「大津地方裁判所の高浜原子力発電所再稼働禁止仮処分決定についての会長声明」(2016年3月24日)


1  2016年(平成28年)3月9日、大津地方裁判所は、関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)に対し、高浜原子力発電所(以下「高浜原発」という。)から70キロメートル圏内に居住する住民の人格権に基づく高浜原発3号機及び4号機の再稼働禁止を命じる仮処分決定(以下「本決定」という。)を行った。
2  本決定は、2011年(平成23年)3月11日に起きた福島第一原子力発電所における放射性物質の大量放出事故(以下「福島原発事故」という。)に真摯に向き合い、我が国の歴史上初めて稼働中の原発の停止を命じた仮処分決定である。
    本決定は、福島原発事故を踏まえた原子力規制行政の変化の結果、原発設計や運転規制が具体的にどのように強化され、その要請にどのように応えたかについて、関西電力が主張及び疎明を尽くすべきであるとした上で、関西電力の「主張及び疎明の程度では、新規制基準及び高浜原発の設置変更許可が、直ちに公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない。」と断じた。
また、使用済み燃料について新規制基準が一応合理的であることの主張及び疎明が尽くされていないとし、耐震性能についても新規制基準に応える十分な検討がなされていないとし、津波対策についても疑問なしとしないとした。
    さらに、避難計画について、「国家主導での具体的で可視的な避難計画を早急に策定されることが必要であ」るとした上で、避難計画を視野に入れた幅広い規制基準「を策定すべき信義則上の義務が国家には発生しているといってもよいのではないだろうか。」との注目すべき判断を示した。
3  当会は、2012年(平成24年)2月23日、10年以内に全ての原発を廃炉とすることなどを求めて「福井県内に設置された原子力発電所及び原子力施設に関する意見書」を発し、2016年(平成28年)2月17日、福井県内の全ての原発及び原子炉施設につき、原子力事業者と地方自治体との安全協定の見直しを求めて「京都府の「原子力安全協定」に関する意見書」を発した。
  本決定は、当会のこれまでの意見と軌を一にするものである。
4  当会は、福島原発事故に正面から向き合い、その教訓に基づいた当然の判断から逃げず、基本的人権の擁護という司法の役割を自覚し、その存在意義を改めて示した大津地方裁判所の姿勢を、極めて高く評価する。
    そして、関西電力、国及び原子力規制委員会に対し、高浜原発の拙速な再稼働によってその直後から冷温停止状態に置かねばならないような危険を住民に与えたことを深く反省するよう求めるとともに、本決定を尊重し、原子力発電に依存する姿勢を転換するよう、改めて強く求める。

2016年(平成28年)3月24日

京  都  弁  護  士  会

会長  白  浜  徹  朗
      

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