外国籍の弁護士を調停委員への任命から排除しないことを求める会長声明(2017年2月15日)


    当会は、京都地方裁判所からの2016年(平成28年)11月4日付けの推薦依頼を受けて、同年12月20日付けで、外国籍である当会会員1名を含む民事調停委員候補者を推薦した。これに対し、2017年(平成29年)1月17日付けで、京都地方裁判所から、上記外国籍の当会会員1名については、民事調停委員候補者としない旨の通知があった。京都地方裁判所の職員から、上記通知に際し、上記外国籍の当会会員1名について民事調停委員候補者としない理由につき、口頭で調停委員は日本国籍を有する者に限るためとの説明があった。
    しかしながら、民事調停法、家事事件手続法並びに民事調停委員及び家事調停委員規則には、調停委員の資格要件や欠格事由として日本国籍の有無に関する規定はなく、法令上、調停委員に関する国籍要件は存在しない。にもかかわらず、外国籍であることのみを理由に調停委員の候補者としない裁判所の対応は、法令に根拠のない基準を新たに創設し、当該公務員の具体的な職務内容を勘案することなく、日本国籍の有無で異なる取扱いをするものであって、国籍を理由とする不合理な差別であり、憲法14条、自由権規約26条及び人種差別撤廃条約5条の平等原則に違反するものである。
    このような対応に対しては、2010年(平成22年)の第3回から第6回政府報告書審査及び2014年(平成26年)の第7回から第9回政府報告書審査に対する国連人種差別撤廃委員会の最終見解において、能力を有する日本国籍でない者を調停委員として認めることを勧告されているとおり、国際社会からの指摘も受けているところである。
    そもそも調停委員の職務は、専門的知識や社会生活上の豊富な知識経験を生かして当事者の互譲による紛争解決を支援することにあり、「公権力の行使」にはあたらず、「国家意思の形成」といった側面も認められない。また、社会のグローバル化により、外国人が調停の当事者となることも少なくなく、事案に精通しているケースもある。それゆえ、調停委員の適否は、その知識経験や人格識見などを発揮して当事者の互譲による紛争解決を支援できる者か否かという点により判断されるべきであって、日本国籍の有無を問題とすべきではない。
    なお、1974年(昭和49年)から1988年(昭和63年)までの間、日本国籍を有しない台湾籍の大阪弁護士会会員を最高裁判所が西淀川簡易裁判所民事調停委員に任命していたという先例のあることが明らかとなっており、日本国籍を有しないことを理由に任命しない取扱いには整合性もない。
    したがって、当会は、最高裁判所及び京都地方裁判所に対し、改めて外国籍の弁護士を調停委員の任命から排除しないことを強く求める。

      2017年(平成29年)2月15日

京  都  弁  護  士  会

会長  浜  垣  真  也


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