「外国籍弁護士を調停委員任命から排除しないことを求める会長声明」(2017年9月21日)


  当会は、京都地方裁判所からの2017年(平成29年)4月25日付の推薦依頼を受けて外国籍である弁護士を含む当会会員を民事調停委員候補者として推薦したところ、同年7月26日、京都地方裁判所から、外国籍である同会員について最高裁判所への任命上申をしないという通知を受けた。
  その際の説明では、外国籍の弁護士については、「民事調停委員は公権力を行使する公務員として日本国籍が必要であるところ、同会員については日本国籍を有しないためである。」ということであった。
  しかし、民事調停法、家事事件手続法並びに民事調停委員及び家事調停委員規則には、調停委員の資格要件や欠格事由として日本国籍の有無に関する規定はなく、法令上、調停委員に関する国籍要件は存在しない。
  そもそも、調停委員の職務は、専門的知識経験や社会生活上の豊富な知識経験を生かして当事者の互譲による紛争解決を支援することであり、「公権力の行使」には当たらないことは明らかである。
  また、1974年(昭和49年)から1988年(昭和63年)までの間、日本国籍を有しない大阪弁護士会会員を最高裁判所が西淀川簡易裁判所民事調停委員に任命していたという先例があり、日本国籍を有しなくとも現実的に何ら支障がないことも明らかである。
  よって、上記説明が任命上申を拒否する根拠になり得ないことは明らかであり、京都地方裁判所が外国籍であることのみを理由に任命上申を拒否したことは、国籍に基づく不合理な差別であって、憲法14条、自由権規約26条、人種差別撤廃条約5条の平等原則に違反するものである。
  なお、このような対応に対しては、2010年(平成22年)の第3回から第6回政府報告書審査及び2014年(平成26年)の第7回から第9回政府報告書審査に対する国連人種差別撤廃委員会の最終見解において、能力を有する日本国籍でない者を調停委員として認めることを繰り返し勧告されているとおり、国際社会からの指摘も受けているところである。
  したがって、当会は、最高裁判所と京都地方裁判所に対し、改めて、外国籍の弁護士を調停委員への任命から排除しないことを求める。

2017年(平成29年)9月21日

京  都  弁  護  士  会

会長  木  内  哲  郎  
    

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