意見書

京都府消費生活安全条例施行規則の改正についての意見書(2020年12月24日)


2020年(令和2年)12月24日

京都府知事    西  脇  隆  俊  殿


京都弁護士会

会長  日 下 部  和  弘

  
京都府消費生活安全条例施行規則の改正についての意見書



第1  意見の趣旨
  1  京都府消費生活安全条例施行規則の「不当な取引行為」の改正に関して、今回、「京都府消費生活安全条例施行規則の一部改正について(答申)」(以下「本答申」という。)への記載が見送られた部分については、解釈を明確化するため、事例集に具体例を記載し、逐条解説を作成すべきである。
  2  今回、本答申への記載が見送られた不招請勧誘禁止に関する規定については、継続的に審議をし、早期に次の規定の実現を求める。
    (1)訪問勧誘について、消費者が玄関やマンションの入り口等に「セールスお断り」又は「訪問販売お断り」のステッカー(いわゆる「訪問販売お断りステッカー」)を貼付することが、京都府消費生活安全条例上の勧誘を拒絶する旨の意思表示に該当することを、条例の文言上明らかにする。
    (2)電話勧誘について、電話勧誘を断る旨の自動応答装置による応答が、京都府消費生活安全条例上の勧誘を拒絶する旨の意思表示に該当することを、条例の文言上明らかにする。

第2  意見の理由
  1  はじめに
2020年(令和2年)11月18日、京都府消費生活審議会は、京都府消費生活安全条例(以下「本条例」という。)施行規則について、消費者契約法等関連法令の改正や2022年(令和4年)4月からの成年年齢引き下げを見据えて、規則で定めている「不当な取引行為」を一部改正すべきである旨答申した。
      近年、消費者契約法や特定商取引法などの消費者関連法令が次々に改正されているところ、これに合わせて、京都府が、全国に先駆けて本条例の改正を目指していることは、高く評価されるべきである。
しかし他方で、本答申は、法律が具体的に要件を定めている規定について、条例の抽象的規定によって解釈可能であると判断し、規則の改正を盛り込まなかった部分がある。
      また、本答申の内容は、2019年(令和元年)6月27日付の当会「京都府消費生活安全条例の改正等を求める意見書」の内容にも沿うものであるが、この意見書で求めていた不招請勧誘禁止規定を明文化することは盛り込まれなかった。
本意見書では、まず、①本答申の内容で不十分であると考える部分に意見を述べる。次に、②本答申では取り上げられなかった不招請勧誘禁止規定に関して意見を述べる。

  2  ①本答申の内容で不十分な部分
      本答申は、規則の見直しにあたっては「一般の方には難解な法律用語をできるだけ避け、消費者にとって分かりやすい言葉で規定するのが肝要」と述べている。従って、法が具体的要件を定めている規定については、条例でも要件の具体化を図るのが望ましい。少なくとも、既にある事例集に記載するとともに、逐条解説を作成し、京都府が想定している具体的被害例及び条例解釈を記載し、消費者及び事業者にとってわかりやすい条例を目指すべきである。
      以下、答申の記載順に従って個別に意見を述べる。
  (1)消費者契約法4条3項3号
      本答申では、同条項は成年年齢の引下げに対応するものと位置づけられている。しかし、ここにいう「社会生活上の経験」不足は、年齢のみによって定まるものではないのであるから(消費者庁消費者制度課『逐条解説消費者契約法』〔第4版〕)、事例集及び逐条解説(以下「事例集等」という。)にはそのことを記載すべきである。
  (2)消費者契約法4条3項6号
      同条項は霊感商法を取り上げて規定したものである。本答申は、本条例施行規則別表1-(16)で解釈可能としているが、別表の文言では霊感商法の独自性は埋もれてしまっている。規則を改正して消費者契約法4条3項6号のような規定を設けるべきである。少なくとも、事例集等には、別表1-(16)の具体例として、霊感商法を記載すべきである。
  (3)消費者契約法8条の3
      同条項は、事業者に対し、消費者が後見開始の審判等を受けたことのみを理由とする解除権を付与する条項を無効とする規定である。本答申は、これを、本条例施行規則別表2-(1)で解釈可能としているが、別表2-(1)は、不当な取引行為を禁止する一般規定に過ぎない。消費者契約法があえて明文化したものを、一般規定で解釈可能とするのは相当ではなく、規則を改正して、消費者契約法8条の3のような規定を設けるべきである。少なくとも、消費者契約法8条の3が規定する不当条項を、事例集等に明記すべきである。
  (4)消費者契約法10条
      平成28年改正により、同条項は、前段要件の例示として、「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項」が加えられた。
      本答申は、これを上記と同様、別表2-(1)で解釈可能とするが、消費者契約法があえて明文で例示を追加したのであるから、同趣旨の別表2-(1)にも例示を追加すべきである。少なくとも、事例集等では、消費者契約法10条前段に追加された具体例を記載すべきである。
  (5)勧誘に関する規定
      消費者契約法の「勧誘」に関して、近時、重要な最高裁判例が出ている。最三判平成29年1月24日民集第71巻1号1頁によれば、新聞広告のように不特定多数の消費者に働きかけるものであっても、勧誘に当たりうるとされている。
本条例上、不当勧誘規制は重要な部分を占めており、「勧誘」をどのように解釈するかは、条例の適用対象に大きな影響を持っている。従って、上記最高裁判例の「勧誘」に関する判示は、事例集等に記載すべきである。

  3  ②不招請勧誘禁止規定に関する意見
当会は、「京都府消費生活安全条例の改正等を求める意見書」において、本意見の趣旨2と同趣旨の意見を述べていた。
しかし、今般の条例改正議論では、継続審議となり、今回の答申に改正の方向性が盛り込まれることはなかった。
上記意見書の後も、全国で不招請勧誘禁止の議論はなされている。
例えば、2020年(令和2年)10月、熊本県玉名市、玉東町、和水町及び南関町が、訪問販売お断りステッカーを貼った住居への訪問販売を禁止する条例が、それぞれ施行された。また、同年11月には、北海道で、訪問販売お断りステッカーを無視して勧誘及び契約締結を行っていた事業者に対して、行政処分がなされている。
    日本の現状に目を向けると、新型コロナウイルス禍がいつ終息するか分からない状況が続いている。外出自粛や在宅ワークの積極的導入により、自宅で過ごす人の割合は増えているところ、消費者が望んでいない訪問販売・電話勧誘販売による消費者被害を防ぐ必要性は、以前よりも格段に高まっていると言える。
    当会は、これまで不招請勧誘に関し、「不招請勧誘規制への取組に関する意見書」(2011年(平成23年)1月27日付け)、「特定架電適正化法(仮称)の制定を求める意見書」(2014年(平成26年)8月28日付け)、「特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める意見書」(2015年(平成27年)7月23日付け)によって、不招請勧誘禁止規定の導入を繰り返し提言してきたが、未だ実現には至っていない。
    以上から、本条例改正実現を再度強く求める。
以 上



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