訪問取引お断りステッカーの解釈の明確化に関する意見書(2023年4月20日)(本イベントは終了しました。)


2023年(令和5年)4月20日

京都市長  門  川  大  作  殿


京都弁護士会               

会長  吉  田  誠  司
  


訪問取引お断りステッカーの解釈の明確化に関する意見書



第1  意見の趣旨
京都市は、2022年(令和4年)8月26日乃至同年11月1日にかけて開催された京都市消費生活審議会消費者苦情処理部会の報告、及び同年11月28日に開催された京都市消費生活審議会の意見を尊重し、京都市民が「訪問取引お断りステッカー」の門扉等への貼付により勧誘を拒絶しているにもかかわらず事業者が行う「訪問販売」「訪問購入」(以下あわせて「訪問取引」という。)が、京都市消費生活条例第20条及び同施行規則「別表(第2条関係)(1)ヒ」に定める禁止行為である「拒絶後の勧誘」に該当するとの解釈を明確にされたい。

第2  意見の理由
1  本審議会及び苦情処理部会での議論内容
京都市の要請により2022年(令和4年)8月26日乃至同年11月1日にかけて開催された京都市消費生活審議会消費者苦情処理部会(以下「苦情処理部会」という。)及び同年11月28日に開催された京都市消費生活審議会(以下「本審議会」という。)において、訪問販売お断りステッカーの効力に関する審議が実施された。
苦情処理部会及び本審議会のいずれにおいても、悪質又は迷惑な訪問販売を市が行政指導の対象とすること自体は異論がないとされた(2022年(令和4年)11月28日付苦情処理部会報告書(以下「部会報告書」という。)5頁、第125回京都市消費生活審議会摘録(以下「審議会摘録」という。)12頁)。その上で、本審議会から京都市に対し、悪質又は迷惑な訪問販売をいかにして防ぐかを検討するよう要望がされるに至った(審議会摘録12頁)。
また、苦情処理部会では、部会長を除く5名中4名の委員が、訪問販売お断りステッカーの効力を認める解釈が妥当であり行政指導の対象とすべきであるとの意見を表明した。
部会報告書においても、「いわゆる「訪問販売お断りシール」が貼られている家への訪問販売全てを行政指導の対象とするべきであるとの意見が多数示された。」として部会の議論が総括された。
審議会での議論についても、「個人が明確な意思表示をした場合には、その意思表示を尊重すべきではないか、との意見もはっきりと出ていた」との要約がなされた(審議会摘録13頁)。

2  本審議会及び苦情処理部会での意見を尊重すべきであること
⑴  上記1のとおり、苦情処理部会では、複数回の議論の結果、「訪問販売お断りシール」が貼られている家への訪問販売全てを行政指導の対象とすべきであるという多数意見が明確に示されるに至った。
本審議会においても、「個人が明確な意思表示をした場合には、その意思表示を尊重すべき」との意見が明確に示された。すなわち、(行政が配布したステッカーか否かはさておき)訪問販売お断りステッカーの貼付を自ら行うことで訪問販売を拒絶する意思表示を明確に表示した市民の意思は尊重されるべきであり、同貼付を無視して行われる訪問販売については行政指導の対象とする旨の解釈をすべきであるという意見である。同意見は、各委員からも異論はなく、本審議会全体でコンセンサスが得られた意見である。
京都市は、苦情処理部会の多数意見及び本審議会でコンセンサスが得られた意見を尊重する必要がある。
⑵  当会発出の2022年(令和4年)11月24日付京都市消費生活審議会あて「訪問取引お断りステッカーの条例上の位置づけに関する意見書」でも述べたとおり、訪問取引及び電話勧誘販売の被害が高止まりしていること、及び9割超の消費者が不招請勧誘を忌避していること等からすれば、京都市として、市民の示した「訪問取引に来てほしくない」という意思表示を支援する姿勢が必要である。「ステッカーを貼付し訪問取引を拒絶している消費者に対し、訪問取引を行わない。」というのは、いわば当然の規範であり、これは今般の苦情処理部会及び本審議会においても確認された。
したがって、京都市は、少なくとも、京都市民が「訪問取引お断りステッカー」の門扉等への貼付により勧誘を拒絶しているにもかかわらず事業者が行う訪問取引が、京都市消費生活条例第20条及び施行規則「別表(第2条関係)(1)ヒ」に定める禁止行為である「拒絶後の勧誘」に該当するとの解釈を明確にすべきである。
以 上



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