意見書

「2050年カーボンニュートラルの実現に向けての意見書」(2021年3月25日)


2021年(令和3年)3月25日

内閣総理大臣    菅      義  偉  殿
経済産業大臣    梶  山  弘  志  殿
環境大臣 兼 気候変動担当    小  泉  進次郎  殿
国土交通大臣    赤  羽  一  嘉  殿
農林水産大臣    野  上  浩太郎  殿
衆議院議長      大  島  理  森  殿
参議院議長      山  東  昭  子  殿
経済産業省 資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会  御中


京都弁護士会

会長  日 下 部  和  弘
  


2050年カーボンニュートラルの実現に向けての意見書



  地球温暖化は既に世界各地に気候大災害をもたらし、その出現頻度も増している。気候危機を回避するため、国際社会は今、IPCC1.5℃特別報告(2018年)など科学の警告を受け止め、パリ協定のもと、地球の平均気温の上昇を産業革命前から1.5℃に止めるとの目標を共有し、2050年にはCO2排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)に、2030年には2010年比で45%以上、排出を削減するとの目標に向かって経済的にも競争を始めている。また、気候変動枠組み条約締約国は国連から、2021年11月に英国グラスゴーで開催予定の同第3回締約国会議(COP26)の前に、国別削減目標(NDC )における2030年の削減目標(日本の現行目標は温室効果ガス2013年比26%削減)を引き上げるよう求められている。
  こうした状況下で、我が国においても、2020年10月に菅首相は2050年カーボンニュートラルを宣言し、同年11月には衆参両院で気候非常事態宣言が決議されたところである。そして、環境省中央環境審議会及び経済産業省資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会などで2050年カーボンニュートラル及び2030年目標の引き上げに向けた審議が行われており、同調査会基本政策分科会(以下「基本政策分科会」という。)においてはエネルギー基本計画の改定に向けた審議と意見募集中である。
  当会では、2018年6月14日に、第5次エネルギー基本計画案に対する意見を提出したが、現行第5次エネルギー基本計画には反映されなかった。我が国では温室効果ガスの約85%がエネルギー起源CO2であることから、エネルギー基本計画は我が国の気候変動政策の根幹をなすとともに、経済のあり方にも重大な影響を及ぼすものである。まさに地球規模の気候の危機のなか、2050年カーボンニュートラルの確実な実現に向けた地球温暖化の防止と今後の経済のあり方にかかる環境・エネルギー政策の改定である今回の改定にあたって、以下のとおり意見を述べる。

意見の趣旨


1  2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国は、以下の措置をとるべきである。
  (1) 2050年の温室効果ガスの排出を実質ゼロに、その過程の2030年までに1990年比で45%以上削減することとし、これらの目標及び2050年ゼロに至る削減の経路を5年毎に見直すことを、地球温暖化対策推進法に明記すること
  (2) 原子力発電は速やかに廃止すべきこと
  (3) エネルギー効率を高めてエネルギー需要を最大限、減少させ、2030年までに電力供給量に占める再生可能エネルギーの割合を45%以上とし、これを地球温暖化対策推進法に明記すること
  (4) 再生可能エネルギーの導入を加速的に進めるために、①送電網の拡充、②送電網の利用にかかる情報の開示、③送電系統への再生可能エネルギーの優先接続、④発送電を経営的にも分離し、中立的機関による系統運用等の電力システム改革を推進すること
  (5) 石炭火力発電所の新設を中止し、既設石炭火力発電所を2030年までに段階的に廃止するとともに、今後は、天然ガス火力発電所の新設も中止すること
  (6) 実効性のあるカーボンプライシングを導入し、脱炭素型経済社会への移行に伴って労働者や地域社会が取り残されないよう、公正な移行を支援すること

2  2050年カーボンニュートラルの実現に向けた地球温暖化対策とエネルギーに関する計画を統合的に策定し、その計画がすべてのセクターの参加のもとに実施されていくために、計画の策定プロセスにおいて、十分な情報を国民に開示し、国及び地方自治体等で国民的な議論を喚起し、多様な国民の意見が反映される審議体において審議されるなど、国民の意見が反映されるべきである。

意見の理由


第1  日本版「グリーン成長戦略」の問題
  地球温暖化による危険な気候変動は、今や、現実に、私たちの社会に大きな影響をもたらし始めている。数十年に一度とされてきた大規模な自然災害が毎年のように発生し、その規模も頻度も増し、気候災害は既に現在世代の人権侵害となっている。
  我が国はエネルギー源を原子力と化石燃料に依存してきたが、福島原発事故を経験し、原子力からの脱却は広く国民の求めるところである。また、気候変動対策は地球温暖化の防止だけでなく、国の経済や国民生活に直結するエネルギー政策の問題でもある。既に世界で120か国が2050年カーボンニュートラルを宣言しており、EUや米国バイデン政権などは新型コロナウイルスからのグリーンリカバリー政策 を打ち出し、再生可能エネルギーの飛躍的拡大、電気自動車への転換や建築物の省エネ・断熱改修など気候変動対策を柱とする政策に動き出している。こうしたなか、我が国も、2020年10月26日に菅首相が2050年カーボンニュートラルを宣言し、既に300を超える自治体(人口1億人を超える)が同じく2050年カーボンニュートラルに取り組むことを表明し、企業の気候変動への取組、影響に関する情報を開示する国際的枠組みであるTCFD に賛同する企業数が世界で1位であるなど、産業界や地方自治体にも拡大している。
  今後、人口減少や省エネの推進による電力需要の減少が見込まれる一方で、自動車等での電化の加速や高炉製鉄業においても水素による還元が計画されるなど電化が進む見通しである。しかしながら、経済産業省が2020年12月25日に成長戦略会議に提出した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(以下「成長戦略」という。)では、電力供給分野における2050年の再生可能エネルギーの割合は50~60%に留まり、水素とアンモニアが10%、残り30~40%を原子力と炭素回収利用・貯留(CCUS)による火力によることを参考値とするものである。このように、原子力と火力になお多くを依存し、かつ、水素及びアンモニアの生成は将来の技術的イノベーションにかかるとするもので、コストの経済的見通しもない。即ち、これまでのエネルギー政策から抜本的転換を図るものとはいえず、むしろ従来の延長線上にあるものである。
  2018年に提出した当会の意見書で指摘したとおり、原子力と化石燃料から確実に脱却し、再生可能エネルギーに転換していくことを将来社会像として明確に描き、再生可能エネルギー拡大に必要な政策導入を打ち出し、再生可能エネルギーへの投資を誘導すべきである。

第2  2050年カーボンニュートラル宣言の実現に向けてとるべき措置
1  2050年カーボンニュートラル実現に向けた排出削減の道筋を地球温暖化対策推進法に明記すること
  英国は2008年に気候変動法を定め、同法において、2050年の温室効果ガスの削減目標を1990年比80%削減、2018年~22年には1990年比26%削減とし、科学者による独立した気候変動委員会を設置し、同委員会の助言等を得て5年間毎の削減目標を3期先まで定め、これを引き上げていくこととしている。現在の英国の2050年の目標は1990年比少なくとも100%、2030年には1990年比68%削減である。
  2015年に採択されたパリ協定においても、世界の平均気温の上昇を、産業革命前から2℃を十分下回り、1.5℃に抑制することにも努力することを目的とし、各国が長期目標を定めるとともに、既に中期の削減目標を定めて提出している。また、2020年から5年毎にこれを引き上げるために、2023年から5年毎に世界の排出削減の実施状況を評価するグローバルストックテイク(世界全体の実施状況の確認)を行うこととなっている。欧州各国を中心に、このような排出削減目標とその引き上げを盛り込んだ国内法的制度が導入されているところである。
  一方で、我が国の現状は、長期目標として、温室効果ガスにつき、2050年80%削減、2030年までに2013年比26%削減を目標とする地球温暖化対策計画を策定し、国連気候変動枠組条約事務局に届け出ているが、1.5℃目標の実現のため、これらの目標の引き上げが求められている。今回の改定では、2050年にカーボンニュートラル、その実現過程として、2030年までに温室効果ガスを1990年比45%以上の削減に引き上げるべきである。
  また、2050年を長期目標とする気候変動対策では、政権交代の影響を受けずに目標達成を実現していくことが不可欠であるため、2050年の長期目標及び2030年の目標並びに目標引き上げの仕組みを法定化しておくことが必要であり、地球温暖化対策の推進に関する法律(以下「地球温暖化対策推進法」という。)にこれらの目標を明記し、科学の進展等を踏まえ削減目標を引き上げていく仕組みも盛り込むべきである。
  なお、本年3月2日にカーボンニュートラル宣言を受けて、地球温暖化対策推進法の改正法案が閣議決定されたが、同改正法案は2050年脱炭素社会の実現を旨とするとの基本理念を掲げるにとどまるもので、脱炭素実現への道筋が定められたとはいえない。

2  原子力発電を速やかに廃止すること
  原子力発電については、当会の2018年の意見書で指摘した問題は何ら解決していない。福島原発事故を受けて必要な安全対策が増加し、原子力発電は安価で安定的な電源ではないことは一層明らかとなった。使用済み核燃料の再処理技術はますます破綻し、既存の使用済み核燃料の最終処分の解決の目途は全く立ってない。何よりも、福島原発事故を経験し、地震や火山活動の影響が避けられない我が国では、原子力とは共存できないというほかない。稼働年を60年に延長するなどもってのほかである。原子力は、その稼働時にCO2を排出しないが、温暖化対策の選択肢とはなりえない。
  ところが、経済産業省の成長戦略においては、今なお原子力の推進が掲げられ、安全性、機動性、経済性に優れた炉を追及し、小型モジュール炉や核融合炉の開発も目指すとされている。
  我が国では、これまでこのように原子力と火力に依存し続けてきたため、再生可能エネルギーへの転換が妨げられ、国際的な再生可能エネルギーの拡大とコスト低下の潮流に乗れず、大きく後れをとってきたものである。2050年カーボンニュートラルの実現は不可避であるが、2019年10月の一般財団法人日本原子力文化財団の世論調査によっても、原子力発電を増加または東日本大震災以前の状況を維持していくべきだとの意見は11%に過ぎず、原子力発電の廃止を望む意見は60%を超えている。原子力は温暖化対策とはなりえないものであり、原子力発電は速やかに廃止すべきである。

3  エネルギーの高効率化を進め、2030年再エネ目標を45%以上として、これを地球温暖化対策推進法に明記すること
  (1) エネルギーの高効率化を一層推進すべきこと
  脱炭素への道筋として、ここで明確に、原子力と化石燃料依存から脱却することを決意し、エネルギー効率を一層高め、十分にエネルギー消費の低減を進めたうえで、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換をできるだけ早期に実現していくことが不可欠である。これらは、経済における国際競争力の維持・向上にも不可欠である。
また、エネルギー高効率化による省エネと再エネの地域づくりは、再生可能エネルギーの賦存量が豊かな中山間地域などで、雇用創出を促進し、地域資源を活用した地域循環型経済の道を開くものとなる。同時に、エネルギー需要の多い都市部でのカーボンニュートラルを踏まえたまちづくりを進める契機となる。
  (2) 再生可能エネルギーの導入目標を引き上げるべきこと
  第5次エネルギー基本計画では、再エネ主力電源化を打ち出したが、大規模水力を含む再生可能エネルギー電気の2030年の供給目標は22~24%に過ぎない。現状での供給割合は約20%である。ドイツの65%、イタリアの55%などと比較するまでもなく、我が国の2030年の再エネ導入目標は低きに過ぎ、同時にコスト低減も大きく遅れをとっている。
  我が国は、太陽光や風力をはじめ、地熱、中小水力、潮力、森林等のバイオマスなど、再生可能エネルギーの潜在的な導入ポテンシャルは電力需要の2倍を超える利用可能量があり、新設既設建物の屋根や休耕地の利用、洋上風力の推進などをさらに進めることで必要なエネルギー量の供給に十分である 。2021年1月18日、気候変動イニシアティブ(JCI)に参加する日本企業92社が2030年の再エネ目標を40~50%に引き上げることを提言するなど、経済界からも引き上げの声があがっている。こうした諸外国や我が国の実情に鑑みれば、今般の温暖化対策及びエネルギー基本計画の改定では、2030年までに少なくとも45%以上に引き上げ、これを地球温暖化対策推進法に明記することが求められる。

4  再エネの主力電源化を可能にする電力システム改革を推進すること
  再生可能エネルギーの導入を加速的に進めるためには、再生可能エネルギー供給事業者や販売事業者の新規参入や投資の拡大を促すとともに、目標を実現するための制度改革が必要である。
  具体的には、国において、①再生可能エネルギー電気の導入を可能にする送電網を拡充すること、②既存系統の利用状況に関する情報を公開すること、③送電系統への接続をこれまでの先着優先ルールから限界費用がかからない太陽光や風力発電を優先的に接続するメリットオーダールールに改めること、④発電設備を保有する旧一般電気事業者の発電電力の全量を電力市場に拠出し、電力市場の公正な運用を図る措置をとり、実質的な発送電分離を推進することなど、電力システム改革の一層の推進が必要である。
  また、長期的に再生可能エネルギー100%を実現するためには、電力、ガス、熱というエネルギー形態や利用場面の違いを超え、再生可能エネルギーを柔軟に活用していくことも不可欠である。

5  石炭火力発電の新設を中止し、2030年までに石炭火力発電を段階的に廃止すること
  石炭火力発電は、高効率であっても天然ガス発電の約2倍のCO2を排出する。欧米諸国では、2030年までの石炭火力全廃に向けた動きが加速している 。また、再生可能エネルギーのコストが急速に低下するなか、新設石炭火力は他の電源よりも低廉な電源ではなくなっており、世界では石炭関連産業への投融資を引き上げるダイベストメントの動きも加速している。国連グテ―レス事務総長は、2021年2月のCOP26準備会合でも、先進国に2030年までの石炭火力のフェーズアウトを求めたところである。
  しかるに、日本は原子力と石炭火力発電をベースロード電源と位置づけ、気候変動対策をめぐる国際社会の取組に逆行して、石炭火力発電を推進してきた。現在も大規模石炭火力発電所の新設が進められており、その設備容量は4500万kWに及ぶ。環境省によれば、ベースロード電源として稼働率70%で稼働すると、仮に既存の老朽石炭火力発電が45年で順次廃止されたとしても、2030年度の国のCO2削減目標や長期エネルギー需給見通し(2015年)におけるエネルギーミックス に整合するとされる石炭火力発電からのCO2排出量(約2.2億t-CO2)を5000万t-CO2程度超過する可能性があるとされている 。パリ協定の下で1.5℃目標の実現のために、UNEPやグテーレス国連事務総長は度々、先進国は2030年までに石炭火力発電所を廃止するよう求めているところであり、石炭火力発電所は、非効率のものだけでなく、新設を行わず、既設は全て2030年までに段階的に廃止していくべきである。
  なお、再生可能エネルギー100%の社会を目指すなかで、過渡的には再生可能エネルギー利用における調整電源として天然ガス発電が必要となる。しかし、2050年カーボンニュートラルに向けて天然ガス火力も2050年までに廃止すべきであり、既に日本には8000万kWの天然ガス火力発電所が存在し、現状での稼働率は50%以下であることから、今後の新設を中止すべきである。
  近時、火力の脱炭素化として、水素やアンモニアの混焼、専焼など技術のイノベーションの必要性が強調されている。しかしながら、長期戦略においても、水素の製造は「依然、開発・実証段階の技術」とされており、豪州等からの褐炭火力発電所由来の電気による水素を輸入するといったものであり、コスト的にも合理性がない。2050年までに火力発電所にはCCS(炭素回収貯留)装置の設置が必須となるが、日本には適地が極めて少なく、少なくとも現在設置されている発電所の近隣には殆ど適地がない。回収したCO2のリサイクル(CCU)も、コスト的にも技術的にも非現実的である。火力発電設備を維持・活用するのではなく、早期に再生可能エネルギーに転換する政策を推し進めるべきである。

6  実効性のあるカーボンプライシングを導入し、雇用や地域の公正な移行を支援すること
  (1) 炭素化を速やかに進めるためには、カーボンプライシング の導入が不可欠であり、かつ実効的であること
  欧州、米国の一部の州、中国・韓国では、炭素税や排出量取引制度などCO2の排出に価格付け政策が導入され、CO2排出量の削減を誘導してきた。
  日本では、従来の石油石炭税に上乗せする形でCO2排出量に応じた「地球温暖化対策税」が2012年に導入されたが、諸外国に比べて税率が極めて低いうえ、石炭が最も安く、CO2排出量1トン当たり289円に過ぎない。石炭火力から再生可能エネルギーへの転換を促進するためには、現行の制度では不十分であり、抜本的な改正が必要である。
  また、長期的に再生可能エネルギー100%を実現するためには、電力、ガス、熱というエネルギー形態や利用場面の違いを超え、再生可能エネルギーを柔軟に活用していくことも不可欠である。こうした活用を促す技術やビジネスを発展させていくためにも、炭素の排出者に対して排出に伴う環境コストを負担させる炭素税や排出量取引の導入が必要である。
  (2) 産業構造の転換に伴う雇用と地域社会の公正な移行(ジャストトランジション)への支援
  2050年カーボンニュートラルの実現には、火力発電に依存する電力部門だけでなく、鉄鋼などエネルギー多消費産業を含む産業部門、運輸部門などで、産業構造の転換を伴うが、そこに新たな投資が促され、新規産業や雇用の創出機会があり、世界的に脱炭素に向けた経済競争が始まっている。
  こうした脱炭素型の経済社会への移行において、労働者や地域社会を置き去りにするのではなく、他方で新規産業を創出し、新たな仕事への雇用の移行や地域経済の移行への支援をすること(ジャストトランジション)が必要となる。脱炭素型の産業の育成による新たな雇用機会の創出、そのための技術支援や職業訓練の機会の提供、移行に伴う補償や支援等、国が担う役割は大きい。

第3  国民主体のエネルギー政策決定プロセスの実現
  エネルギー政策は気候変動政策の基礎、経済の基礎をなすものであり、国民の多様な意見が反映される審議体で審議される必要がある。しかしながら、エネルギー基本計画の改定とエネルギー需給にかかる資源総合エネルギー調査会における審議は、エネルギー供給側の関係者が多く関与し、従来型の大規模電源を中心としたエネルギーの安定供給と経済性に重点がおかれた構成となっているといわざるを得ない。
  また、エネルギー政策は国の経済や国民生活に重大な影響を及ぼすものであるから国民各層が議論に参加して決定されることが不可欠であるが、そのためには、国民に十分に科学を含む幅広い情報が開示・共有され、討議の機会が設けられることが必要である。自治体、事業者、NGO等の各主体がそれぞれ自らの強みを発揮する形でコミュニケーションの機会を確保し、それぞれが責任ある主体として政策立案から実施に至るプロセスに関与していくことができる仕組みづくりの重要性はかねてから指摘されているが、いまだ実現できていない。2050年カーボンニュートラルの人類史的課題への挑戦を機会として、多様な主体が今後のエネルギー需給のあり方や地域の持続可能な経済社会のあり方、自然環境の保全等を議論し、学び合い、理解を深めて政策を前進させていく取組を実践するなかで、2030年までに取り組むべきことも共有されていくことになる。さらに、科学及び技術が進展し、また進行する気候の危機を踏まえ、常に再検討を加え、柔軟に見直していくことが重要である。

第4  おわりに―2050年カーボンニュートラルの世界として目指す社会像を明確にすること―
  我が国は再生可能エネルギーの賦存量が豊かで、海外の化石燃料依存から脱却し、再生可能エネルギーを活用することにより、エネルギー自給を高めることが可能であるだけでなく、資金の海外流出を防ぎ、地域経済の活性化に貢献することにもつながる。しかし、同時に、その拡大にあたっては、新たな自然環境や地域の生活の破壊をもたらすことのないよう配慮が不可欠である。
  そのために、当会は、2018年の意見書において「私たちはどのような社会を目指すのか」という基本的な視点を共有していくことの重要性を指摘してきたが、ここで改めてその重要性を指摘したい。世界の脱炭素経済の趨勢を踏まえ、地域の自然や社会の特性を生かし、産業構造の転換と新たな雇用の拡大を図りつつ、将来世代や気候変動に脆弱な人々や地域にとって持続可能で公正な社会を実現する視点から議論がなされなければならない。また、こうした議論は、科学の知見を基礎とし、21世紀を生きる若者世代が参加し、エネルギー需給の視点からだけでなく、資源や良好な自然環境を保ちながら持続可能で公正な社会のあり方を見据えて行われる必要がある。
以  上


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