声明

「最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明」(2017年6月22日)  


1  2016年7月28日、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、平成28年度地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行った。京都府の目安は、Bランク24円であった。
例年、中央最低賃金審議会が示す目安を参考として、地方最低賃金審議会が地域別最低賃金を決定している。京都地方最低賃金審議会においても、2016年8月8日に、地域別最低賃金が1時間あたり807円であったところ、上記中央最低賃金審議会の目安を反映し、24円引き上げて831円にすることが適当であるとの答申を行い、同年10月2日からは実際に831円に引き上げられて運用されている。
しかしながら、以下に述べるとおり、労働者の生活の安定という観点からは引き上げ後の最低賃金においてもなお十分とは言い難く、最低賃金の大幅な引き上げは必須である。

2  我が国の最低賃金制度は、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定等に資することを目的としている(最低賃金法第1条)。
ここで、1か月当たりの労働時間として、厚生労働省の毎月勤労統計調査の結果(平成29年3月分結果確報)である170.7時間(調査産業計の一般労働者の総実労働時間)を用い、京都地方最低賃金審議会の答申による金額である1時間当たり831円をもとに試算すると、1か月の賃金額は14万1852円となる。
しかしながら、京都市の家計調査報告(平成29年3月速報)においては、勤労者世帯1世帯当たり1か月間の消費支出は24万7568円(世帯人員3.12人に対し有業人員1.48人)であるところ、これを有業人員1人当たりに換算すると16万7276円の負担となる。最低賃金額は労働者の健康で文化的な生活を維持するためのものであるが、現在の最低賃金額では、フルタイムで働いた場合においても、上記法の趣旨が充たされた水準が確保されているとは言い難い。

3  政府は、2010年6月18日に閣議決定された『新成長戦略』において、2020年までの目標として、「全国最低800円、全国平均1000円」にまで最低賃金を引き上げることを明記し、2016年6月2日に閣議決定された『日本再興戦略2016』の工程表においても、全国加重平均が1000円となることを目指すとしている。
昨年の答申により、京都府の平成28年度地域別最低賃金は831円となったが、残り3年間で全国平均の目標値に達するには、1年当たり56.34円の引き上げが必要である。また、2020年に全国平均1000円を達成するためには、現在京都府の最低賃金は全国平均を上回っていることから、京都府では上記の56.34円を上回る引き上げが必要となる。
なお、最低賃金が1000円となったとしても、1日8時間、週40時間の労働で月収約17万3000円、年収約208万円にとどまる。これは、たとえば子どもが2人いる4人世帯の生活保護費にも届かない金額である。他方、最低賃金の引き上げには、米連邦労働省作成のホームページにおいても指摘されているように、労働者の離職率を下げ、新規採用・訓練のコストを削減し、生産性の向上に繋がる、また、賃金が消費に回り地域的及び全国的に経済成長を刺激するなどのメリットがある。
したがって、労働者の生活の安定を図るためには、政府の成長戦略の枠に拘泥されない最低賃金の引き上げも検討されるべきである。

4  当会は、基本的人権の保障と社会正義の実現という弁護士法の理念を踏まえ、「ワーキングプア解消のための公契約法及び公契約条例の制定を求める会長声明」(2014年12月25日付)を発表するなどして、労働者に適正な賃金を保障するとともに地域経済の活性化を図る提言を行ってきた。また、労働問題や生活保護問題のホットラインを開催したり、貧困・労働問題に関する市民シンポジウムも継続的に行ったりしてきた。2016年9月13日にも、本会長声明と同趣旨の「最低賃金のさらなる引き上げを求める会長声明」も発表した。
そうした経緯を踏まえ、当会は、改めて、京都地方最低賃金審議会に対し、さらなる京都府地域別最低賃金の大幅な引き上げを図り、地域経済の健全な発展を促すとともに、労働者の健康で文化的な生活を確保されるよう求める。
    また、政府、京都府、京都市においては、中小企業の賃金引き上げを誘導するための補助金制度等の構築・充実が検討されるべきである。

      2017年(平成29年)6月22日

京  都  弁  護  士  会

会長  木  内  哲  郎



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