「消費者契約法の規律の在り方についての答申」に対する会長声明(2016年2月17日)


内閣府消費者委員会は、2016年(平成28年)1月7日、内閣総理大臣に対し、消費者契約法(以下「本法」という。)の今後の規律のあり方に関する答申(以下「委員会答申」という。)を行った。
委員会答申のうち、消費者契約法専門調査会が2015年(平成27年)12月に取りまとめた報告書(以下「調査会報告書」という。)の内容を踏まえ、現時点で法改正を行うべきとされた事項につき、速やかに改正法案を策定した上で国会に提出するとされている点は評価できる。

特に、過量契約(事業者から受ける物品、権利、役務等の給付がその日常生活において通常必要とされる分量、回数又は期間を著しく超える契約)という限定的な範囲に止まるとはいえ、高齢等により合理的な判断をすることが困難な消費者を対象とした不当勧誘類型に対する新たな消費者取消権を導入することは、高齢者社会の進展に伴う高齢者を被害者とした消費者被害の増加への対応策として重要である。また、不実告知における重要事項の拡張、取消権の行使期間の伸長、法定解除権を排除する契約条項を無効とする旨の規定の導入、消費者の意思表示を擬制する契約条項を本法10条前段の要件を満たす条項として例示すること等も、消費者被害等の予防・救済に資するものとして意義がある。

また、委員会答申において、「勧誘」要件の在り方、本法10条の要件など、解釈の明確化を図るべき諸点につき消費者庁の「逐条解説」に適切に反映するなど必要な取組を進めることが適当とされている点については、本来は法改正を行うことが望ましいものではあるが、消費者契約に関する民事ルールの透明性や消費者保護の実効性の向上をもたらすという点で、一定程度評価できる。

上記の法改正及び逐条解説の改訂については、消費者被害の予防・救済の観点から、可及的速やかに実現される必要がある。また、その過程において、法改正の内容や逐条解説の記載内容が調査会報告書の内容から後退してはならない。

さらに、委員会答申においては、速やかに法改正を行うべきとされた6項目を除く他の論点については引き続き継続して検討するとされている。その中には「勧誘」要件のあり方、不利益事実の不告知、困惑類型の追加、平均的な損害の額の立証責任、不当条項類型の追加など、消費者保護の予防・救済という観点から重要な論点が少なくない。上記の諸点に関する見直しを先延ばしすることは許されない。委員会答申にあるとおり、できるかぎり早い時期に答申を行うことができるよう、消費者委員会、消費者庁及び国民生活センターにおいて、積極的かつ充実した取組を可及的速やかに実施すべきである。

2016年(平成28年)2月17日

京  都  弁  護  士  会

会長  白  浜  徹  朗


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