「消費者契約法の改正を求める意見書」(2017年6月22日)


2017年(平成29年)6月22日


内閣総理大臣                                    安  倍  晋  三  殿
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)        松  本      純  殿
消費者庁長官                                    岡  村  和  美  殿
衆議院議長                                      大  島  理  森  殿
参議院議長                                      伊  達  忠  一  殿
内閣府消費者委員会委員長                        河  上  正  二  殿
内閣府消費者委員会消費者契約法専門調査会座長    山  本  敬  三  殿

京都弁護士会

会長  木  内  哲  郎



消費者契約法の改正を求める意見書



第1  意見の趣旨
    消費者契約法の改正に関し、内閣府消費者委員会消費者契約法専門調査会において検討されている以下の各論点について、以下のとおり改正すべきである。
  1  合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型について
      判断能力が低下している状態で合理的な判断をすることができない事情につけ込んで契約を締結させる類型についても、取消権を明文化すべきである。
  2  不当条項の類型の追加について
  (1)「事業者は、当該事業者との間で消費者契約を締結した消費者が後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を受けたときは、当該消費者契約を解除することができることを定めた条項は、無効とする」という趣旨の規定を設けるべきである。
また、上記のような条項以外で、事業者に当該条項がなければ認められない解除権・解約権を付与し又は当該条項がない場合に比し事業者の解除権・解約権の要件を緩和する条項についても、原則として無効とした上で、事業者が当該条項の必要性・相当性を明らかにした場合に限り有効とする旨の規定を設けるべきである。
  (2)事業者に契約文言の排他的解釈権限を与える条項、及び、事業者に権利義務の発生要件該当性やその内容の決定権限を一方的に委ねるような条項を無効とする趣旨の規定を設けるべきである。
  (3)「消費者契約法その他の法令の規定により無効とすべき消費者契約の条項について、無効となる範囲を限定する条項は、無効とする」という趣旨の規定を設けるべきである。
  (4)事業者の軽過失による損害賠償責任の一部を免除する条項について、少なくとも消費者の生命の侵害又は身体の重大な侵害が生じた場合のものについては無効とする規定を設けるべきである。
  3  「平均的な損害の額」の立証に関する規律の在り方について
  (1)「平均的な損害を超えること」の立証責任を事業者に負わせることを明文化すべきである。
  (2)「平均的な損害」の算定にあたり、解除の時期的区分によって損害に差が生じる契約類型においては、当該区分が合理性を有するものでなければならないことを明文化すべきである。
  (3)契約解除後に履行期が到来する役務等の逸失利益は原則として、「平均的な損害」に含まれないことを明文化すべきである。
  4  条項使用者不利の原則について
「消費者契約に該当する定型約款の条項について、その条項中の文言の文理、他の条項との整合性、当該契約の締結に至る経緯その他の事情を考慮してもなおその意味を一義的に確定することができない場合には、事業者にとって不利に解釈しなければならない」という趣旨の規定を設けるべきである。
  5  不利益事実の不告知について
不利益事実の不告知に関し、法4条2項の主観的要件に重過失を追加する考え方については、重過失を追加するだけでは不十分であり、主観的要件を削除すべきである。
また、故意・重過失などの主観的要件を維持するのであれば、先行行為要件を削除すべきである。
  6  困惑類型の追加について
困惑取消の対象となる事業者の行為に、「執拗な勧誘」及び「威迫による勧誘」も追加すべきである。
  7  配慮義務について
消費者に対する配慮義務については、努力義務としてではなく、法的義務として規定されるべきである。


第2  意見の理由
  1  はじめに
2016年(平成28年)5月、「消費者契約法の一部を改正する法律」が成立した。
消費者契約法は、制定時より多岐にわたる項目について見直しの必要性が指摘されていたが、上記改正で実現したのはわずか6項目にすぎず、「勧誘」要件の在り方、不利益事実の不告知、困惑類型の追加、「平均的な損害の額」の立証責任、条項使用者不利の原則、不当条項類型の追加その他の事項は今後の検討課題とされ、改正法成立後遅くとも三年以内に必要な措置を講ずることとする附帯決議がなされた。
これを受けて、同年9月より消費者委員会消費者契約法専門調査会(以下「専門調査会」という。)が再開され、下記2~8の論点を中心に継続的に調査審議が行われている。
当会は、2015年(平成27年)3月26日付け消費者契約法の改正を求める意見書、2016年(平成28年)年2月17日付け「消費者契約法の規律の在り方についての答申」に対する会長声明、同年5月25日付け「消費者契約法の一部を改正する法律」の成立に関する会長声明などにより、情報通信技術の発達や高齢化社会の進展等で拡大する消費者被害等の予防・救済を図るため、消費者契約法の早期改正を求めてきたところであるが、専門調査会において本年7月ないしは8月上旬ころに予定されているという「取りまとめ」にあたり、以下のとおり意見を述べる。

  2  合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型について(意見の趣旨1項)
第40回専門調査会において、「合理的な理由もなく、当該消費者契約を締結しなければ当該消費者に生じ得る損害又は危険を過度に強調して告げること。」(不安を煽る告知)、「当該消費者を勧誘に応じさせる目的で当該消費者に接触し、取引上の社会通念に照らして当該消費者契約の締結とはかかわりのない関係を築いた上で、当該消費者契約を締結することが当該関係を維持するために必要であると思わせるような言動をすること。」(断りきれない人間関係を濫用する行為)という趣旨の規定を設けることが検討された。
ただし、これらによっても、高齢者被害の重要な事案でもある「もともと当該消費者が消費者契約を締結するかどうかを合理的に判断することができない状況であることにつけ込んだ行為」に対応することができない。この点、2010年度の消費生活相談件数を基準としてこれを100とすると、65歳以上の高齢者に関する相談件数は129.2と、5年前と比較し29.2%増加しているとのデータもある(消費者庁「平成28年版消費者白書」119頁)。このような「高齢者その他の者の判断力の不足に乗じて、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させる行為」は、既に全国の消費生活条例において禁止行為とされているから、事業活動に対する予測可能性を失わせるものではない。この点、オランダ民法44条は、状況の濫用の法理を採用し、つけ込み型勧誘による契約の取消しを認めている。
そこで、別途、このような場合に契約の取消しができるという規定を設けるべきである。この点、内閣府消費者員会の成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループの報告書によると、「事業者が当該若年成人の知識、経験不足等の合理的な判断をすることができない事情につけ込んで締結した契約を取り消すことができるとする規定を設けること」が提案されている(「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書」、平成29年1月、10頁)。この規定は若年成人を対象としたものであるが、これを参考にして、判断能力が低下している状態で合理的な判断をすることができない事情につけ込んで契約を締結させる類型については、若年成人に限らず、広く取り消すことができるという規定を設けるべきである。

  3  不当条項の類型の追加(意見の趣旨2項)
  (1)事業者に法律に基づかない解除権・解約権を付与し又は事業者の法律に基づく解除権・解約権の要件を緩和する条項について
これらの条項は、事業者にその契約責任を一方的に消滅させることや緩和することを許容するものであり、原則として無効とすべきである。ただ、そのような条項の中には、種々の態様が考えられることから、事業者が当該条項の必要性・相当性を明らかにした場合に限り有効とすることが考えられる。
その中でも、後見開始等の審判は消費者の適正な財産の管理等を可能にするものであり、解除事由とする必要性・相当性は認められないから、これを理由に事業者による解除を認める条項は例外なく無効とすべきである。
  (2)解釈権限付与条項・決定権限付与条項について
これらの条項は、契約の一方当事者である事業者が行う解釈や決定の内容に他方当事者である消費者を法的に拘束させるものであり、消費者の契約上の地位を著しく不安定かつ不利益なものにするから、およそ正当化できない。
具体的な規定方法として、「消費者契約のすべての条項について」との限定を加えること(第32回専門調査会資料1の7頁)は、一部の条項でも事業者に解釈権限・決定権限がなければ無効とならず、脱法を容易にするものであり、妥当でない。
また、「消費者が事業者に対し事業者による解釈や決定について異議を述べることを排除する」ことを要件とすること(同7頁)は、上記の規定のように脱法を容易にするものではないが、事業者が行う解釈や決定の内容に消費者を法的に拘束させることが不当性の本質であることからすれば、このような要件により救済の範囲を狭めるべきではない。
端的に、事業者に契約文言の排他的解釈権限を事業者に与える条項、及び、権利義務の発生要件該当性やその内容の決定権限を一方的に委ねるような条項を無効とする規定を設けるべきである。
  (3)サルベージ条項について
本来、強行法規により無効とされる条項につき、その効力を強行法規により無効とされない範囲に限定する、いわゆるサルベージ条項は、事業者が強行法規に違反しない限界まで権利を拡張し義務を免れうることを可能としつつ、法律で許容される範囲がわからない消費者の権利行使に大きな萎縮効果をもたらすものである。また、サルベージ条項が有効とされれば、事業者にとって、適正な内容での契約条項の策定へのインセンティブが事業者に働かないという問題もある。
したがって、サルベージ条項は、例外なく無効とすべきである。
  (4)軽過失による人身損害の賠償責任を一部免除する条項について
人間の生命及び身体という法益の重要性及び処分不可能性からすれば、少なくとも事業者の軽過失によって生命の侵害又は身体の重大な侵害が生じた損害賠償責任を免除することはおよそ不当である。
身体の侵害が重大なものでない場合についても、ごく限られた例外を除いては、事業者の軽過失による損害賠償責任の免除を一部でも認めるべきではない。
  (5)上記各規定の具体的な立法化にあたって、ある条項につき、わずかでも例外的に法的に許容しうる場合があることを理由として、当該条項を一律に無効とする規定を設けることにコンセンサスが得られない場合に、そのことから当該条項についての規定自体が設けられないことになれば、消費者被害の予防・救済は遠のくし、理論的にも無効とすべき場合があることを否定する理由はないから、そのような場合には、原則として無効とした上で、例外的に有効とするような規定とするといった形で立法化すべきである。
  (6)その他の条項について
消費者契約法 10条の要件は抽象的であるため、これに該当する契約条項か否かの判断は消費者にも事業者にも困難であるのが通常である。不当条項の類型を追加することは、紛争予防や裁判外での紛争処理に資するし、事業者の経営戦略を立てやすくする効果もある。
上記(1)ないし(4)以外の条項についても、類型的に信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項について、実際に問題となった実例等を調査・確認した上で、不当条項の類型として追加することを具体的に検討すべきである。

  4  「平均的な損害の額」の立証に関する規律の在り方について(意見の趣旨3項)
この点について、当会においては、2015年(平成27年)3月26日付け消費者契約法の改正を求める意見書において、下記(1)~(3)と同旨の提案をしているが、あらためて詳述する。
  (1)消費者契約法9条1号「平均的な損害」の立証責任について
事業者に生ずる損害について、消費者が資料を有していることは通常想定できず、消費者が「平均的な損害を超えること」の立証をすることは困難である。また、消費者に立証責任を負わせる結果、事業者が積極的な立証活動を行わず、原資料に基づく適正な審理が阻害されるという弊害が生じる。さらには、事業者が「平均的な損害」の立証責任を負わないことから、そもそも事業者が消費者から解約料を徴求する以上、その金額は根拠となる資料に基づき発生する損害の算定を行った上で設定されるべきものであるところ、解約料の設定時において、適切な算定根拠なく解約料を設定している業者も多い(第38回専門調査会資料3-1)。
このような弊害をなくすためには、端的に消費者契約法9条1号の条文を改正し、事業者が立証責任を負うことを明記すべきである。
  (2)「平均的な損害」の算定の区分の設定について
解除の時期的区分によって損害に差が生じる契約類型においては、区分の設定如何により平均的な損害の金額が大きく変動する。それにもかかわらず、「平均的な損害」の算定の基礎となる時期的区分を事業者が自由に設定できるとなると、解約時期により損害が少額になるはずの消費者が高額になるケースに引きずられ、全体として平均化された高額の違約金を支払わされることになる。例えば、逸失利益が損害となる例において、1月を区分として平均的な損害を算定した場合には、23か月目に解約した消費者と1か月目に解約した消費者は区別され、前者の消費者は本来少額の違約金にとどまり、他方、後者の消費者の方が高額の違約金となるはずであるところ、2年間を1区分として算定した場合には、23か月目に解約した消費者が1か月目に解約した消費者と同じ扱いとなり、違約金が高額になる後者のケースに引きずられて平均化された高額の違約金を負担させられるという結果になる。このような結果が公平性を欠くことは明らかである。
そこで、「平均的な損害」の算定にあたっては、解除の時期的区分によって損害に差が生じる契約類型においては、区分設定に合理性を要求するよう現行法を改正すべきである。
  (3)「平均的な損害」と逸失利益について
契約解除後に履行期が到来する役務等の逸失利益が「平均的な損害」に含まれるとすると、消費者は解除したとしても常に多大な損害賠償責任を負わされる。特に利益率が高い業態の場合にはこの消費者の不利益が大きい。したがって、消費者利益保護の見地からは、原則として事業者の逸失利益は「平均的な損害」に含まれないと解するべきである。
また、当該消費者契約の目的が他の契約において代替ないし転用される可能性がある場合は、事業者の逸失利益は「平均的な損害」に含まれないと解するべきである。
以上より、契約解除後に履行期が到来する役務等の逸失利益は、原則として、「平均的な損害」に含まれないことを明文化すべきである。

5  条項使用者不利の原則について(意見の趣旨4項)
第33回専門調査会において、「消費者契約に該当する定型約款の条項について、その条項中の文言の文理、他の条項との整合性、当該契約に至る経緯その他の事情を考慮してもなおその意味を一義的に確定することができない場合には、事業者にとって不利に解釈しなければならない」という趣旨の規定を設けることが検討された。事業者が作成した契約条項が情報力・交渉力の格差を背景に消費者に一方的に押し付けられているという現状のもとでは、不明確な条項については、消費者で明確な認識を持つことができず、それ故、実際の裁判では、消費者から条項の意味について明確な主張をすることができない。そのため、実際の裁判においては、不明確な条項における契約当事者の合理的意思を探求していくと、どうしても条項作成者の裁判における主張に引きずられた条項解釈がなされるおそれがある。このようなことから、当会においては、2015年(平成27年)3月26日付け消費者契約法の改正を求める意見書において、「意味内容が不明確な条項については、当該契約条項に対して消費者が合理的に抱く理解や期待を考慮して当該条項の性質決定をするという解釈準則を明文化する」ことを提案しているところである。
また、このような規定は諸外国をみても、標準的なものとして整備されており、例えば、フランス民法1162条では、「疑いがある場合には、合意は債務を負わせたものに不利に、債務を負った者に有利に解釈される」とされており、さらに、ドイツ民法、イギリスの消費者契約における不公正条項規制、フランス消費者法典、イタリア消費者法典、オランダ民法、オーストリア民法、1993年消費者契約における不公正条項に関するEU指令、ヨーロッパ契約法原則、ユニドロワ国際商事契約法原則にも同種の規定が置かれている(日本弁護士連合会の平成26年7月17日付消費者契約法日弁連完成試案(2014年版参照))。
以上から、我が国においても、条項使用者不利の原則を、早期に導入することに賛成する。

6  不利益事実の不告知について(意見の趣旨5項)
第39回専門調査会において、不利益事実の不告知に関し、法4条2項の主観的要件に重過失を追加することが検討された。
しかし、平成27年8月の中間とりまとめのとおり、不利益事実の不告知については、利益となる旨の告知が具体的であり、不利益事実との関連性が強いため、不実告知といっても差支えがない場合(不実告知型)と、利益となる旨の告知が具体性を欠き、不利益事実との関連性が弱いため、不利益事実が告知されないという側面が際立つことになり、実質的には故意の不告知による取消しを認めるに等しくなる場合(不告知型)とがあり、不実告知型は先行行為として告げた利益と告げなかった不利益事実とは表裏一体で一つの事実と見ることができることからすると、利益となる旨だけを告げることは、不利益事実が存在しないと告げることと同じであると考えることができる。そこで、不実告知(法第4条第1項第1号)と同視して取り扱うこととし、不実告知において事業者の主観的要件を要求していないこととの均衡から、故意要件を削除するのが適当である。上記のように重過失を追加するだけは不十分である。
また、同じく中間とりまとめで指摘されていたように、不告知型(先行行為が具体性を欠き、不利益事実との関連性が弱いと考えられる類型)について、具体的な先行行為を認定することなく故意を認定して不利益事実の不告知として取消しを認めた裁判例があり、特定商取引法においては先行行為がない場合であっても故意の不告知による取消しが認められていることから、故意・重過失などの主観的要件を維持するのであれば、先行行為要件を削除すべきである。対象となる不利益事実は、現行法でも「当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきもの」とされており、これに準じて「当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきもの」とすれば、これについて故意・重過失で事業者が告げないことは信義則にもとる行為であるといえるので取消対象行為としても事業者にとって酷ではないといえる。よって、事業者が消費者に対し、故意・重過失により、重要事項について不利益事実を告げない行為も取消対象行為とすべきである。

  7  困惑類型の追加について(意見の趣旨6項)
第40回専門調査会において、「当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に当該消費者契約における義務の全部又は一部の履行に相当する行為を実施し、当該行為をしたことの代償として当該行為の対価に相当する金銭の支払を請求すること。」、「当該事業者が当該消費者と契約を締結することを目的とした行為を実施した場合において、当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしないことによって、当該行為が当該消費者のためにされたものであるために当該事業者に損失が生じることを過度に強調して、当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を求めること。」という趣旨の規定を設けることが検討された。
現行法は、困惑取消の対象となる事業者の行為として、不退去・退去妨害を規定しているところ(4条3項)、これに加えて上記の趣旨の規定を設けることは賛成である。
しかしながら、消費者を困惑させる事業者の行為はこれらに限らない。例えば、自宅や職場への訪問ないしは電話による執拗な勧誘や威迫による勧誘によって、消費者が困惑して契約を締結してしまうという被害事例も存在する。これら行為も消費者の意思決定に瑕疵をもたらしうる不当な行為である。この点、当会においては、2015年(平成27年)3月26日付け消費者契約法の改正を求める意見書において、「不当勧誘行為規制につき、いわゆる非身体拘束型の困惑惹起の勧誘行為(威迫する言動、不安にさせる言動、迷惑を覚えるような仕方その他心理的な負担を与える方法での勧誘)を要件とする取消規定を導入する」ことを提案しているところである。
したがって、困惑取消の対象となる事業者の行為に、「執拗な勧誘」及び「威迫による勧誘」も追加すべきである。

  8  配慮義務(意見の趣旨7項)
第35回専門調査会において、「事業者は、消費者契約を締結するに際しては、消費者の年齢、消費生活に関する知識及び経験並びに消費生活における能力に応じて、適切な形で情報を提供するとともに、当該消費者の需要及び資力に適した商品及び役務の提供について、必要かつ合理的な配慮をするよう努めるものとする」という趣旨の規定を設けることが検討された。
平成29年5月26日に成立した改正民法では参議院の附帯決議第8項で「弱者が不当に被害を受けることを防止する観点」と記載されており一般法である民法においてさえ弱者への配慮が求められている。
消費者と事業者との構造的格差を解消し、消費者の保護を図るという消費者契約法の目的(同法第1条)、消費者基本法では「消費者の年齢その他の特性に配慮」しなければならないと定める(同法第2条2項)とともに、消費者への情報提供(同法第5条2項2号)及び消費者への配慮(同項3号)を事業者の責務と定めていること、インターネット取引、約款取引、複雑な内容の取引の拡大に伴い、事業者から消費者に対する情報提供やその消費者に合った商品・役務の提供への配慮の必要性は益々高まっていること等を考慮すると消費者に対する配慮義務については努力義務ではなく事業者の法的義務と明定すべきである。

以 上


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