スペースデブリ
「スペースデブリ」
1 スペースデブリとは
はじめまして,弁護士の河野正和と申します。
今回はスペースデブリについてお話したいと思います。
スペースデブリ(以下,「デブリ」といいます。)とは,宇宙ゴミとも言われる,衛星軌道上にある不要な人工物体のことです。たとえば使用済みあるいは故障した人工衛星、打ち上げロケットの上段、ミッション遂行中に放出した部品、爆発・衝突し発生した破片等をいい,漫画「プラネテス」や,映画「ゼログラビティ」の題材にもなりました。
現在軌道上には多くのデブリが存在し,地上から追跡されている10㎝以上の物体で約2万個、1cm以上は50~70万個、1mm以上は1億個を超えるとされています。
デブリは秒速約7kmという高速で地球を周回しているため,例えば,1cm以上のデブリであれば,宇宙機に衝突すると壊滅的な損害が生じますし、またデブリ同士が衝突すればさらに多くのデブリが発生し,更なる損害の危険が高まります。
2 関連法
宇宙に関する法律としては,国連の宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)で作られた,宇宙条約や損害責任条約をはじめとする宇宙諸条約があるのですが,デブリに関する包括的な国際条約は未だに定められていません。
また,デブリ同士が衝突して新たなデブリが発生した場合のように,責任の所在を明らかにすることが難しいことも多く,デブリによる損害を填補する仕組みが不十分といえます。
一方で,2007年,国連で「国連宇宙デブリ低減ガイドライン」が決議されました。そこでは,デブリの衝突が起こらないように監視を行い、必要であれば軌道変更して衝突を回避することなど7項目が定められています。このガイドラインのもと,各国で国内法を制定し,デブリ回収衛星の研究や開発が進められています。
3 日本での取り組み
約10cm以上のデブリについては地上から追跡できるため,衝突する前に衛星等を移動させ,回避行動をとることができ,数mm未満のデブリについてはその衝突から宇宙ステーションや衛星を守る防護壁の開発が進んでいます。しかしその間の数mmから数cmのデブリは衝突回避も防護もできません。
そのため,各国で様々なデブリ除去方法が考えられており,日本では,JAXAが,低コストで小型衛星にも取り付け可能な,導電性テザーを用いたデブリ除去技術を現在開発中であり,その実現が期待されているところです。