トランスジェンダー当事者の弁護士に対するヘイトクライムを非難する会長声明(2023年7月20日)(本イベントは終了しました。)


トランスジェンダー当事者の弁護士に対するヘイトクライムを非難する会長声明



  トランスジェンダー当事者であることを公表し、トランスジェンダー当事者の権利擁護活動にも積極的に関わっている弁護士に対し、2023年(令和5年)6月3日から5日にかけて、「男のクセに女のフリをしている」「メッタ刺しにして殺害する」などのトランスジェンダーに対する差別表現を含む多数のメッセージと当該弁護士に対する殺害予告が送り付けられるという事件が発生した。これは明らかに、当該弁護士がトランスジェンダーであることを理由とするヘイトクライム(特定の属性を持つ個人や集団への偏見や憎悪に基づく犯罪)である。
  近年、社会では、性的少数者についての理解と連帯が広がっているが、それでもなお、性的少数者に対する差別発言が後を絶たない。むしろ、性的少数者の人権を尊重すべきとする社会の潮流に抗うように、公の場で強い差別発言がなされることも見受けられる。本年6月16日に成立したいわゆる「LGBT理解増進法」も、当事者の懸念や反対意見もある中、差別禁止法として制定されることはなかった。性的少数者に対する差別の防止に消極的な政府の姿勢は、性的少数者に対するヘイトクライムの温床にすらなりかねない。
  そもそも、トランスジェンダーかどうかにかかわらず、性的指向・性自認は、個人の生き方そのもの、個人の尊厳の根幹部分であり、これを理由とする差別は、個人の尊重(憲法13条)と法の下の平等(憲法14条)に反し、決して許されない。性的指向・性自認という個人のアイデンティティに他人が干渉すべきではないし、まして他者の性的指向・性自認を理由として差別意識や憎悪をぶつけるなど、多様な個人の尊重を根本原則とする憲法の下で、あってはならないことである。
  当会は、当該弁護士に対する個別のヘイトクライムを強く非難することはもちろん、未だ社会に根強い性的指向及び性自認を理由とする差別に対し、今後とも、力を尽くして対抗していくことを表明する。

2023年(令和5年)7月20日


京都弁護士会

会長  吉  田  誠  司
  


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