土地利用規制法に基づく京都府下における区域指定に反対し、広く市民の意見聴取を行った上で内閣総理大臣に対して区域指定に関する意見を述べることを関連地方公共団体に求める意見書


2024年(令和5年)1月22日


京都市長      門  川  大  作  殿
福知山市長   大  橋  一  夫  殿
舞鶴市長      鴨  田  秋  津  殿
宇治市長      松  村  淳  子  殿
城陽市長      奥  田  敏  晴  殿
向日市長      安  田      守  殿
京田辺市長   上  村      崇  殿
京丹後市長   中  山      泰  殿
久御山町長   信  貴  康  孝  殿
精華町長      杉  浦  正  省  殿
伊根町長      吉  本  秀  樹  殿




京都弁護士会              

会長  吉  田  誠  司
  


土地利用規制法に基づく京都府下における区域指定に反対し、広く市民の意見聴取を行った上で内閣総理大臣に対して

区域指定に関する意見を述べることを関連地方公共団体に求める意見書


1、2021年(令和3年)6月に「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(以下「土地利用規制法」という。)が成立した。
その際、当会は、その成立に強く抗議する会長声明(以下「2021年声明」という。)を発表した。なぜなら、土地利用規制法は、内閣総理大臣に「重要施設」又は「国境離島等」についてその周辺を「注視区域」や「特別注視区域」に指定する権限を与え、関係行政機関の長や関係地方公共団体の長等に対して、土地等利用状況調査のために、土地等の利用者その他関係者の情報提供を求めるなどのことができる結果、当該区域に居住する市民等のプライバシー権や思想・良心の自由などの基本的人権を侵害する事態を引き起こすおそれが極めて高いからである。

2、この2021年声明においては、「京都府には、陸上自衛隊の福知山、桂、宇治、大久保の各駐屯地がある他、海上自衛隊の舞鶴地方隊、航空自衛隊の経ヶ岬分屯基地などがあ」るとして、京都府下で多くの箇所が区域指定されうる点を懸念していたところ、この懸念が今般、現実化するに至った。昨年(2023年)末、内閣府政策統括官(重要土地担当)が「注視区域及び特別注視区域の指定について」なる資料を公表して、4回目の区域指定の候補を示した。
その候補の中には、京都府内の以下の11地方公共団体が含まれている(下線で示したものは「特別注視区域」候補)。
①  京都市から向日市にかけて存在する自衛隊桂駐屯地
②  京都市から宇治市にかけて存在する自衛隊宇治駐屯地
③  福知山市に存在する自衛隊福知山駐屯地、空山タカン地区、空山気象レーダー地区
④  舞鶴市に存在する自衛隊舞鶴衛生隊、舞鶴警備隊、舞鶴造修補給所浜地区、舞鶴造修補給所、北吸係留所、第1区、白浜火薬庫、乙島火薬庫、岩子火薬庫、舞鶴弾薬整備補給所機雷倉庫地区、舞鶴海上訓練指導隊、舞鶴弾薬整備補給所、舞鶴航空基地、大波燃料貯蔵所、槇山中継所、舞鶴警備隊瀬崎地区
⑤  宇治市から城陽市、久世郡久御山町にかけて存在する自衛隊大久保駐屯地
⑥  京田辺市から相楽郡精華町にかけて存在する自衛隊祝園分屯地
⑦  京丹後市や与謝郡伊根町に存在する自衛隊経ヶ岬分屯基地、米軍経ヶ岬通信所

3、これらの区域では、今後、内閣総理大臣が、①当該区域の存在する地方自治体の長等に対して、土地や建物の利用者その他関係者のプライバシーや思想・良心にわたる情報まで提供を求めること、②当該区域の土地や建物の利用者や関係者に対して、刑罰の制裁の下に報告又は資料の提供を求めること、③土地や建物の利用者に対して、国の側で「施設機能を阻害する行為」と判断した行為のための利用をしないよう勧告・命令すること及び命令に違反した場合には刑罰に処すること、が可能になる。このような事態は、市民等のプライバシー権や思想・良心の自由などの基本的人権を侵害する恐れが高いから、当会は近々なされる見込みの区域指定には強く反対する。

4.土地利用規制法4条で政府が定めるとされている基本方針中、第2の1(1)において、内閣総理大臣が区域指定を行うに際しては、「あらかじめ、関係地方公共団体の意見を聴取する。」と定められている。
そこで、上記区域指定候補地を擁する京都府下の各地方公共団体におかれては、この意見聴取に先立ち、上記3で述べた問題を十分に意識された上で、候補地に居住する者を始めとする幅広い市民からの意見を聴取し、その結果を踏まえて内閣総理大臣に対して意見を述べられるよう、求めるものである。

以 上



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