議員立法による速やかな再審法改正の実現を求める会長声明(2025年3月5日)
議員立法による速やかな再審法改正の実現を求める会長声明
1 昨年(2024年(令和6年))は、再審無罪が確定した「袴田事件」や、再審公判が開かれることが確定した「福井女子中学生殺人事件」などにより、えん罪事件に対する社会的関心が高まった。これらの事件報道などを通じて、証拠開示制度の不備や、再審請求審における検察官抗告の存在、裁判所に期日指定の義務すらないといった再審法の不備が、えん罪被害者の速やかな救済を阻止している実情が広く社会に認識されるにいたっている。
2 昨年3月11日に超党派で結成された「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(以下「議員連盟」という。)は、本年1月末日時点で参加国会議員数が369名と全国会議員の過半数を超え、今なお増加している。議員連盟は、衆議院法制局とともに、刑事再審における証拠開示制度の整備や、再審請求審における検察官抗告の全面的禁止を含む再審法改正の法案を検討し、現在開会中の第217回通常国会(会期2025年(令和7年)6月22日まで)に上程して議員立法での再審法改正を目指している。
3 他方で、法務大臣は刑事再審制度の見直しにつき、法制審議会への諮問を表明した。今月にも法制審議会の臨時総会を開催し、正式に諮問がなされる見通しである。しかしながら、法務省・検察庁はこれまで一貫して、再審法改正に極めて消極的な態度を示してきた。「袴田事件」の再審無罪判決後も、当会が昨年10月11日付け『「袴田事件」の再審無罪判決確定を受けて、改めて再審法の改正を求める会長声明』において指摘したとおり、控訴を断念する旨の検事総長談話にはえん罪救済の観点からする一片の反省も謝罪も含まれてはおらず、従前どおりの検察の立場・主張を正当化しようとするものであった。昨年12月26日に公表された「袴田事件」に関する最高検察庁の検証結果も、手続の長期化につき検察官の対応には問題がなかったとするなど、真摯な反省とはほど遠いものであった。法務省刑事局の中枢を占めるのはまさにその検察官であり、再審制度の在り方に関しては、いわば「利害関係人」である。法務省が主導する法制審議会において、証拠開示や検察官抗告の禁止など必要な改正が速やかになされるとは考えがたい。
4 えん罪は国家による最大の人権侵害であり、えん罪被害者の速やかな救済のための再審法改正を、立法の府である国会議員の提出法案によって行うことに何ら問題はなく、かつ、改正を必要とする項目・内容についての議論も既に深まっている。えん罪被害者の速やかな救済、とりわけ今もなお雪冤の日を信じて命を繋いでいる高齢のえん罪被害者や死刑判決が確定したえん罪被害者、これらの家族の速やかな救済のためには、今通常国会における再審法改正が不可欠である。
よって、当会は、証拠開示制度の整備及び検察官抗告の全面的禁止を柱とする議員立法による速やかな再審法改正の実現を強く求めるものである。
2025年(令和7年)3月5日
京都弁護士会
会長 岡 田 一 毅
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