「憲法施行70周年にあたっての会長声明」(2017年5月3日)


  日本国憲法は、1947年(昭和22年)5月3日に施行されました。今年で満70年となります。憲法施行70年の節目の年にあたり、市民の皆様に、京都弁護士会を代表して一言ご挨拶申し上げます。

  戦前の我が国には、国民主権は存在しませんでした。思想良心の自由や表現の自由などの基本的人権も奪われていました。その下で、政府が暴走して無謀な戦争に突入し、国の内外に未曽有の犠牲を生じさせました。その教訓を踏まえて、私たちは、二度と戦争をしないという平和主義、国民主権、基本的人権の尊重を三大原則とする日本国憲法を制定したのです。

  この憲法は、戦争によって傷ついた多くの市民に歓迎され、70年の歳月を経て、我が国社会にしっかりと根付いてきました。いまや憲法によって権力を縛るという立憲主義の考え方は、市民の共通理解となっています。

  京都弁護士会は、在野法曹の立場で、時々の出来事に対し意見を述べるなど、憲法の理念を実現するための努力を続けてきました。1971年(昭和46年)から、「憲法と人権を考える集い」を46回開催し続けています。基本的人権、平和、地方自治、刑事裁判、女性や子どもの権利など多彩なテーマを取り上げてきました。これは、京都府下の自治体、諸団体の皆さまの共催・後援があってこそ続けることができました。私たちは、憲法と人権の価値を豊かな視点で明らかにし続けてきたものと自負しています。

  他方で、今日、いわゆる安保法制や特定秘密保護法など、違憲の疑いのある法律が制定されています。テロ防止の名の下に、自由に考え話すことを取り締まる共謀罪が国会に提案されています。立憲主義の危機と言えるでしょう。

  日本国憲法12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」と謳っています。私たち京都弁護士会は、権力から独立した法律専門家として、これからも憲法とその理念が守り貫かれる社会を実現するために、皆様とともに努力を続けてまいります。

  市民の皆様におかれても、引き続きご理解ご協力を賜りますよう心よりお願い申し上げて、憲法施行70年にあたっての御挨拶とさせていただきます。ありがとうござました。

      2017年(平成29年)5月3日

京  都  弁  護  士  会

会長  木  内  哲  郎


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