意見書

成年年齢引下げに伴う消費者被害防止のための措置を求める意見書(2021年8月26日)


2021年(令和3年)8月26日


衆議院議長      大島  理森  殿
参議院議長      山東  昭子  殿
内閣総理大臣    菅    義偉  殿
法務大臣        上川  陽子  殿
内閣府特命担当大臣(金融)  麻生  太郎  殿
総務大臣        武田  良太  殿
文部科学大臣    萩生田光一  殿
厚生労働大臣    田村  憲久  殿
経済産業大臣    梶山  弘志  殿
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)  井上  信治  殿
消費者庁長官    伊藤  明子  殿

京都弁護士会                


会長  大  脇  美  保
  



成年年齢引下げに伴う消費者被害防止のための措置を求める意見書




1  意見の趣旨
(1)国に対し、成年年齢を引き下げる「民法の一部を改正する法律」制定の際の参議院附帯決議の内容とされた各課題に対する措置の速やかな実現を求める。
(2)仮に(1)が実現されないときには、成年年齢を引き下げる法律の施行日を延期することを求める。

2  意見の理由
(1)民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号。以下「本法律」という。)の施行日である2022年(令和4年)4月1日が、あと7か月と迫っている。
若者は、その社会経験、知識、判断力の乏しさから消費者被害に遭いやすいが、未成年者取消権(民法5条2項)により保護されてきた。
成年年齢引下げにより、18歳、19歳の若者が未成年者取消権を失い、悪徳商法のターゲットとなることで、消費者被害が拡大することが強く懸念される。
(2)法制審議会においても、「民法の成年年齢引下げについての意見」(平成21年10月21日。以下「法制審議会意見」という。)にて、結論を「民法の成年年齢を18歳に引き下げることが適当」としながら、①若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれの解決に資する施策が実現されること、②施策の効果が十分に発揮されること、③施策の効果が国民の意識として現れたこと、が引下げの前提条件とされていた。
法制審議会意見を受けて本法律案が2018年(平成30年)の通常国会に提出され審議がなされたが、上記の条件がほとんど達成されていないことが明らかになる中、同年6月、本法律は成立した。
(3)このような成立の経緯から、参議院法務委員会は、全会一致で、①知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設することなど、若年者の消費者被害を防止し、救済を図るための必要な法整備を行うことにつき早急に検討を行い、法成立後2年以内に必要な措置を講ずること、②若年者のマルチ商法等の被害の実態に即した対策について検討を行い、必要な措置を講ずること、③自立した消費者を育成するための教育の在り方を質量共に充実させること、④成年年齢引下げについての周知の徹底、⑤施行日までに、これらの措置が実施されているか、その措置が効果を上げているか、その効果が国民に浸透しているかについて、効果測定や調査を実施した上で検討し、その状況について随時公表すること等について、格別の配慮をすることを内容とする附帯決議(平成30年6月12日)を行った。
この附帯決議は、法制審議会意見が掲げた前提条件の未達成のまま本法律が成立したという状況を踏まえ、法施行までに必ず実現すべき課題として明記したものであり、これらの課題を実現するための期間を設けるため、本法律の施行日は、成立後3年10か月という長期の準備期間後の2022年(令和4年)4月1日とされた。
(4)ところが、本法律成立から3年以上が経過した現時点でも、附帯決議が求める施策の実施は不十分であると言わざるを得ない。
特に、つけ込み型不当勧誘取消権の創設に関しては、2017年(平成29年)9月から2018年(平成30年)6月まで開催された「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」において若者の消費者被害に遭う心理的要因を分析した結果、情報商材被害やマルチ商法被害を筆頭とした、高揚感あるいは期待感をあおられて契約に至る被害類型や、本来の意思決定から注意がそれたり思考の範囲が狭まったり、思考力が低下した心理状態(浅慮)で契約に至る被害類型が多く見受けられることから、2019年(平成31年)2月から同年9月まで開催された「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」などでは、これら被害を救済する規定の必要性が強く指摘されてきたところである。これら検討会、研究会の報告を受け、また、2018年(平成30年)消費者契約法改正時の附帯決議でもつけ込み型不当勧誘取消権の創設が求められていることから、2019年(令和元年)12月から「消費者契約に関する検討会」が開催されてはいるものの、今現在においても、具体的規定の創設についてはその目途すら立っていない。
(5)また、消費者教育についても、消費者被害の予防につながる実践的な消費者教育が全国的に十分に行われているとは言えない。さらに、成年年齢引下げに伴う18歳、19歳の若者の未成年者取消権の喪失による消費者被害拡大のおそれについて周知がなされているともいえない。
(6)附帯決議により本法律施行までに必ず実現すべきとされた課題に対する必要な措置の実現に、直ちに着手しなければ、本法律の審議段階から懸念されてきた消費者被害拡大のおそれが現実のものとなることが予想される。
(7)よって、当会は、国に対し、附帯決議の内容とされた各課題に対する措置の速やかな実現を求めるとともに、仮に実現されないときには、成年年齢を引き下げる法律の施行日を延期することを求める。

以 上


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