「日本学術会議法改正法案に反対し、改めて日本学術会議の会員任命拒否を 撤回して同会議の推薦どおりに任命するよう求める会長声明」(2023年2月15日)


  2022年(令和4年)12月6日、内閣府は「日本学術会議の在り方についての方針」(以下「内閣府方針」という。)を発表した。この内閣府方針に基づいて、現在開催されている通常国会に日本学術会議法(以下「法」という。)の改正法案が提出される可能性が高いと思われる。しかしながら、以下に述べるとおり、内閣府方針には、日本学術会議の独立性及び自律性を侵害する懸念がある。
  内閣府方針には、「会員等以外による推薦などの第三者の参画など、高い透明性の下で厳格な選考プロセスが運用されるよう改革を進めるとともに、国の機関であることも踏まえ、選考・推薦及び内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置を講じる。」と記されている。
  しかし、当会の2020年(令和2年)10月12日付「日本学術会議の会員任命拒否を撤回し、同会議の推薦どおりに任命するよう求める会長声明」(以下「2020年会長声明」という。)で述べたとおり、そもそも学問の生命は真理の解明をめざす批判的な精神にあり、政府や社会の側からの敵対的対応を招きがちである。そのため、学問の自由(憲法23条)を多面的に実践する会議体である日本学術会議には、法律上政府からの高度な独立性が保障されている。とりわけ、法17条に定められている会員の選考及び推薦と法7条2項に定められている会員の任命という、同会議の人事に関する自律性は、強く保障されなければならない。会員の選考・推薦に第三者の参画を導入しようとする内閣府方針は、同会議の人事に関する自律性を侵害するものであり、許されない。
  また、内閣府方針には、「外部評価対応委員会の機能を強化し、構成及び権限、主要な評価プロセスを明確化すること等により、活動及び運営についての評価・検証が透明かつ厳格に行われることを担保する。」とも記されている。
  しかし、外部評価対応委員会は、外部評価の実施に係る事項に対応するための委員会であるところ(日本学術会議外部評価実施規程2条1項)、この委員会の機能を強化するということは、外部評価有識者による意見の影響が強まるおそれがあり、ひいては日本学術会議の活動・運営に関する自律性が損なわれる危険性が高い。
  以上のとおり、内閣府方針には、日本学術会議の独立性及び自律性を侵害する懸念があり、この方針に基づく改正法案には反対である。
  当会は、岸田文雄内閣総理大臣に対し、改正法案を提出するのでなく、2020年会長声明で求めているように、2020年(令和2年)10月1日の日本学術会議会員任命拒否を速やかに撤回し、同会議の推薦どおりに任命するよう、強く求める。

  2023年(令和5年)2月15日

京都弁護士会                

会長  鈴  木  治  一

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