岡口基一裁判官に対する弾劾裁判所への訴追についての会長声明(2021年11月25日)


1.2021年(令和3年)6月16日、裁判官訴追委員会は、仙台高等裁判所の岡口基一裁判官について、裁判官弾劾法2条2号に該当する事実があったものとして、罷免の可否を審理する裁判官弾劾裁判所に訴追した。

2.裁判官弾劾裁判は、司法権の独立(憲法76条1項)、裁判官の職権の独立(憲法76条3項)の原則に対する例外として、国会に設置される裁判官弾劾裁判所が、司法権を担う裁判官を罷免することを認める裁判である(憲法64条)。それゆえ、裁判官弾劾法2条2号における罷免事由は「職務の内外を問わず、裁判官としての威信を『著しく』失うべき非行があつたとき。」と極めて厳格に定められている。また、罷免を可とする裁判が行われると、裁判官はその身分を剥奪され、退職手当を不支給とされうるに止まらず、検察官や弁護士としても欠格とされ、事実上法曹としての身分を喪失するという重大な効果が生じる(裁判官弾劾法37条、国家公務員退職手当法12条1項1号、弁護士法7条2号、検察庁法20条2号)。その点からも、罷免事由は厳格に解釈されなければならない。そこで、犯罪ないしそれと同視しうる行為であり、それ自体が裁判官の行為として明白な非違行為であって、裁判官の職責への信頼を失墜させる行為があった場合に罷免事由があると解釈するべきである。

3.従前の弾劾裁判においても、裁判官弾劾法2条2号に該当する事実があったものとして審理の対象とされた行為は、盗撮、ストーカー行為、児童買春、職権濫用、収賄等、いずれも、犯罪ないしそれと同視しうる行為であり、それ自体が裁判官の行為として明白な非違行為であり、裁判官の職責への信頼を失墜させるものである。それゆえ、それらの行為を理由に罷免されたことは、司法権の独立、裁判官の職権の独立の見地からもやむを得ないということができる。

4.今般訴追対象とされる岡口基一裁判官のSNSでの発信行為や発言は、犯罪行為でもなければそれと同視しうる行為でもない。よって、訴追対象行為が罷免事由に該当せず、弾劾裁判において審理の対象とされるべき行為でないことは明白である。

5.以上から当会は、裁判官弾劾裁判所に対し、訴追対象行為が罷免事由に該当しないことを明確に示すよう求めるとともに、裁判官訴追委員会によるこの訴追自体が、司法権の独立、裁判官の職権の独立の見地から疑問であることを表明する。

  2021年(令和3年)11月25日

京都弁護士会              

会長  大  脇  美  保


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