入管難民認定法の改悪に強く抗議し、 人権保障を基軸とした入管難民認定法制の構築を求める会長声明(2023年7月20日)(本イベントは終了しました。)


入管難民認定法の改悪に強く抗議し、

人権保障を基軸とした入管難民認定法制の構築を求める会長声明



1  2023年(令和5年)6月9日、出入国管理及び難民認定法を改悪する法案が、参議院本会議で可決され成立した(以下「本法」という。)。
2  本法は、当会が本年5月22日付けの「出入国管理及び難民認定法の改悪に反対する会長声明」で指摘したとおり、日本を離れることのできない事情を抱えた人たちを日本から強制的に排除する制度を新設するなど、人権侵害を拡大する内容となっており、憲法や自由権規約、社会権規約、子どもの権利条約、難民条約、拷問等禁止条約などに違反するおそれがある。
3  本法は、立法事実にも問題がある。人権制約を伴う立法にはその制約を正当化するだけの事実、いわゆる立法事実の裏付けが求められる。本法が複数回の難民申請者を強制送還する制度を設けるのは、ある難民審査参与員の「見落としている難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません」という発言を立法事実とするものである。しかしこの発言は、適正な審査をしていては処理できるはずのない膨大な件数の審査を行ってきた参与員によるものであり、とうてい信頼できるものではないことが、参議院法務委員会の審議で明らかになった。
ところが、政府与党及び賛成野党は、これら立法事実の欠如を指摘する市民や野党の求めを排斥し、参議院法務委員会での審議を早々に打ち切り、強行採決に及んだ。政府与党及び賛成野党のこのような姿勢は、人権を著しく軽視するものであり、議会制民主制度に対する市民の信頼を根底から破壊しかねず、極めて遺憾である。
4  以上のとおり、本法には、重大で看過し難い問題がある。
したがって当会は、本法の成立に強く抗議するとともに、当会が、2020年(令和2年)10月22日付け意見書及び2022年(令和4年)3月29日付け意見書で求めてきた制度改善、すなわち、①収容期間に上限を設け、収容について司法審査を必須とすること、②出入国在留管理庁とは別個独立の難民認定機関を創設すること、③在留資格のない人についても、基本的人権保障の基礎となる、人としての生存を支援し可能にする制度を創設することなど、人権保障を基軸とした入管難民認定法制の構築に向けて、制度全体の改革を早急になすことを、改めて強く求めるものである。

2023年(令和5年)7月20日


京都弁護士会

会長  吉  田  誠  司
  

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