在留資格のないすべての子どもたちへの在留特別許可を求める会長声明(2023年10月18日)(本イベントは終了しました。)


在留資格のないすべての子どもたちへの在留特別許可を求める会長声明



1  2023年(令和5年)8月4日、出入国在留管理庁は、在留資格がないまま在留が長期化した子どもに対して、今回限り、家族一体として在留特別許可をして在留資格を与える方向で検討した結果であるとして、「送還忌避者のうち本邦で出生した子どもの在留特別許可に関する対応方針について」(以下「本方針」という。)を発表した。

2  本方針によると、2023年(令和5年)6月9日に成立した「出入国管理及び難民認定法を改正する法律」の施行までに、①日本で出生して、②小学校、中学校又は高校で教育を受けており、③引き続き本邦で生活をしていくことを真に希望している子どもとその家族は、④親に看過し難い消極事情(不法入国・不法上陸、偽造在留カード行使や偽装結婚等の出入国在留管理行政の根幹に関わる違反、薬物使用や売春等の反社会性の高い違反、懲役1年超の実刑、複数回の前科を有していること)がある場合を除いて、在留特別許可(現行入管法50条1項)が与えられ得るほか、親に看過し難い消極事情があっても、個別の事案ごとに諸般の事情を総合考慮して在留特別許可をする場合もあり得る、とされる。
本方針により、在留資格がないが日本を離れることのできない事情を抱えた子ども201人のうち、少なくとも7割、就学年齢に達している子どもの8割程度に在留特別許可をすることが見込まれるという。

3  当会は、従来の運用方針では在留特別許可を得られる見込みのなかった100名以上の子どもたちに本方針が日本で安定して暮らせる道を開くことを歓迎するものである。同時に、本方針からこぼれ落ちる子どもたちが存在することについて懸念する。
そもそも在留特別許可は、入管法制の定める在留資格制度からこぼれ落ちた人たちに対して法務大臣の裁量により在留資格を特別に付与する制度として設けられたものである。法務大臣のこの裁量権の行使は、子どもの最善の利益の実現を求める子ども権利条約3条や子どもが親から分離されないことを求める同条約9条第1文、生活の基盤があることなどにより「自国」とみなされる国に帰る権利を保障する自由権規約12条4項、家族生活の保護を定める同規約17条、23条などの国際人権条約に従って、あるいは人道上の見地から、なされる必要がある(憲法98条2項、憲法前文)。そして、国際人権条約に照らせば、本方針の定める上記の①出生地や②就学状況という条件を課すことが適切でない場合があり得るし、③「改正法」施行時に子どもすなわち未成年であることという年齢条件を課すことが適切でない場合もあり得る。本方針を厳格に適用するとこぼれ落ちてしまうが、国際人権条約によって、あるいは人道上の見地から救われるべき子どもたちに、在留特別許可が迅速に与えられるよう裁量権を行使することが、法務大臣に課せられた責務にほかならない。

4  したがって当会は、法務大臣に対して、本方針の挙げるいずれかの条件を満たさないすべての子どもたちについても、家族一体として在留特別許可を与えることを、国際人権条約に照らして、あるいは人道上の見地に立って、真摯かつ迅速に検討することを求めるものである。

2023年(令和5年)10月18日

京都弁護士会
会長  吉  田  誠  司


  
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