「特定商取引法の規律の在り方についての答申」に対する会長声明(2016年2月17日)


内閣府消費者委員会は、2016年(平成28年)1月7日、内閣総理大臣に対し、特定商取引法(以下「本法」という。)の速やかな法改正を求める答申(以下「委員会答申」という。)を行った。

委員会答申のうち、特定商取引法専門調査会が2015年(平成27年)12月に取りまとめた報告書(以下「調査会報告書」という。)の内容を踏まえ、法改正による対応が必要な事項について速やかに本法の改正法案を策定した上で国会に提出することが適当であるとされている点は評価できる。

特に、被害の後追いとなる指定権利制を廃止すること、アポイントメントセールスの呼出し手段としてSNSと電子広告を適用対象に加えること、継続的な美容医療契約を特定継続的役務提供に追加すること、事業者が支払いのために金融機関等に対して虚偽の申告をするよう唆したり、消費者の求めがない場合に金融機関等に連れて行ったり、事業者が積極的に金銭借入・預金引き出しを勧める行為を指示対象とすることなど、被害防止・救済に資する提言が複数あり、この点は評価できる。

しかし他方で、電話勧誘を事前に拒否する拒否者登録制度(Do-Not-Call制度)や訪問販売お断りステッカー制度(Do-Not-Knock制度)の導入が見送られたことや、インターネット通信販売の虚偽広告による契約の取消権の付与が見送られたことは消費者被害の救済の観点から極めて遺憾である。近時の調査では消費者の96%以上が訪問・電話勧誘を全く受けたくないと回答していること、私生活の平穏は守られるべき法益であること、同制度は事前に勧誘を拒否した者に対する営業活動についてのみの規制に過ぎず、事業者の営業の自由を不当に侵害するものではないこと、同制度は既に多くの諸外国で導入されていること等に鑑みれば、Do-Not-Call制度やDo-Not-Knock制度は速やかに導入されるべきものである。

また、調査会報告書で見送られた他の事項(通信販売における虚偽・誇大広告に関する取消権の付与、インターネットモール事業者に対する加盟店販売業者の実在性確認及び苦情対応の義務付け、複数の都道府県にまたがる被害事案で都道府県による行政処分のみでは不十分なケースについては国が行政処分を行うべきことの明確化等)についても、消費者保護を全うするためにはこれらの措置を講ずることが必要不可欠である。

よって、調査会報告書において措置を講ずべきと指摘された事項については、委員会答申のとおり、迅速かつ確実に所定の措置(法律や政省令の改正)を講じるべきであり、他方、調査会報告書においては見送られた事項についても、できるだけ早い時期に実効性ある法制度の確立に向けた検討が再開されるべきである。

      2016年(平成28年)2月17日

京  都  弁  護  士  会

会長  白  浜  徹  朗
    

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