日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞を歓迎し、 日本国政府に対し、改めて核兵器禁止条約の批准及び核兵器廃絶に向けた 主体的かつ主導的な役割を果たすことを求める会長声明
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞を歓迎し、
日本国政府に対し、改めて核兵器禁止条約の批准及び核兵器廃絶に向けた
主体的かつ主導的な役割を果たすことを求める会長声明
日本国政府に対し、改めて核兵器禁止条約の批准及び核兵器廃絶に向けた
主体的かつ主導的な役割を果たすことを求める会長声明
2024年(令和6年)10月11日、日本原水爆被害者団体協議会(以下「日本被団協」といいます。)がノーベル平和賞を受賞し、同年12月10日ノルウェー・オスロでノーベル賞授賞式が行われました。ノーベル賞選考委員会は、日本被団協と広島・長崎の原爆被爆者の活動が、被爆生存者による草の根運動として、核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器が二度と使われてはならないことを被爆体験に基づく証言によって示してきたことを授賞理由に挙げています。
当会は、被爆者の方々が壮絶なる被爆体験を切々と語り、被爆の痛苦の境遇の中にあって、被爆の実相を明らかにし、長年にわたり核兵器の非人道性と核兵器の廃絶を国際社会に訴え、「核のタブー」という国際的規範の形成に尽力し、被爆者援護法の制定を始め、今なお続く被爆者の権利救済の闘いを献身的に続ける奮闘に対して、改めて深い尊敬の念を示し、今回のノーベル平和賞受賞を心から歓迎するとともに、より一層核兵器廃絶と平和のためにあらゆる努力を行うことをここに決意するものであります。
ノーベル平和賞の授賞式において、日本被団協を代表してスピーチを行った田中熙巳氏は、原爆被害の実態について、「命を奪われ、身体にも心にも傷を負い、病気があることや偏見から働くこともままならない」「いのち、からだ、こころ、くらしにわたるすべての被害を加えるというものでありました。」と述べるとともに、「原爆で亡くなった死者に対する償いは、日本政府は全くしていないという事実をお知りいただきたい。」と訴えました。私たちは、一瞬にして多くの人々の生命が奪われ、被爆後は心身やくらしまでもが蝕まれる、核兵器の非人道性を再認識するとともに、戦争被害の最たるものである原爆被害でさえ、戦後80年を経ようとする現在まで償われていないという現実を厳粛に受け止めなければならないとの思いを新たにしました。
2017年(平成29年)7月7日、国連会議において、核兵器による惨禍を憂慮する国々により、核兵器禁止条約が提案され、122の国・地域の賛成により採択され、2021年(令和3年)1月22日発効しました。日本被団協が提案し世界の原爆被害者が呼びかけ、国内外の市民により1370万2345人を集めた「核兵器の禁止・廃絶を求める国際署名(ヒバクシャ国際署名)」が、この動きを大きく後押ししました。しかし、日本政府は同条約に反対し、採択には参加しませんでした。しかし、その後、ウクライナ侵攻後のロシアによる核兵器使用の威嚇、ガザ侵攻後のイスラエルによる核兵器使用の威嚇、さらには北朝鮮やイランによる核兵器の開発、核保有の問題が人類共通の現実的な脅威となっています。当会は、2018年(平成30年)9月19日「日本政府に対し核兵器廃絶へ向けて主導的な役割を果たすことを求める会長声明」、2021年(令和3年)1月22日「日本政府に対し、核兵器禁止条約について署名・批准を求める会長声明」を発出するなど、核兵器のない世界の実現のため、主導的な役割を果たすことを求めてきました。しかし、日本政府はアメリカの核政策に追随し、抑止力として依存する態度(核抑止論)を依然としてとり続けており、核兵器禁止条約を批准しようとせず、核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加にさえ慎重姿勢を崩さず、唯一の戦争被爆国として、核兵器廃絶への責任を担おうとしていません。
わが国は、世界で唯一、戦争で核兵器による惨禍を経験した国であり、また戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認という徹底した恒久平和主義を原則とする日本国憲法を有する国です。わが国こそ、世界の先頭に立って主導的に核兵器の廃絶に向けて現実的な取組を行うべき責務があります。当会は、核兵器は人類と共存できないし、共存させてはならないという信念の下、昨今の核兵器使用の現実的脅威の高まりを前にして、日本政府に対し、改めて核兵器禁止条約の批准、及び核兵器廃絶に向けた主体的かつ主導的な役割を果たすことを求めるものです。
2024年(令和6年)12月24日
京都弁護士会
会長 岡 田 一 毅
会長 岡 田 一 毅
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