趣味の噺


初めまして、新入会員の白土哲也と申します。宜しくお願い致します。

突然ですが、僕の趣味は落語を聞くことです。実演ではなく、あくまで聞くだけです。僕本人はベタベタの東北人(「コテコテの関西人」的な言い回しをしてみました)なので、小粋で洒脱なおしゃべりはできません、悪しからず。

今回はこの趣味の噺を一寸させて頂きます。
といっても、落語の魅力を力説するわけでも、豆知識をひけらかすわけでもありません。趣味を披歴するときの相手の反応に関する話です。

自己紹介や会話の糸口に、趣味が話題になることがあります。そういう時、僕は、落語を聞くことと答えます。「聞くこと」と答えるのは、「鑑賞」などというかしこまった言葉が似つかわしくないという意識があるからです。
このとき、相手の反応にはいくつかのパターンがあります。共通の話題に昇華させようとして落語について知っていることを何とか絞り出そうとして下さるケース、「いいご趣味をお持ちですね」と取って付けたような言葉を下さるケース、「へぇー」といった声と共に「さて、どうしたものか…」と困惑したような反応などが主流です。20代前半頃までは「若いのに変わってるね」という言葉を貰うことも多かったですが、この頃その反応は殆どなくなりました(まだ言って下さる方、ありがとうございます)。趣味が一致して大いに盛り上がるなどという経験は、殆ど皆無、思い出しても一度きりです。
相手の微妙な反応は、サブカルチャーのような娯楽には共通する面もあるかもしれません。しかし、殊、落語については、何か違う微妙さがあるような気がするのです。
「お笑い」にカテゴライズされていてそれなりに知名度がある芸人もいるし、ドラマやアニメの背景としては知っているが、実際に落語自体は見た・聞いたことはない。テレビで座布団を何枚も重ねて座っている人たちは見たことがあるけど、どこが面白いのか分からない。とは言え、伝統芸能だし、やたら持ち上げたり、学術的に研究する人もいるし、無下にするのもはばかられる。
このような事情や感覚がない混ぜになって、独特の、えも言われぬ持て余し感が醸成されるのではないかと分析しています。

こんな風に自分の趣味についての他人の反応を観察すると、趣味を裏面から楽しめるかもしれません。

白土  哲也(2016年4月4日記)


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