ネコの話


今から20年前の雨の日に、弟が1匹のネコを拾って帰ってきました。

当時の私は小学生で、「みかん絵日記」というネコのアニメを観て、ネコを飼うことに憧れを感じていたので、ネコを飼えることになり、とても嬉しかった記憶があります。それ以来、20年間ずっと家ネコとして一緒に暮らしてきました。

学校で上手くいかない時も、友達とケンカした時も、受験に失敗した時も、いつでも家に帰れば1匹のネコが呑気に寝ていました。

両親が仕事でいない時も、弟妹が部活で外出している時も、いつでも家の中には1匹のネコがいました。私とネコの距離感は、つかず離れずという感じでしたが、ネコの方が甘えたい気分の時は私に撫でさせてくれました。

私が大学生になって、京都で下宿生活を始めてからは、ネコと離れて暮らすことになりましたが、帰省すれば会えるので、実家に帰る最大の楽しみとなりました。逆に、実家から京都の下宿先へ戻る時は、その日がネコとの今生の別れになるかもしれないので、ネコの写真や動画を保存して、毎回お別れを言ってから京都の下宿先へ戻っていました。

このように、私は、ネコと一緒に暮らしている時も、離れて暮らしている時も、‘あそこに行けば自分を受け入れてくれる’という存在を持つことができました。

おかげで、私は20年間、本当の1人きりになるということがありませんでした。
本当の1人きりにならないということが、心の中に安心感を生み出すことを、それがどれだけ有り難いことかを、1匹のネコから教えてもらいました。

あの雨の日に、1匹のネコが我が家にやってこなければ、今の私がこのように思うこともなかったことを考えると、小さいネコの影響力は大きいと感じながら、今日もネコのことを思っています。

弁護士  園田  真一朗(平成29年9月19日記)

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