イラク問題特別措置法可決成立に関する会長声明(2003年7月26日)


会  長  声  明



本日、参議院本会議において、「イラクにおける人道復興支援活動等の実施に関する特別措置法案」が、与党三党による賛成多数で可決され、成立した。
本法は、イラクを軍事占領している米英の軍事行動を支援することを主な目的としている。
  しかし、米英によるイラク攻撃は、そもそも国連憲章に違反した侵攻であり、米英がイラク攻撃の正当理由として主張した、イラクが保有しているとされる大量破壊兵器については、いまだに発見されておらず、しかも、大量破壊兵器が存在すると主張された根拠が虚偽の情報に基づくものであることも明らかにされている。国際的にも、米英国内においても、イラク攻撃の正当性、ひいてはイラク占領の正当性に重大な疑義がもたれ始めており、イラクでは、米軍によるシーア派指導者の拘束に反対した数万人の抗議集会とデモが行われる等、米英軍による軍事占領に反対し、撤退を求めるイラクの人々によるデモや集会も勢いを増してきているとの報道もなされている。
しかも、イラクでは、米国の戦闘終結宣言後も、米英軍に対する攻撃やその攻撃による死者が42名以上も発生しており、米中央軍司令官は、米軍はバース党等の残党とイラク全域で戦闘行為にある、彼らは組織だったゲリラ戦を展開している、と言明するなど、イラク全土が戦闘状態にあることが明らかとなっている。
こうした戦闘状態、緊張状態にあるイラクに、武器を携行した自衛隊を派遣し、米英軍の軍事占領を支援することは、米英軍と一体になって、イラクの人々に銃口を向けて、わが国が戦争に加担することになるという、重大な懸念がある。
以上のとおり、イラクにおける米英軍の軍事占領の正当性に重大な疑念があり、かつ、わが国がイラクでの戦争に加担することになる重大な懸念があるにも関わらず、本法を強行採択し、可決したことは、後世に禍根を残すものである。
  本法が憲法9条の平和原則に真っ向から反するとして廃案を求めている当会としては、本法が可決、成立したことに対し、心から遺憾の意を表明するとともに、本法に基づき、自衛隊をイラクへ派遣することには強く反対するものである。また、当会は、広く国民に本法の問題点を問いかけ続けるとともに、憲法の平和原則に立脚した取組みを強めることを改めて決意するものである。


                                                    2003年  7月26日

                                                                    京都弁護士会
                                                                        会  長    塚    本    誠    一


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