意見書

「安心・安全な消費生活の実現を目指す行動計画 体系案」に対する意見書(2021年10月21日)


2021年(令和3年)10月21日

京都府消費生活審議会
会長  坂  東  俊  矢  殿

京都弁護士会          

会長  大  脇  美  保  



「安心・安全な消費生活の実現を目指す行動計画  体系案」に対する意見書



第1  はじめに
現在、京都府消費生活審議会において、「京都府安心・安全な消費生活の実現を目指す行動計画」(以下「行動計画」という。)の改定についての審議がなされており、今般、行動計画の体系案(以下「行動計画体系案」という。)が作成・公表された。
行動計画体系案では、(1) 消費者被害の未然防止、(2) 迅速な問題解決と拡大防止、(3) 消費者教育の推進の3項目につき、それぞれの項目達成のための個別施策が掲げられている。
当会は、今後の行動計画の策定に向けて、行動計画体系案について、下のとおり意見を述べる。

第2  意見の趣旨
1  行動計画体系案「(1) 消費者被害の未然防止」について
(1)同「ア  成年年齢引下げによる若年者の被害等の未然防止」について
高校生への支援については、引き続き最重要課題であるとして、継続されたい。
(2)同「イ  特殊詐欺や悪質商法等の高齢者の消費者被害への対応」について
ア  「市町村消費者安全確保地域協議会設置に向けた支援」及び「京都府消費者安全確保地域協議会(京都くらしの安心・安全ネットワーク)の活動支援」にとどまらず、京都くらしの安心・安全ネットワーク以外のすでに設置済みの消費者安全確保地域協議会の同協議会の活動支援も明記すべきである。
イ  訪問販売お断りステッカーの作成配布を計画体系として掲げ、そのステッカーの文言は、「悪質な」や「迷惑な」などの限定をつけないものとすべきである。
ウ  「京都府警察等と連携した通話録音装置の貸出【新規】」の実施につき、賛成する。同事業については、特殊詐欺防止のみならず、悪質商法(電話勧誘販売)被害防止のための施策であることをも明確にすべきである。
(3)同「ウ  デジタル化社会への対応」について
ア  「詐欺的定期購入等ネット適正表示対策【新規】」の実施につき、賛成する。ただし、違法、不当な表示は、詐欺的定期購入にとどまらないことから、広く、ネット上の不適正表示について、継続的にパトロールをする旨を明記すべきである。
イ  特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)における契約書面等の電磁的方法による提供に対応した啓発を、計画体系として掲げるべきである。

2  行動計画体系案「(2) 迅速な問題解決と拡大防止」について
(1)同「イ  市町村の相談体制支援等」について
「府内(市町村)消費生活相談体制の検討【新規】」、「消費生活相談員の認知度向上、魅力発信事業【新規】」、「消費者ボランティアを対象とした相談員資格取得応援事業【新規】」について、いずれも重要であるが、さらに、京都府下の市町村における相談体制に格差があることに鑑み、消費生活相談体制に課題のある市町村に対しては、相談員を派遣するなどしてでも、質の高い相談・救済を受けられる体制を構築することを明記すべきである。
(2)同「ウ  取引の適正化の推進」について
ア  悪質商法を行う事業者情報の早期把握による徹底指導を明記すべきである。
イ  SNSを利用した詐欺的な勧誘や悪質な副業商法について、行政指導等を実施することを明記すべきである。また、デジタルプラットフォームのウェブサイト上に不当表示が存在する場合は、販売業者のみならず、デジタルプラットフォーム事業者も含め、積極的に行政指導等を実施することを明記すべきである。

3  行動計画体系案「(3) 消費者教育の推進」について
(1)同「イ  消費者教育の担い手の養成・支援等」について
消費者団体、事業者団体等との連携・協同については、社会との幅広い接点を意識して、可能な限り多様な関係者を取り込み、社会全体で最前線の実践知の共有を実現していくことを明記すべきである。

第3  意見の理由
1  行動計画体系案「(1) 消費者被害の未然防止」について
(1)同「ア  成年年齢引下げによる若年者の被害等の未然防止」について
高校生への支援が広がりを見せていることは、歓迎すべきことであり、教育の対象が中学校、専門学校等へと広がっていくことも好ましい。もっとも、インターネットを通じてコミュニケーションの幅が広がっている若年層について、成年年齢引下げによる保護の脆弱化を手当することは喫緊の課題である。したがって、消費者保護を志向する消費者教育については、成年直前である高校生を主眼として引き続き取り組むべきである。
(2)同「イ  特殊詐欺や悪質商法等の高齢者の消費者被害への対応」について
ア  消費者安全確保地域協議会への支援について
高齢化の進展や高齢者のみの世帯の増加が見込まれる中、実効的な見守り活動を展開するには、消費者安全確保地域協議会の設置を広く市町村に推進していく必要があり、支援していくことに賛成である。ただし、京都府消費生活審議会施策推進部会において資料として提出されたアンケート調査結果(2021年(令和3年)4月30日から同年5月20日にかけて京都府内26の市町村及び1組合に対して行われた消費者施策等に関するアンケート調査結果)を見ても、具体的に時期を定め設置に向けた準備に着手したいと述べた市町村は3つ、時期未定であるが設置に向けた準備に着手したいと述べた市町村は9つである。他方、設置の予定、検討をしていないと述べた市町村は15に上り、設置に向けた準備に着手したいと述べた市町村数を上回っている状況にある。
このような点に鑑み、設置したいと考えている市町村を単に支援するにとどまらず、設置の予定、検討をしていない市町村に対する設置の必要性等の説明も重視した積極的な支援を行うべきである。
ところで、今般、社会福祉法の改正により、厚生労働省は、各市町村において「重層的支援体制整備事業」に取り組むことを推奨している(社援発0329第22号令和3年3月29日厚生労働省社会・援護局長通知)。同事業は、これまで縦割りの対応になりがちであった市町村での各種相談について、他機関とも共同して、包括的な相談・支援体制(断らない相談支援体制)を作ろうというものであり、地域共生社会の実現に向けた取り組みの一環である。同事業では「支援会議」という支援機関等の関係者により構成される会議を組織することができるとされている(同法第106条の6)。同会議を、消費者安全確保地域協議会と位置付けて運用することが実務上可能であると考えられ、実際、京都府下でも来年度の設置に向けた準備を進めている自治体も存在していると聞いている。
したがって、今後の市町村消費者安全確保地域協議会の設置支援・活動支援等については、重層的支援体制整備事業における支援会議との関係に着目しながら推進していくべきである。
イ  訪問販売お断りステッカーの作成配布について
京都府は、訪問販売お断りステッカーを2005年(平成17年)に作成し、毎年10月に「京都くらしの安心・安全ネットワーク」の加入団体を通じて配布しているが、今回の計画体系にはステッカーの作成や配布についてはなんら記載がない。
この訪問販売お断りステッカーは、作成から相応の時間が経過しており、一度配布を受けた府民もそれを紛失したり、また貼付後に印刷が劣化したりしていることが考えられる。
また、2021年(令和3年)6月に「京都府消費生活安全条例第15条  京都府消費生活安全条例施行規則第2条及び別表『不当な取引行為』解説」(以下「解説」という。)が公表されたこともあり、今般の行動計画策定に際しては、「解説」が「消費者からの勧誘を拒絶する旨の意思」として認める要件を確実に充足する新たな内容のステッカーを作成し、配布すべきである。「解説」には、事業者が「『私(事業者)が行おうとしている勧誘は拒否されている』と通常認識できる程度でなければならない」とされており、現行ステッカーの「悪質な訪問販売お断り」といった記載では、「悪質な」という評価が含まれるため、事業者が勧誘拒否を認識できたか否かについて、争いが生じる危険性がある。京都府消費生活審議会(2021年度(令和3年度)第2回施策推進部会)でも委員から「悪質事業者に『自分たちは悪質ではない』といった言い訳を許すのではないか」との指摘がなされたところであり、「悪質な」や「迷惑な」などの限定をつけることは、迅速かつ適正な行政権の執行を阻害する要素となるため、これを避けるべきである。
そして、新規に作成するステッカーには、「このステッカーを無視して勧誘を行った場合、京都府消費生活安全条例違反になる」ことを明記することで、ステッカー貼付による悪質商法被害防止の効果をより高めるべきである。
ウ  通話録音装置の貸出について
昨今の高齢者、特に判断能力が低下した高齢者に対する特殊詐欺被害、電話勧誘による悪質商法被害の多さから、京都府警察等と連携した通話録音装置の貸出が行動計画体系案に掲げられたことを高く評価する。
ただし、京都府消費生活審議会(2021年度(令和3年度)第2回施策推進部会)での議論状況からすると、貸出対象となる通話録音装置は、特殊詐欺被害防止のために通話内容を録音するという自動応答メッセージを流すもののようである。しかし、通話録音装置の貸出については、例えば「電話勧誘による契約締結の勧誘はお断りします」といった自動応答メッセージも併せて流すことができるものとするなど、電話勧誘による悪質商法被害防止のための施策としても位置づけるべきである。
(3)同「ウ  デジタル化社会への対応」について
ア  ネットパトロールについて
詐欺的定期購入による被害が社会問題化している昨今、これをネットパトロールして、行政指導等に役立てることについて、賛成である。ただし、違法、不当な表示は、詐欺的定期購入にとどまらないことから、広く、ネット上の不適正表示について、継続的にパトロールをすべきである。
イ  特商法2021年(令和3年)改正対応について
特商法の2021年(令和3年)改正で、消費者の承諾があれば、契約書面等の電磁的方法による提供が可能となった。
当該改正により、事業者の甘言につられ、消費者が安易に承諾してしまい、契約書面等の電磁的方法による提供を受けた結果、契約書面等の電子データをうまく受け取れない、受け取った電子データの内容が読み取れないといった新たな消費者被害の発生や、親族等の第三者が不当な契約の存在に気づけず消費者被害の救済ができなくなるといった事態の発生が懸念される。
これらを防止するためには、改正特商法の施行の前に、改正特商法の内容を周知し、契約書面等の電磁的方法による提供に安易に承諾しないことや高齢者の家族等に向けて契約書面等が電磁的方法により提供される場合があることについて啓発を行うことが必要かつ重要である。

2  行動計画体系案「(2) 迅速な問題解決と拡大防止」について
(1)同「イ  市町村の相談体制支援等」について
市町村の消費生活相談体制について、2021年(令和3年)4月30日から同年5月20日にかけて京都府内26の市町村及び1組合に対して行われた消費者施策等に関するアンケート調査結果を見ても、相談体制が十分といえないと回答した市町村が10、相談員の確保について課題があると回答した市町村が16に及んでいる。理由として、相談員を募集しても応募が少ない又はない、相談員報酬の確保等の財政面での不安がある、後継者の育成ができる環境がないなどの様々な理由が挙げられている。
京都府下では、実際に、市町村独自の相談体制の構築を諦めてしまった市町村も現れていると聞く。
今回の計画には各種施策が掲げられており、いずれも重要なものと考えるものの、消費生活相談員資格の取得の難易度は高いにも関わらず、それに見合う待遇がなかなか得られないなどの問題も相まって、今後も相談員の確保は重要な課題として残り続けるものと思われる。
府内どこでも質の高い相談や救済が受けられる体制ができていないと、消費者問題を抱える市民への対応について地域差が生じる可能性が高い。
そこで、京都府はそのような事態が生じないように、強力にリーダーシップを発揮して、消費生活相談体制に課題のある市町村に対しては、相談員を派遣するなどしてでも、質の高い相談・救済を受けられる体制を構築すべきである。
(2)同「ウ  取引の適正化の推進」について
ア  悪質商法を行う事業者情報の早期把握による徹底指導について
2021年(令和3年)6月に「解説」が公表されているところ、京都府消費生活安全条例を実効化し、被害予防・救済を進めるためには、今後、事業者の違反行為に対する執行の強化、特に、悪質な事業者による被害が生じた場合の事業者情報の早期把握による徹底指導などの対応が重要となる。
悪質な事業者に対する処分等が本質的な業務であり、継続的に行う予定とのことであるが、未だ十分とはいえないので、京都府消費生活安全条例施行規則が改定された機会を逃さず、より一層の取り組みを行動計画に明記する必要がある。
イ  SNSを利用した詐欺的な勧誘や悪質な副業商法等について
コロナ禍で、SNSを利用した詐欺的な勧誘や悪質な副業商法が増加傾向にある。特商法に違反する事業者をはじめ、不当な取引行為(京都府消費生活安全条例第15条)をする事業者に関しては、積極的に行政指導等(京都府消費生活安全条例第18条)を実施することを明記すべきである。
また、デジタルプラットフォームのウェブサイト上に、不当な表示がなされることにより、著しい不利益をもたらす不当な内容の契約を締結させられる消費者被害が多く発生している。こうした現状を踏まえ、不当な表示を行う商品等の販売業者及びデジタルプラットフォーム事業者に対して、行政指導等を実施することを明記すべきである。

3  行動計画体系案「(3) 消費者教育の推進」について
(1)同「イ  消費者教育の担い手の養成・支援等」について
消費者教育は、机上の学問ではなく、社会における実践的な能力を育むための学びである。消費活動は社会と幅広い接点を有しているのであるから、消費者教育においても社会との幅広い接点を意識して、可能な限り多様な関係者を取り込むことにより、最前線の実践知の共有を社会全体で実現していくことが望ましい。
以 上



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