特定少年の実名等の公表及び推知報道に反対する会長声明(2023年2月15日)


特定少年の実名等の公表及び推知報道に反対する会長声明

2022年11月30日、京都地方検察庁は、特定少年について実名を初めて公表し、一部
の報道機関が、実名を含む推知報道を行った。
2022年4月1日に施行された「少年法等の一部を改正する法律」(以下「改正少年法」と
いう。)は、18歳または19歳の少年を「特定少年」と定義したうえで、同法第68条におい
て、特定少年のときに犯した犯罪について公判請求された場合に、少年の氏名、年齢、職業、
住居、容ぼう等により当該事件の本人であることを推知することができるような報道(以下
「推知報道」という。)の禁止を解除した。
改正少年法の推知報道の禁止の一部解除に対して、当会は、2021年1月20日付「少年
法適用年齢問題にかかる法制審議会第188回会議において採択された法務大臣宛の答申に対
する会長声明」において、反対の立場を表明しているところである。
言うまでもなく、改正少年法においても、特定少年は少年法の適用を受ける少年であり、少
年法の健全育成の趣旨が妥当する。このため、改正少年法成立の際、参議院の法務委員会で
「特定少年のとき犯した罪についての事件広報に当たっては、事案の内容や報道の公共性の程
度には様々なものがあることや、インターネットでの掲載により当該情報が半永久的に閲覧可
能となることをも踏まえ、いわゆる推知報道の禁止が一部解除されたことが、特定少年の健全
育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならないことの周知に努めること。」
等の附帯決議がなされ、衆議院の法務委員会でも同様の附帯決議がなされたのである。
ひとたび少年の実名等が公表され報道がなされると、現代社会においては情報が容易に拡散
され、かつ、インターネット上に半永久的に残り続けることになるため、これが将来にわたっ
て少年の更生を阻害するおそれは極めて強い。
このような少年の健全育成及び更生に対する影響の大きさに鑑み、少年の推知事項の公表・
報道はすべきでない。それにもかかわらず、今回、初めて少年の実名を京都地方検察庁が公表
し、一部の報道機関がこれを報道したことは、誠に遺憾である。
他方で、今回、京都地方検察庁が実名公表を行ったにもかかわらず、事件の内容や少年法の
理念などを踏まえて、主体的な判断により実名報道を行わなかった報道機関が多くあったこと
は、高く評価される。
特定少年の健全育成及び更生の機会を保障するため、京都地方検察庁に対しては、実名等の
公表を行わないよう強く求めるとともに、報道機関に対しては、検察庁が特定少年の実名等を
公表した場合であっても、主体的な判断により推知報道を行わないよう、強く求めるものであ
る。

2023年(令和5年)2月15日

京都弁護士会        

会長 鈴 木 治 一


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