機能性表示食品制度の改善・見直しを求める会長声明(2024年4月26日)


機能性表示食品制度の改善・見直しを求める会長声明



1  いま、機能性表示食品への関心が大きく高まっている。食の安全性は消費者の生活に欠かせないものであり、当会も、食品不当表示の問題を踏まえ、消費者のための表示規制の在り方を検討するためのシンポジウムを開催するなどしてこの問題に取り組んできた(2014年(平成26年)8月23日「不当表示は許さない~消費者のための表示規制のあり方を考える」)。とりわけ機能性表示食品については、かねてから安全性や表示情報の消費者への適切な開示等に関して懸念が示されていたところである。
いまこそ、機能性表示食品制度に関し、安全性及び機能性に関する国の監督機能を確保するため登録制度とすることや、事業者に安全性及び品質確保の体制並びに危害情報公表の体制の整備を義務付けることなど、改善・見直しを図るべきである。
2  機能性表示食品制度は、食品関連事業者の責任において、表示される機能性に関する科学的根拠を付して国に届け出ることによって一定の表示が可能となる制度であり、国による個別審査や許可等の事前規制はなく、国は、届出のあった食品について形式的な審査をするのみである。
しかし、2023年(令和5年)3月に公表された「令和4年度食品表示に関する消費者意向調査報告書」(調査委託者 消費者庁食品表示企画課)によれば、「栄養機能食品」、「特定保健用食品(トクホ)」、「機能性表示食品」の3種類について、「聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」との一般消費者の回答はいずれも60%を超え(Q34)、「機能性表示食品」の説明について、「事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示したものである」と正しく選択した者は15.2%にとどまり、「表示されている効果や安全性について国が審査を行っている」と回答した者が17.9%と、後者の方が多かった(Q45)。このように、機能性表示食品制度は、その認知度とは裏腹に消費者が正確な理解を持つには至っておらず、安全性についての誤解さえも存在している。
また、機能性に関する科学的根拠の質の低下も指摘されており、しかも2015年度(平成27年度)の調査結果よりも2017年度(平成29年度)の再調査結果のほうが、質がより低下していたと報告されているが(2019年(令和元年)10月「機能性表示食品制度におけるシステマティック・レビュー消費者庁による検証事業の前後比較評価」上岡洋晴東京農業大学地域環境科学部教授)、国の審査がなく事業者の責任において行われる制度である以上、想定された事態であると言わざるを得ない。2023年(令和5年)8月17日には、科学的根拠に疑いがある機能性表示食品を消費者庁が調査したところ、88点中80点について機能性表示の届出が撤回され、もしくは撤回の意向が示されたことが公表され、さらに同年には優良誤認表示に該当するとして景品表示法に基づく措置命令が発せられた商品もあるなど、不適切な表示・広告が散見されるが、この点も同様である。
食品についての安全性や表示の適切さを確保すると同時に、機能性表示食品について何らかの問題が生じた際、被害拡大防止の観点から、速やかに国が主導して対応できるようにするためにも、やはり現在の単純な届出制度によるのでなく、登録制度を導入すべきである。加えて、消費者に必要な情報が適切に、速やかに提供されるような体制整備の義務付けも必要である。
3  機能性表示食品の市場規模は7000億円に迫っており(株式会社富士経済調べ)、現行制度のままでは、これからも安全性に問題のある食品や不適切な表示・広告が登場することが強く懸念される。
そこで当会は、食の安全を確保するため、制度の改善・見直しを図ることを強く求めるものである。

2024年(令和6年)4月26日

京都弁護士会
会長  岡  田  一  毅




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