「死刑執行に対する会長声明」(2022年3月29日)


1  政府は、2021年12月21日、東京拘置所において2名、大阪拘置所において1名の計3名に対し、死刑を執行した。法務省は個別の再審請求の有無については明らかにしていないが、報道等によれば、執行された3名の内には再審請求中の者が含まれていたとされている。
2  国際人権(自由権)規約委員会は、2014年7月24日に発表した同規約の実施状況に関する第6回日本政府報告書に対する総括所見(パラグラフ13)において、「死刑の廃止を十分に考慮すること」、「死刑執行の事前告知」、「再審あるいは恩赦の請求に執行停止効果を持たせること」等を勧告している。
また、国連総会では、2007年以降2020年まで8回にわたり、死刑廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議がなされており、2018年12月17日には同旨の決議として最多となる121か国の賛成により可決されている。
3  国内においても、2016年10月7日に日本弁護士連合会が「2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきである」旨を人権擁護大会において宣言したほか、2018年12月5日に超党派の国会議員が「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」を立ち上げ、2019年8月31日には死刑廃止を訴える市民団体や法曹関係者等が「死刑をなくそう市民会議」を結成するなどの動きが見られる。
4  当会も、2015年3月26日に「死刑執行に関する情報公開と議論の活発化を求める会長声明」を発し、2017年12月20日、2018年10月18日及び2019年3月27日には「死刑執行に関して適正手続の保障及び情報公開の実現とこれらが実現するまで死刑執行の停止を求める」旨の会長声明を発したところである。
5  そうした国内外の動きがある中で、政府は、死刑に関する情報をほとんど公開せず、死刑の廃止はもとより、執行手続についても何らの検討や改善を行うことなく、漫然と執行を続けており、極めて遺憾である。
また、政府が2017年から毎回再審請求中の者を含めて死刑執行を続けてきたことは、再審請求中であることをもって死刑執行回避の理由とはしないとの姿勢を世界に示す結果となっている。再審請求中の死刑執行は、国際人権(自由権)規約委員会の勧告に反することはもちろん、えん罪の救済という観点からも重大な問題がある。
6  よって当会は、政府に対し、再審請求に死刑の執行停止の効果を持たせることによって死刑事件に関する適正手続の保障を十全なものとすること、及び、死刑に関する情報を公開して死刑制度廃止も含めた議論を活発化させることを改めて求めるとともに、そうした取り組みもないままになされた上記3件の死刑執行に対して抗議する。

2022年(令和4年)3月29日
                                                                  

京  都  弁  護  士  会

会長  大  脇  美  保
  

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