「割賦販売法改正法の成立に対する会長声明」(2016年12月22日)


  クレジットカード決済に伴う悪質加盟店の排除並びにカード番号情報の漏えい及び不正利用の防止を図るため、2016年(平成28年)12月2日、割賦販売法改正法が成立した。
  悪質加盟店の排除並びにカード番号情報の漏えい及び不正利用の防止の観点から、加盟店契約を締結する加盟店契約会社(アクワイアラー)及び決済代行業者の登録制を規定したこと、クレジットカード番号等取扱契約締結事業者による加盟店契約時及び契約後の加盟店調査義務及び不適合加盟店排除等の措置義務を規定したこと、加盟店に対して情報漏えい防止及び不正利用防止を義務付けたことは、いずれも評価できる。
  しかし、今回の割賦販売法の改正では、カード発行会社(イシュアー)から加盟店契約会社に対する苦情の伝達などは明文化されなかった。この点、当会が2015年(平成27年)10月22日付け意見書で指摘したとおり、クレジットカード決済に関する消費者トラブルが発生した場合、消費者にとって苦情の通報先は自らのカードが発行されたカード発行会社しかないため、カード発行会社と加盟店契約会社が異なる取引の場合にカード発行会社から加盟店契約会社等に対する苦情の迅速な伝達等の処理が実行されなければ、適切な加盟店調査及び悪質加盟店排除は実現できない。
  また、今回の改正では、二月払購入あっせん(マンスリークリア取引)についての抗弁対抗(加盟店との間で商品の引渡しがない等トラブルが生じた場合、購入者等は、販売業者との間に生じている事由をもって、カード発行会社からの支払い請求を拒否すること)の適用が見送られた。当会が2011年(平成23年)7月22日の意見書で指摘したとおり、近時二月払購入あっせんの取引は増加しており、二月払購入あっせんといえども信用を供与していることには変わりがないのであるから、消費者保護の観点から二月払購入あっせん取引についても抗弁対抗の適用を認めるべきである。
  さらに、クレジットカード情報の漏えい・不正利用防止の実効性を確保するためには、カード会社及び加盟店に義務付けるだけではなく、消費者がカード番号情報のセキュリティ対策の重要性を学ぶこと並びに加盟店のセキュリティ対策の実情を消費者が把握できるように情報開示をすることが不可欠である。
  よって、政府に対し、消費者の苦情が迅速かつ適切に処理されることを検証し、必要に応じて悪質加盟店排除におけるカード発行会社の責任を見直すこと、消費者保護の観点から二月払購入あっせん取引についても抗弁対抗の適用を認めること及びクレジットカードのセキュリティ対策に関する消費者啓発及び情報提供の推進を要望する。

      2016年(平成28年)12月22日
                                                      

京  都  弁  護  士  会

会長  浜  垣  真  也

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