「南スーダンPKO新任務付与に反対する会長声明」(2016年12月22日)


  政府は、本年11月15日、閣議決定を行い、国際連合南スーダン派遣団(UNMISS)へ国際連合平和維持活動(PKO)として派遣される自衛隊に対し、昨年9月に成立した安保法制の中に含まれるいわゆる改正PKO法に基づき、新たに「駆け付け警護」(同法26条2項)の任務を付与した。併せて、国家安全保障会議では「宿営地の共同防護」(同法25条7項)の任務を付与することが確認された。
  既に当会の会長声明において繰り返し指摘しているように、そもそも安保法制は憲法9条に違反し、廃止されるべきものである。とりわけ、上述の「駆け付け警護」「宿営地共同防護」は、襲撃された他国要員等を防護するため、あるいは、外国軍隊との共同宿営地を防護するために武器の使用を認めるものであり、これまで自己保存型に限定されていた武器使用基準が緩和されている。これは、従来、武器の使用が「武力の行使」とならないための基準とされてきた「自己保存のための自然的権利」を越えることは明らかである。すなわち、他国のための武器使用が「自己保存のための」ものでないことは明らかであって、憲法9条の禁止する「武力の行使」を許容するものであると言わざるを得ない。また、PKOに際しての「武力の行使」は、2014年の解釈改憲後の見解によっても自衛権の行使に該当し得ないことは明白であるから、この点でも憲法9条違反は明らかである。
  したがって、本閣議決定及び国家安全保障会議の上記確認は、違憲の改正法を執行するものであって、許されない。
  さらに、南スーダンでは、本年7月に首都ジュバで政府軍と反政府勢力との間で武力衝突が発生して、中国のPKO隊員が犠牲となったほか数百人が死亡し、UNMISSの関連施設も破壊された。本年11月1日に発表された国連の報告書によれば、政府軍が市民に対する殺人、略奪、性的暴力を行ったとされている。このような南スーダンの情勢は、憲法9条を踏まえた法律上の要請であるPKO五原則のうち少なくとも「紛争当事者間での停戦合意成立」という要件を満たしていない疑いが強く、この点でも問題がある。
  よって、当会は、「駆け付け警護」「宿営地共同防護」の任務付与に強く反対し、このような任務付与を前提とした自衛隊のPKO派遣にも反対する。

2016年(平成28年)12月22日

京  都  弁  護  士  会

会長  浜  垣  真  也

        

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