識調査や当会の男女共同参画の現状調査等が行われた。当会は、これらの調査等の結果を踏まえ、以下のとおり、当会における男女共同参画の現状と課題を整理し、今後5年間の個別目標及び施策を定める京都弁護士会男女共同参画推進基本計画を策定する。今後、同計画に基づき具体的施策の取組みを進め、5年間を目処にその取組み状況と目標の到達状況を検証し、その後の目標等の再設定を行う予定である。

1  会務並びに当会の政策・方針決定過程への女性会員の参加の促進
(現状及び課題)
2020年1月現在の全国の弁護士会員に占める女性の割合は19.0%、京都弁護士会における女性の割合は20%前後である。
当会では、各委員会・プロジェクトチーム・本部等に相当数の女性会員が参加しているが、指導的地位に女性が占める割合の観点で見たとき、政策・方針決定過程への女性会員の参加は不十分である。すなわち、当会において、過去に会長に就任した女性会員は2名、副会長についても7名にすぎず、過去10年間でみても会長に就任した女性会員は10人中0名(0%)、副会長は40名中2名(5%)である。また、過去5年の常議員(定員30名)の女性割合は、2016年度は13.3%(4名)、2017年度は30%(9名)、2018年は6.7%(2名)、2019年度は20%(6名)、2020年度は10%(3名)であり、30%に達していた年度もある一方で、それに遠く及ばない年度も多く、差が大きい。委員会の正副委員長等への就任についても、委員長は5%程度、副委員長は15%程度に留まっている。
現状を改善するためには、明確な数値目標を定めた上で、意識的な取組みや会務の可視化等の環境整備が必要不可欠である。
(個別目標及び施策)
①  毎年1人以上の女性会員を理事者として選出する。
②  常議員に占める女性会員の割合を、当会会員に占める女性会員の割合と同程度以上とし、それを維持する。
③  委員会正副委員長の総数に占める女性会員の割合を、当会会員に占める女性割合と同程度以上とし、それを維持する。
④  女性会員が理事者や常議員に就任すること、ならびに委員会正副委員長に就任することに対して、積極的に推進するための環境整備に着手する。
⑤  理事者は、女性会員の意見を直接聞き取る会合等を積極的に開催し、会務運営に反映させる。

2  業務における女性弁護士に対する差別の是正と業務分野の拡大・開発
(現状及び課題)
当会では2002年に京都弁護士会セクシュアル・ハラスメントの防止に関する規則(規則第115号)が制定され、理事者等へのセクシュアル・ハラスメント防止研修が義務づけされたほか、セクシュアル・ハラスメントに対応する苦情窓口が設置されている。しかしながら、苦情窓口については十分な活用がなされているとはいえず、セクシュアル・ハラスメント以外の多様なハラスメントに対応するものとはなっていない。また、女性会員、修習生、事務員への性差別への対応や支援も不十分であり、性差別を背景とした女性会員への不当な業務妨害も発生している。
複数弁護士事務所においては、当会の女性割合を超える女性会員が所属している事務所が相当数みられる一方、早期の独立開業や組織内弁護士等、女性会員の働き方が多様化している。また、婚姻後も多数の女性会員が職務上氏名を選択している。しかしながら、女性会員への個別の支援や、女性会員同士の経験交流の場を設けるなどの支援は進んでいない。
相当数の女性会員が外部の団体に委員・講師として推薦・派遣されているが、他会で整備されつつある社外役員名簿はまだ未整備である。
また、北部については、現時点で女性会員は2名のみであって、舞鶴支部管内についてはゼロであり、当該女性会員には、広域にわたる会務等で負担がかかっている状況にあり、改善が必要である。
当会として、女性会員の現状に即した多様な制度を早急に整備していく必要がある。
(個別目標及び施策)
①  セクシュアル・ハラスメントに関する研修・苦情相談を見直すとともに、パワー・ハラスメント等にも対応できるよう検討する。
②  修習期間中や就職時における女性修習生への差別も含め、会内での女性差別の解消に取り組む。
③  業務妨害についての支援制度の周知を行い、必要に応じて個別に支援する。
④  個人事務所、複数弁護士事務所、組織内弁護士等、女性会員の様々な働き方に応じたキャリア形成に関する情報を収集・提供するとともに、社外役員名簿、メンター制度等、業務を拡大・支援する制度を検討する。
⑤  職務上氏名の使用において生じる業務上の支障を解消すべく、実態を調査し、関係各機関へ働きかける。
⑥  女性弁護士偏在の解消のための調査を開始する。

3  仕事と生活の調和(ワークライフ・バランス)のための支援
(現状及び課題)
2019年度に実施した会員を対象とした会務及びワークライフ・バランスに関するアンケートでは、男性51名中38名、女性39名中37名の会員が、家事・育児・介護等何らかの家庭内の責任を担っていると回答し、男性26名、女性22名が現状の仕事やプライベートライフに問題を感じていると回答している。また、会への要望として、全ての研修の動画ネットの配信や会議の終了時間を午後5時までとしてほしい等の声が寄せられた。
この間、当会においては、日弁連の育児期間中の会費免除規程の制度新設及び免除期間の伸長に対応して当会の会則等の整備がなされたほか、育児に関心のある会員が性別を問わずに参加できるメーリングリストの設置、保育や性教育などのトピックや育児を担う男性会員の交流に焦点をあてたオフ会の開催、妊娠・出産・育児に関するガイドブックの製作・改訂がなされている。しかしながら、法律事務所を対象にした取組みは十分でなく、また、介護など育児以外の家庭責任を担う会員、高齢、体調不良などの事情がある会員への対応も遅れている。
仕事と生活の調和は、性別を問わず多くの会員にとって重要な課題であり、会全体として問題を共有化し、現状の制度の見直しと、ITを活用した多様な会務への参加の仕組みを検討する必要がある。
(個別目標及び施策)
①  出産育児、介護に関する支援制度の情報を更新し、会員に提供する。
②  法律事務所向けにワークライフ・バランスの取組み事例を紹介し、ワークライフ・バランス促進に資する情報を提供する。
③  会員のニーズに応じたネットワークを整備し、活用する。
④  IT化、データでの資料提供、動画での研修等、会務への参加方法の見直しを検討する。

4  男女共同参画の視点に立った会則・会規の新設と見直し
(現状及び課題)
当会では、育児期間中の会費免除に関する会則等が新設され、2019年度に改定された。
また、セクシュアル・ハラスメントの研修時の講師からの指摘、女性弁護士の意見を聞く会で出された意見やLGBTに関する取組みを踏まえ、2018年度にセクシュアル・ハラスメント防止関連の要綱の見直しがなされた。
しかしながら、これらは個別的な見直しにとどまっており、今後、男女共同参画の視点に立った全体的な会則・会規の新設や見直しが必要である。
(個別目標及び施策)
①  男女共同参画の視点に立った見直しへの調査を開始する。

5  その他男女共同参画実現に資する課題への取組み
(現状及び課題)
当会では、男女共同参画推進本部設置に先立つ同本部設置準備プロジェクトチームの段階から、男女共同参画に関する研修や広報活動を重視した取組みがなされてきた。
また、現時点では、男女共同参画推進の視点に立ったデータの整備がなされていないことから、早急に整備する必要がある。
前述のとおり、司法を含めたあらゆる分野において「2020年30%」目標が掲げられたものの、2020年の時点で弁護士全体の女性割合は19%前後、当会における女性割合は20%前後にすぎない。早急に目標を達成できるよう、当会でも意識的に取り組む必要がある。
(個別目標及び施策)
①  男女共同参画に資する研修・啓発を企画し、また、性別を問わず幅広い会員から意見を聴取し、会員に広報する。
②  男女共同参画推進を検証するデータを整備する。
③  弁護士に占める女性割合を高めるため、女子生徒・女子学生、女性修習生への情報提供を行い、日弁連・近弁連の企画(「リーガル女子」等)に協力する。
④  基本計画の個別目標の達成状況を毎年検証し、総会において、結果を報告する。

以  上


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