京都市都市計画マスタープランの策定及び区の権限強化についての意見書(2022年8月25日)


2022年(令和4年)8月25日

京都市長   門  川  大  作  殿


京都弁護士会           

会長  鈴  木  治  一
  



京都市都市計画マスタープランの策定及び区の権限強化についての意見書



意見の趣旨


1  都市計画マスタープラン策定のあり方について
  京都市は、都市計画マスタープランの策定・見直しに当たっては、各行政区毎のマスタープランの集積の上になすべきであり、さらに、各行政区のマスタープランは、一定のまとまりのある各地域毎のまちづくりプラン(京都市のいう「地域まちづくり構想」)の集積のもとに、策定されるべきである。

2  マスタープランの策定手続を【ボトムアップ型】に転換すべきことについて
  マスタープラン(都市計画マスタープラン、行政区毎のマスタープラン及び地域毎のまちづくりプランを含む)の策定・見直しにあたっては、住民・市民が主体的に関与する【ボトムアップ型】によりなされるべきである。
  すなわち、素案の策定・見直しの前段階においては、①住民・市民に対するアンケート調査の実施、②ワークショップの開催、③地域毎の懇談会の開催、④子どもへの意見聴取、⑤まちづくりに取り組む団体をはじめ地域活動を担う各団体へのヒアリング等を開催するべきである。
  そして、素案の策定にあたっては、⑥これを広く住民・市民に提示するに際し、複数の素案を示した上で意見の公募(パブリックコメント)を行うことが必要である。その後、⑦⑥をふまえた複数回の公聴会の開催、⑧市役所や区役所での素案の縦覧、職員との質疑応答、意見表明(メールを含む)の保障等、住民・市民参加をきめ細かく積み重ねていくというプロセスを経るべきである。

3  区のまちづくり権限の強化を図る必要について
  上記の取り組みを担保するために、京都市が2016年3月に策定した「共汗で進める  新たな区政創生~京都市における区政の在り方について~」の中で、「特に区役所・支所の独自性が発揮できる業務について、組織、職員定数及び予算要求に架かる区長権限を強化する方向で検討します。」と述べられているとおり、区の権限強化を図るべきである。

意見の理由


1  問題の所在
  京都市は、人口約146万人であって、これは滋賀県や沖縄県の人口とほぼ同じである。また、面積も約828k㎡と広大で、これは東京都の全ての市を併せた面積よりも大きい。そこに、11の区を擁している。
  京都市は、2012年に策定した「京都市都市計画マスタープラン」について、2021年9月に見直しを行った。
  しかし、その中には、市の方面別のごく短い方針の説明はあっても、各区の計画は記されていない。
  地域がそれぞれの特性を活かした魅力を持つことは、地域に人が住み続ける大きな要素であり、これはSDGs11番目の目標の一つである。そして、地域の特性は、地域により近い行政単位が地域の行政を担うことによって、より強く発揮される。
  これまで、京都市においては、マスタープラン(都市計画マスタープランだけでなく、行政区毎のマスタープランや地域毎のまちづくりプランを含む。以下同様。)の策定・改訂にあたっては、プランが固まった段階でのパブリックコメントがなされることはあっても、その前段階における住民・市民の意見を十分に踏まえる仕組みはほとんどない。そして、このことが、まちづくりを巡る行政や事業者と住民・市民の紛争を生み出してきた大きな原因の一つとなっている。
  ところで、これまで当会は、京都府下地域内での景観、建築、環境保全等に関する個々の事例につき、それぞれ意見書等の発出を行ってきた(資料1(京都弁護士会まちづくり関連の意見書・会長声明等一覧)及び資料2(京都弁護士会公害対策・環境保全委員会有志による意見書一覧))。
  事例からいくつかの典型的な例を挙げると、地域毎のまちづくりプランが策定されることもなかった新景観政策(2007年9月施行)以前では、京都ホテル(当時の高さ規制45m)の総合設計制度を適用した60m高層化問題や、京都駅ビル(高さ規制31m)の特定街区制度を適用した60m高層化問題がその典型事例と言えよう。
  また、新景観政策以後で、「地域まちづくり構想」(地域毎のまちづくりプラン)が策定された例では、「岡崎地域活性化ビジョン」を策定して、「一人地区計画」を適用して高さ規制を15mから31mに緩和した京都会館建替え問題(2012年5月「京都会館第一ホールの改修及び岡崎地域の景観保全に関する意見書」、同年9月「京都会館第一ホールの解体工事の着手中止を求める会長声明」)はその典型事例といえよう。
  こうした個々の事例における共通の課題として、その地域圏内で日常生活を営む住民・市民の意見が必ずしも十分に反映されていないことが挙げられる。特に行政が主体として行う「まちづくり」の手続・過程において、そうした住民・市民の意見を集約する仕組みそのものが不十分であることが顕著であり、当会はこういった問題点につき各意見書において指摘してきたところである。
  そして、今後、京都市による策定・改訂が予定されるマスタープランは、上記の各事例における個々のまちづくり・都市計画の枢要な役割を果たす源流であり、住民・市民の意見を適切に反映したまちづくりの実現にあたって抜本的な見直しが不可欠である。
  そこで、上記の問題の所在をふまえ、国内外の制度を参考に、マスタープランの策定のあり方(意見の趣旨1)、マスタープラン策定手続のあり方(意見の趣旨2)、及び区のまちづくり権限の強化(意見の趣旨3)について意見を述べる。

2  京都市都市計画マスタープラン、区基本計画、及び地域まちづくり構想の概要
  京都市都市計画マスタープランは、全部で6章立てで、実質的な計画部分は第4章「全体構想」、5章「方面別指針」、6章「地域のまちづくりの推進」の3つである。
計画の構造としては、マスタープランはまさに背骨であり、詳細は「京都市基本計画」「区基本計画」に委ねられるべきというのは一定理解できる。
  しかし、それにしても、この「全体構想」は「よいまちにしよう」という以上の具体的なメッセージは感じられず、1000年の都京都の将来像が明確になっているとは言えない。
  「方面別指針」も、基本的には駅周辺の活性化の域を出ず、各地域の特性の伸長に配慮がなされているとは思えない。そもそも、土地の地域を「方面」すなわち「京都市の一区域」と捉え、「全体的施策の施行対象」と捉えること自体に問題があるようにも思われる。
  また、「地域のまちづくりの推進」の中で、地域まちづくり構想(地域毎のまちづくりプラン)が位置づけられてはいるが、実際に地域まちづくり構想が策定されている地域はごく一部(17地域)に過ぎない(この策定手続の問題点については3で後述する)。
  「区基本計画」(行政区毎のマスタープラン)はどうかというと、区には都市計画についての権限も予算もないために、町の活性化のためのイベントなどの小さな取り組みについて紹介されているに止まる。
  結局、都市計画マスタープランも行政区毎のマスタープラン(区基本計画)も、地域の要求に根ざして地域毎の都市計画の骨格を具体的に策定されているものとは言いがたいのが実情である。

3  京都市の取り組みの実情と改善の方向性
  京都市は、2019年、「京都市都市計画マスタープラン」の改訂(9月30日)にあたり、見直し素案を取りまとめ、6月21日から1か月間、市民意見の募集を行った。
  「社会的情勢の変化や時代の潮流などを踏まえ、厳しい財政状況も見据えながら新たな課題やニーズへの対応を図るため、『京都市都市計画マスタープラン』の見直しに向けた検討を行ってきました」と、意見募集の趣旨に記載されているが、その検討過程において、住民意見の聴き取りが行われたことの説明はなく、そうした取り組みがなされたかどうかも不明である。
  位置づけられている地域まちづくり構想(17地域)についても、地域景観づくり協議会(市街地景観整備条例第8章)が策定したビジョンをもとに策定されている姉小路界隈地区や明倫元学区などは例外的であり、大半の地域では、京都駅東部エリア活性化将来構想にみられるように、トップダウン型で京都市が策定したものをHP等で示して、市民意見募集や住民説明会を行い、これをもって住民参加の過程を経たものとして市主導で計画を推し進める方法がとられている。
  地域住民が意見を述べる機会は、京都市が案を策定した後にしか設定されておらず、その段階で意見を述べたとしても、すでに策定された案に住民意見が十分に反映されることは望めないというのが現状である。
  京都市が、都市計画において「京都の特性」あるいは「歴史・文化を活かしたまちづくり」を都市計画の内容として標榜するのであれば、それを体現している市民・住民の意見こそ重視すべきであり、こうした市民・住民の意見を丁寧に集約した上で、その内容を十分踏まえた具体的な都市計画の提示が求められるのは言うまでもない。
  後述する国分寺市の取組みのように、素案の策定前段階で、行政が地域に入って十分な意見聴取を行い、地域の課題を把握することが京都市においても求められる。
  その際には、これも後述する宇治市の取組みに見られるように、大学等の研究機関に協力を得るなどして、精度の高い調査・聴取を実施することが望ましい。
  また、ドイツの都市計画策定手続きから学ぶべき点を、京都市のマスタープラン策定手続においても、取り入れるべきである。

4  先進自治体の取り組みから学ぶべき点
  わが国においても、他の自治体において、まちづくり条例の中で、マスタープラン策定において、地域の実情を反映させる工夫がされており、これらに学ぶべき点について、以下述べる。
(1)国分寺市の取り組み
  国分寺市では、2016年2月、国分寺市都市計画マスタープランが策定された。これは、2000年の「国分寺市都市計画マスタープラン」の策定から10年以上が経過し、国分寺市が、2013年から3か年をかけて、市民の意見を詳細に聴き取りながら見直しを進め、策定したものである。
  国分寺市が市民の意向の把握のために行ったこととして、次のようなものがある。素案作成前段階における、①市民アンケート調査、②地域懇談会、③子どもへの意見聴取、④団体ヒアリング、また、マスタープラン素案公表後の⑤意見募集と地域説明会等、そして、⑥マスタープラン案の公表後のパブコメ、市民説明会の開催である。
  市民アンケートは、18歳以上の市民3000人(住民基本台帳から無作為抽出)に対して行われ、うち回収数は1140件である(回収率38%)。
  地域懇談会は全2回開催され、1回目(延べ出席者数59名)に各地域の現状や課題等について、2回目(延べ出席者数44名)に1回目の意見等を参考にまとめた地域のまちづくりの方針案や具体的な手法について、出席者との意見交換が実施された。
  国分寺市内の各地域のまちづくり方針の策定にあたっては、地域懇談会で出された意見に基づいて、地域の課題が抽出され、その課題への取組みが方針として示されており、地域住民の意見が反映されている。
  子どもへの意見聴取としては、小学校高学年を対象に、「まちづくり」をテーマにした特別授業を開催し、まちを形成するルール(都市計画の仕組み)を学び、将来のまちについて考えるためのグループワークが実施された。これは、まちづくりを担っていく将来世代の子どもたちが、自分たちが暮らすまちを認識し、自分たちが創りたいまちを考えることで、まちへの関心を高めるとともに、マスタープラン策定にあたって参考とするものであり、画期的な取り組みである。
  各種団体へのヒアリングは、具体的には、大規模敷地所有者(4団体)、一般規模の店舗工場等(1団体)、不動産関係(1団体)、商工農業関係(2団体)、まちづくりに取組む市民団体等(4団体)にヒアリングが実施された。
  その他、市報、市HP、公共施設のポスター掲示によりヒアリング希望団体を募集し、その結果、4団体から応募があり、ヒアリングが実施された。
  このように、マスタープラン策定の過程において、単なる説明会や公聴会を実施するだけでなく、地域や年代、団体といった住民の属性に応じた意見を聴取するための様々な取組みが行われている。
(2)宇治市の取り組み
  こうした取り組みは、京都市に隣接する宇治市でも積極的に実施されている。
  宇治市は、急速な人口減少・高齢化が予測される近鉄小倉駅周辺地区において基本構想を策定するに際し、20代から70代までの市民アンケート調査を実施して住民のニーズを詳細に把握したほか、若年層のまちづくりに関する意識の調査のため、京都府立大学と共同で2018年度から毎年同地区近辺の中学生を対象としたアンケート調査を実施している(近鉄小倉駅周辺地区まちづくり検討委員会第5回検討委員会資料)。
  このアンケートは、対象となる地区を限定し、年代や居住区域などの住民の属性を考慮した詳細なものであるため、市民のニーズを具体的に把握することができている。

5  ドイツの都市計画策定手続に学ぶべき点
  日本の都市計画は、ドイツの都市計画を参考に制度設計されているところが多いことをふまえ(但し、後述する策定手続面だけでなく、内容面においてもドイツの都市計画プランの方が遙かに詳細である。)、都市計画マスタープランの策定にあたり、住民・市民参加の観点において、ドイツの都市計画の策定手続に学ぶべきである。その内容は以下のとおりである。
  すなわち、ドイツにおける都市計画は、Fプラン(土地利用計画。建設法典5条~)とBプラン(地区詳細計画。建設法典8条~)の2段階構造になっている。
  このうちFプランは、概ね京都市全体の都市計画マスタープランや、行政区毎のマスタープランに相当し、より詳細な地域毎のマスタープランや地区計画はBプランに相当するものと言え る。そこで、手続面の比較のための参考資料として、Bプランの事例であるが、ミュンヘン市のBプラン策定手続の公表資料とその日本語訳を添付する(資料3)。
  ドイツでは、都市計画プランの策定にあたっては、行政が策定したプラン案の縦覧の決定、及び最終的なプランの決定の2回にわたり、自治体議会の議決が必要とされており(資料3の10、14参照)、公衆(当該地域の住民に限らない)は縦覧されたプラン案に意見を出せることは当然として、その前のプラン案の段階から公衆参加ができるようにすることが義務づけられている(資料3の6~9参照)。そして、この手続きに瑕疵があれば、訴訟においても無効もしくは取消事由となる。
  すなわち、第1に、案が固まる前の早期の段階から情報を公開して住民・市民の意見を聴取しこれを反映させること、第2に、出された意見に対しては応答義務があることとし、更に深める方向での質疑応答ができるようにすること、第3に、素案段階では複数の代替案も合わせて提示したうえで、意見を聴取すること、第4に、策定手続に瑕疵があれば訴訟等においても無効もしくは取消事由となることにより、手続の民主制が担保されていること、が挙げられる。

6  都市計画マスタープランの策定のあり方(意見の趣旨1)について
  全市的な都市計画マスタープランは、もともと抽象的、概括的なものであり、殊に京都市のような大都市においては、これが顕著に現れる。
  その理由は、都市計画マスタープランを策定するに当たって、全市的な視点で、全市的にあてはまるように考えようとするところにあるのではなかろうか。
  区毎に特性や課題は異なり、それは各区の一定の広がりのある地域の実情の結果であると言えよう。
  そうすると、全市的な視点から発想するのでなく、まず、7で述べる【ボトムアップ型】の策定手続により、地域毎の特性や課題を取りまとめて地域毎のまちづくりプラン(京都市のいう「地域まちづくり構想」)を策定し、これを各行政区毎のマスタープランに反映させ、これを全市的に取りまとめて京都市全体の都市計画マスタープランとしていく必要がある。

7  マスタープランの策定手続を【ボトムアップ型】に転換すべきことについて(意見の趣旨2)
  上記の他の自治体がマスタープラン策定において実施している地域の実情を反映させる工夫や取り組み、及びドイツの都市計画策定手続の参考にすべき点を踏まえると、京都市都市計画マスタープランの策定、行政区毎のマスタープランの策定及び地域毎のまちづくりプランの策定にあたっては、以下の枠組みによることが望ましい。
  すなわち、素案の策定の前段階として、①京都市に生活の拠点を置く住民・市民に対するアンケート調査の実施、②ワークショップの開催、③地域毎の懇談会の開催、④まちづくりを義務教育過程に取り込むなどした子どもへの意見聴取、⑤まちづくりに取り組む団体をはじめ地域活動を担う各団体へのヒアリング等を開催するべきである。都市計画マスタープランの位置づけが、都市計画の総合的な指針・方針である以上、住民・市民の意見を幅広く丁寧に汲み上げる仕組みを構築することが何より重要である。
  こうした手続を経た上で、実際の素案策定にあっては、⑥これを広く住民・市民に提示するに際し、複数の素案を示すことが望ましい。住民・市民の意見は多種多様であり、だからこそこれを反映したまちづくりの在り方も多種多様なのであって、複数の可能性・将来図を示した上で意見の公募(パブリックコメント)を行うことが肝要である。その後、⑦⑥をふまえた複数回の公聴会の開催や⑧市役所や地域の区役所での素案の縦覧、職員との質疑応答、意見表明(メールを含む)の保障等、住民・市民参加をきめ細かく積み重ねていくというプロセスを経るべきである。
  こうした枠組みにより、住民・市民がマスタープランの策定の早期の段階で意見を述べ、これをふまえて素案を適切にブラッシュアップする機会を十分に保障することが可能となり、いわゆる【ボトムアップ型】でのまちづくりプランを策定するプロセスを踏んでいくことが重要である。
  この点については、京都市が公開している令和3年度都市計画マスタープランにおいても、都市計画マスタープランを「共汗(パートナーシップ)のまちづくりの共通の指針」と位置づけ、「都市計画の目標と方針を具体的に示し、市民・事業者をはじめとする多様な主体と行政が都市の将来像を共有することにより、まちづくりに対する気運を高めるとともに、共汗(パートナーシップ)のまちづくりを進めるための共通の指針」とすることを標榜しており、その理念を実現するプロセスの制定・充実化が望ましい。

8  区役所の機能強化・権限強化の必要性(意見の趣旨3)
(1)京都市は、伏見区の約28万人、右京区の20万人など、衛星都市である宇治市約18万人に引けを取らず、長岡京市8万人、城陽市約7万7千人との比較においても人口が格段に多いのが特徴である。
  このように、京都市の「区」には「市」に匹敵する人口を擁し、地域課題もそれぞれ特徴があるものがあるにもかかわらず、「市」との比較において「区」の権限は極めて限定的であり、地域に応じた課題の解決やビジョンの策定において、それらが足かせとなっていることは想像に難くない。
(2)京都市と同じく政令指定都市である堺市は、人口約84万人であり、7つの区があるが、そのうち5つの区で平均人口が約14万人である。
  堺市は、2006年に政令指定都市に移行した当初から、区役所を、区民意識や区域の課題を的確に把握し、区民とともに特色をいかした魅力ある取組を進める「市民自治の拠点」、日常生活に密着した総合的行政サービスを円滑・迅速に処理し、完結的に提供する「地域の総合行政サービス拠点」と位置づけ、身近な地域の課題は地域で解決する「身近で頼れる区政」の実現をめざしている。
その具体的な内容は、資料4「堺市の区役所の権限強化策」のとおりである。
(3)京都市においても、区政改革の必要性は認識され、2012年以降検討が重ねられた結果、2016年3月「共汗で進める  新たな区政創生~京都市における区政の在り方について~」が策定されている。
  しかし、その中では、たとえば「地域課題の解決に向けた区長権限の強化」の項目を見ると、「区役所・支所が、区独自のまちづくりを一層推進していくためには、地域課題の解決に向けた機動的な体制等を確保することが必要です。」との問題意識は示されつつも、「このため、特に区役所・支所の独自性が発揮できる業務について、組織、職員定数及び予算要求に架かる区長権限を強化する方向で検討します。」とするのみで、結局何らの改革は実施される予定すらないままである。
(4)同書に施策として示されている「双方向型政策提案予算システムの構築」、「区役所、支所と局事業所等との連携強化」について早期に実現すると共に、その他にも、堺市の取組みを参考にして、現実に区役所の機能強化・権限強化に努めるべきである。

9  まとめ
  以上述べたところから、京都市は今後のマスタープラン(都市計画マスタープラン、行政区毎のマスタープラン及び地域まちづくり構想)の策定や改訂においては、地域毎のマスタープランの集積のうえに都市計画マスタープランや行政区毎のマスタープランを策定すべきこと(意見の趣旨1)、手続においては【ボトムアップ型】で策定・改訂すべきであること(意見の趣旨2)及び区役所のまちづくりに関する権限を強化すべきこと(意見の趣旨3)を提言するものである。
  このように、それぞれの地域で居住し生活を営む各住民の意見を基礎とすること、そしてその住民の意見の実現にあたってまちづくりを担う各行政区の権限が適切に行使されることにより、皆の思いが結実した都市計画が策定されることは、憲法が定める地方自治の本旨(92条)に基づくものといえ、本来的な住民自治の実現に適うあるべき姿である。

以  上


添付資料(掲載省略、PDFに掲載)
  資料1  京都弁護士会 まちづくり関連の意見書・会長声明等一覧
  資料2  京都弁護士会 公害対策・環境保全委員会有志による意見書一覧
  資料3  ミュンヘン市のBプラン策定手続の図表及び同図表内説明文の日本語訳
  資料4  堺市の区役所の権限強化策


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